by 泉美木蘭
人は滑稽な生き物である。
とくに人間関係においては
「ちょっと考えれば、そんなことぐらいわかるでしょ!」
と言いたくなるような些細なところでトンデモを発揮して、第三者から見れば笑い話以外の何物でもないトラブルを引き起こしてしまったりする。
自意識と自尊心のからまり…
自意識と自尊心のからまり…
私は、こういった人の滑稽さには政治の世界と同じくイデオロギーの違いがあることを提唱したいと思います。
「右滑稽」と「左滑稽」
【右滑稽】 う-こっけい
人に向かって「きみはまちがっている!」と食ってかかったり、そもそも論などで説教して自分の思う通りに正したりしたいが、その方法がトンデモすぎて笑われてしまう「めんどくさいクレーマー」タイプ。
主な信条は
「売れるケンカは半額でも売るし、買えるケンカは倍額はらってでも買う。通販でも買う」。
「売れるケンカは半額でも売るし、買えるケンカは倍額はらってでも買う。通販でも買う」。
・「引越し! 引越し! さっさと引越し! シバくぞ!」
・「宮崎あおいと同じ髪型にしてくれって言ったのに、全然ちがうじゃない! 首が太いのが目立つだけだし、ぜんぜん宮崎あおいに似てないし、これ、どうしてくれるのよ! 本当に美容師!?」
・「いま笑った? 嘲笑したよね? 嘲笑してない? 嘲笑したでしょ、笑ったでしょ、笑ったかどうかっていうのはね、目と口の周りの表情筋の動きによって認定されるんですよ! まずあなたの眼輪筋の動きを見るとですね…(中略)…だから笑ったでしょ!? 笑ったって言いなさいよ! 笑ったかどうかをここで決めようって言ってるんですよ!」
【左滑稽】 さ-こっけい
自分の妄想や言いわけを現実にするために、他人から見ればわけのわからないトンデモを自分ひとりで勝手に繰り広げては、まわりの人に笑われる「よし、自由に生きろ!」タイプ。
主な信条は
「売られたケンカは、お金がないから買わない」。
「売られたケンカは、お金がないから買わない」。
・「ゲームばっかりするなって? なに言ってるんだよ、丸一日がんばってデータを集めているんだよ。データが全部集まれば、攻略本を出版できるかもしれないだろ?」
・「ドラッグは僕の創作活動に絶対必要不可欠なものなんだよ。ドラッグをきめていると、斬新で、すばらしいアイデアが浮かんでくるんらりるれろ?」
・「私はね、生まれる時代が早すぎたんだよ。とても孤独な、孤高な人間なんだ……だから、社会と折り合いなんかつかないから、面接に行かなくていいし、就職もしなくていいんだ、いや、就職するべきではない、そう神が仰せのようなもの……でもこれでは資本主義社会では生きてゆけない。こんな私がラクして稼げるバイトがあったらな」
私は左滑稽です。
小学生のとき、大ファンだった光GENJIのファン度合いをクラスメイトと競うために、
「コンサートに行った!」とホラをふいたことがありました。
それでやめておけばいいのに、信じてくれない子がいたので、家にあった青いタオルにメンバーの内海くんのサインを自分で書いて
(メンバーそれぞれ色が決まっていた。たまたま家にあったのが青だったので内海くんにするしかなかった)
さらにそのタオルを自力でビリビリに破き、玄関のたたきにこすりつけてボロ雑巾のように汚してから学校へ持ってゆき、
「ほら! コンサートで内海くんが投げたタオル、つかんだんやで!
本当は諸星くんのが欲しかったけど、あっちはあまりに人気すぎて全然あかんかった。
でもこれでもだいぶ奪い合いになって、大変やったんやで!」
などと重ねてホラをふき、私はそれでものすごく満足していたのですが、なんかバレていたらしく、一週間ぐらい友達には無視されてました。
そのあと、諸星くんのサインを色紙に自分で書いて見せびらかしましたが、これも、バレましたねー。
大学生のときは、賢いと思われたかったので、読めもしないフランス語の本をちらつかせてバイトに行ったりしてました。
そのあと、諸星くんのサインを色紙に自分で書いて見せびらかしましたが、これも、バレましたねー。
大学生のときは、賢いと思われたかったので、読めもしないフランス語の本をちらつかせてバイトに行ったりしてました。
似たようなことがいまでも時々あります。
だからなんだ、と。
だからなんだ、と。
右滑稽も左滑稽も、自分の自意識や自尊心をなんとかしようとすることに注視しすぎて、盲目になっていること、もしくは、意地でも見て見ぬふりをしつづけることから起こります。
左滑稽の人は、人に向かっていきなり食ってかかったりすることは少ないですが、右滑稽の人からはからまれやすく、しかし、そこに同じテンションで応戦するほどの熱意がないのが左滑稽の特徴でもあるので、
「売られたケンカはお金がないので買わない」
「こっちは売りつけたいんだよ! 買え! 買え! 買え!」
みたいな感じでいつまでもトラブルが収まらないことも、ままあります。
右滑稽と左滑稽の分類研究は今後もすすめて一冊の本にまとめたいと思っています。
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