今回はうさみのりやさんのブログ『うさみのりやのブログZ~三十路の元官僚のブログZ~』からご寄稿いただきました。
■霞ヶ関での思い出(1) ~ノンキャリの鬼上司・A氏
おつです、いよいよ10月ですね、秋ですね。
さて僕はもう官僚でなくなったことですし、ある程度自由にものを言える立場になったので、今月は本に書ききれなかった官庁時代の思い出を少しづつ振り返ってみたいと思います。
みなさんに普段のっぺりとした存在である官庁に多少親しみを感じていただけるきっかけになると思いますし、僕にとっても役人であった過去のしがらみを切り落として一民間人として新たな道を歩んでいくためにも必要な事のように思えます。
ということで今日は一年目にお世話になったノンキャリの鬼上司Aさんのお話です。
(誰だか特定されないように具体的名称は避けます。)
その人は僕がはじめ所属された部署にいたノンキャリのエース中のエースでまさに「オヤジ」とでも言うべき存在でした。
正確に言うと直属の上司、というわけではなかったのですが、専門的知識を有するその部署の重要な政策事項は全てといっていいほどその人を経るので、その部署に配属される新人キャリア官僚は僕の先輩や後輩も含め、自然と仕事をする中でA氏の薫陶を受けることになりました。
一年目の私はまさに「学生気分が抜けない」といった感じでふわふわとしていたので、A氏から顔を合わせるたびに
「お前は生きている価値がない。せっかく東大を出ておきながら世の中に何も還元していない。」
と厳しい言葉をいただきました。他方で叱るだけでなくて、現行の制度がどのような議論・過程を経て作られたかを仕事や酒の場で教育してくれるありがたい存在でもありました。キャリアっていうのは要領がいい反面異動がはやいので、行政機関が健全に機能するためにはA氏のような優秀で一つの部署に長く根を張ったノンキャリが不可欠なんですよね。
僕は始めはA氏を「恐いじいさんだな~」と思って避けていたのですが、半年ほどたったころ仕事であれこれミスを続けている自分が情けなくなり、「よし、あのじいさんを見返してやる!!」と決意して仕事に励むようになりました。
んなわけで入省してから二年目までの僕の目標はこのA氏に一度でもいいから「よくやった」と言わせることでした。
結果として2年目にある新制度を検討する会議の時に議題に登っていた制度素案に対して、私が「その方式でやると数年後にこういう問題が出てきてしまうので、違う方式を採用したほうが良くないですか」というような問題提起をしたところ、そのA氏から
「それは確かにそうだ。お前はじめてまともなこと言ったな」
とお褒めの言葉をいただき、目的は達成することができました。
A氏は「言うことは言う、やるべきことはやる、責任は黙って取る」という漢気にあふれる仕事っぷりをする人で、僕が仕事を覚える上で最も影響を受けた一人でした。
多分僕の後輩のキャリア官僚たちもA氏に同じような感謝の念をいただいているのではないかと思います。
ノンキャリとして誇りをもってひとつの分野に長く腰を据えて仕事に当たる一方、キャリアに対して厳しいプロ意識を求める、ちょっと野武士チックですが理想的な国家公務員だったと思います。
執筆: この記事はうさみのりやさんのブログ『うさみのりやのブログZ~三十路の元官僚のブログZ~』からご寄稿いただきました。
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