ちょっと気になった「?」の記述は以下。
「厚生労働省は来年4月から保健指導や特定健診を実施することを決めた。これは40~74歳の被保険者を対象に、予防医療としてのメタボリックシンドローム等の該当者や予備軍が保健指導を受けられるというもの」
「受けられる」と、まるで保健指導や特定健診が被保険者にとっての「特典」であるかのようなニュアンス。前回ここに「さらに平成25年度からの実施 をめどに、保険者別に健診達成率、メタボ改善率で後期高齢者医療費の支援拠出金が、加算・減算される」とさらっと書いてしまったのだが、やや詳しく書くと 以下のような仕組み(といってもネットで調べた程度なので、間違っているかもしれません。誤りがあったらどしどしご指摘ください)。
まず特定健診や特定保健指導がはじまる来年度は「後期高齢者医療制度」スタートの年でもある。後期高齢者とは75歳以上。健保からも国保からも、そ の赤字の原因である老人医療が切り離される。医療費の本人負担は1~3割。もちろん、それで後期高齢者の医療費をまかないきれるわけがなく、残り7~9割 のうち、1割を本人負担の保険料、約5割を公費(国4・都道府県1・市町村1)、残り約4割を「後期高齢者医療支援金」でカバーする。問題なのはこの後期 高齢者医療支援金で、下記のメタボ対策目標値と連動して、保険者ごとに、この支援拠出金が加算・減額される。
1、特定健康診査の実施率(受診率)
・平成24年度の受診率が60%以上
・平成27年度の受診率が80%以上
2、特定保健指導の実施率
・平成24年度の対象者の45%以上
3、メタボリックシンドロームの該当者及び予備軍の減少率
・平成24年度のメタボ該当者・予備軍は平成20年度よりもメタボの該当者・予備軍よりも10%以上減
4、メタボ該当者とは、腹囲(ウエスト)男性85㎝以上・女性90㎝以上で、中性脂肪、血圧、血糖値のうち2項目以上が異常値の者。予備軍とは腹囲が基準以上で1項目が異常値の者。
加算・減額の幅はそれぞれ最大20%。もし特定健診、保健指導、メタボ該当者・予備軍の「目標値」が達成できなければ最大20%のペナルティを課さ れるわけで、そうなればメタボ該当者・予備軍はペナルティの元凶とみなされるわけだから、特定健診や保健指導は「週刊朝日」で書かれているような「受けら れる」ニュアンスではなく「受けろ」に近く、「冷蔵庫を開けると妻と娘から罵声が飛んできた…」どころではなく、太めの社員が「昼飯にラーメンを食べてき た」などと言おうものなら上司や同僚(あるいは後輩)から罵声が飛んでくる事態が出来しかねないのである。
さらに各健康保険組合における、特定健診、特定保健指導のアウトソーシングや、健康保険組合と後期高齢者医療支援金をリンクさせるシステム開発も ビッグビジネスということで、4月17日には日本IBM、インテル、シャープなどの企業や経産省商務情報政策局医療・福祉機器産業室長、厚労省健康局生活 習慣病対策室長が参加して、「国際パーソナル・テレヘルス・シンポジウム」が開催されている。
シンポジウムの主催者「コンティニュア・ヘルス・アライアンス」は米国の「インテル株式会社を始め20社ほどの企業が集まり、健康管理ソリューションのためのテクノロジー・スタンダードを策定する業界団体」。昨年11月に結成されたその「日本地域委員会」には、下記企業をはじめ、67社が参加しているという。
エー・ アンド・デイ、アストラゼネカ、Avita、バクスター、BodyMedia、ボストン・サイエンティフィック、シスコシステムズ、デル、GE ヘルスケア、IBM、iMetrikus、インテル コーポレーション、Kaiser Permanente、コナミスポーツ&ライフ、メドトロニック、Microlife、モトローラ、Nautilus、Nonin、オムロン ヘルスケア、オラクル、松下電器産業、Partners HealthCare、ファイザー、Polar Electro、ロイヤルフィリップスエレクトロニクス、Precor、プライスウォーターハウスクーパース、RMD Networks、ロシュ、サムスン電子、シャープ、シーメンス、テクノジム、Telus、The Tunstall Group、Welch Allyn、Zensys、テキサス・インスツルメンツ……
――メタボリックシンドローム関連市場規模は、予防、診断分野だけでも1兆円を超え、改善・治療分野を含めると7兆5000億円を超える(矢野経済研究所「メタボリックシンドローム関連市場に関する調査結果」2007年5月9日)。
だれのための、なんのための、メタボ対策、特定健診、特定保健指導、後期高齢者医療制度か、もうおわかりですよね。
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THE JOURNAL編集部
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