熊本市西区の慈恵病院が設置した「こうのとりのゆりかご」は、様々な事情で養育が難しくなった乳児を受け入れてきました。
倫理的な観点から設置された当時から様々な議論が交わされてきましたが、もっとも弱い立場にある乳児の生命を守る存在として設置から7年間運営されてきました。
このたび外部委員会がメディアに公開した保護状況によると、運営開始より保護した乳児は101名。また、平成23年10月から今年3月までに保護した乳児は20名で、このうち9名が低体温や低体重といったすぐに医療が必要な状態だったということです。また、20名のうち身元がわからない乳児は8名にのぼっており、医療の専門家が介在しない自宅などでの出産が増えているのではないかと危惧されています。
また、乳児自身が成長した際に、自らの出生を知ることは当然の権利であり、匿名で乳児を受け入れることについて議論されていますが、現時点では地方自治体や国も、明確な指針を示していません。
女性だけに育児を任される社会風潮と女性の貧困問題
児童福祉の専門家の間では、保護者のもとで暮らせない乳児が増える背景について、女性だけに育児が任される社会風潮が今も続いていることを危惧する声が多いといわれています。また、望まない妊娠を避けるための教育を早期から行うべきだという意見もあります。しかしながら、義務教育の中では性教育自体がタブー視される傾向が強く、正確な避妊方法を教育できる状態にはないといっても過言ではありません。
また、育児には経済的な環境も欠かせません。日本では、男女雇用機会均等法などの法令があるにもかかわらず、アルバイトパートを含め、就労している人の中で女性の賃金は男性の4割程度という統計があります。これは、OECD加盟国の平均以下であり、ILOが呈示している働いた人が年齢性別に関係なく同じ賃金を受け取れる制度(同一労働同一賃金)を、浸透させるべきという意見も指摘されています。
昨今では、ブラック企業問題など、働くことについて様々な社会問題が言われるようになってきました。こういった問題が、未来を担う自分たちの子供たちにもかかわってくるわけですから、様々な立場の人が関心を持ちたいですね。
写真は 足成 http://www.ashinari.com/ より
※この記事はガジェ通ウェブライターの「松沢直樹」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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