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高野孟:参院選の結果が臨時国会のTPP関連法審議を掻乱

2016/07/18 08:17 投稿

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参院選の結果を「農業」という面から見ると自民党の大苦戦で、いずれも農業依存度が高い東北6県と甲信越3県の計9つの1人区では、自民は何と1勝8敗。また農業生産額でも農業就業人口でもダンゼン1位の農業王国・北海道では、3人区に自民、民進とも2人ずつ候補を立てて争い、自民が1人を取り落とした。

野党の農水族議員は「米とTPPが勝因だ。農協を潰し小農を切り捨てるような『改革』が推し進められる中、米価の低迷に苦しむ農家ではTPPへの危機感が強い。民主党政権は、従来の補助金農政に代わってEU型の戸別所得保障制度を導入したが、安倍政権がそれをひっくり返した。それに対し、今回、民進党はその制度を復活させ法制化することを公約に掲げ、農業者から大きな支持を得た」と分析している。

象徴的なのは山形選挙区である。

農水省職員出身で鳩山・菅両政権で農水政務官を務めた舟山康江が無所属の野党統一候補として返り咲きを目指したのに対して、自民党はJA全農山形の元副本部長だった月野薫を立て、珍しい「農農対決」となったが、12万票の大差で舟山が圧勝した。

月野は、自公の強固な組織を背に、県内13のうち12市長を陣営に引き入れ、公示初日に小泉進次郎農水部会長を応援に投入するなど、手厚い体制をとったが、肝心のJAの政治団体「農政連」が月野を支持せず「自主投票」を決めたことが落とし穴となった。舟山の「安倍政権のTPP推進、『強い農業』一本槍の農政でいいのか」という訴えが効を奏して、県内15万と言われる農家票の多くが舟山に流れたと見られる。

安倍晋三首相は、すでに失敗しているアベノミクスを「成功」と言いくるめ、それをさらに推進すると言っている。そのアベノミクスの成長戦略の柱の1つに位置づけられているのが、TPPの批准とそれに応じた農政「改革」であるけれども、東日本の農業県はそれに「ノー」を突きつけた。日本農業新聞が「東北の反乱」と呼んだこの選挙結果によって、秋の臨時国会でのTPP関連11法案の審議に波乱が生じ、それを安倍が数を頼みに突破しようとすればするほど、農家の離反が広がることになろう。▲
(日刊ゲンダイ7月14日付から転載)


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<高野孟(たかの・はじめ)プロフィール>
1944 年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレ ター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。94年に故・島桂次=元NHK会長と共に(株)ウェ ブキャスターを設立、日本初のインターネットによる日英両文のオンライン週刊誌『東京万華鏡』を創刊。2002年に早稲田大学客員教授に就任。05年にイ ンターネットニュースサイト《ざ・こもんず》を開設。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
Facebook:高野 孟

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