高市早苗総務大臣や稲田朋美自民党政調会長らがネオナチを標榜する政治団体・国家社会主義日本労働者党(NSJAP)の代表者と議員会館で撮影した写真をめぐって欧米を中心に非難が高まっている問題で、日本の英字紙・ジャパンタイムズやイギリスのIBTimesは高市氏が1994年に出版された『ヒトラー選挙戦略』に推薦文を寄せていたことを取り上げる続報記事を10日から11日にかけて掲載しました。
この『ヒトラー選挙戦略』の著者は当時の自民党東京都連広報部長・小粥義雄氏で、政権獲得後のナチス・ドイツにおいて実施された諸政策については「ヒトラーの残した独裁政治、ユダヤ問題など歴史的評価は後世に譲る」として論評を避け、あくまで客観的にアドルフ・ヒトラーが政権を獲得するまでの選挙戦術を分析する内容となっています。
しかしながら、表紙や口絵部分にヒトラーの肖像を大々的に掲載したりナチスのシンボルとしてドイツやイスラエルはもとよりオーストリア、チェコ、ハンガリー、フランス、ポーランド、ブラジル等で使用が禁止されているカギ十字が随所に散りばめられているデザインがショッキングな印象を与えることもあり、発行直後から大きな物議をかもし、イスラエル大使館が自民党本部に抗議するなど大きな社会問題となったことが海外メディアでも取り上げられたためわずか、2か月で絶版となりました。
発行時の広告では複数人の国会や地方議員が推薦者として顔写真入りで名を連ねており、無所属の新人議員だった高市氏が次のような推薦文を寄せています。
衆議院議員 高市早苗
候補者と認知された瞬間から始まる誹謗、中傷、脅迫。私も家族も苦しみ抜いた。著者の指導通り勝利への道は『強い意志』。国家と故郷への愛と夢を旨に、青年よ、挑戦しようよ!
また、高市氏の隣には9月1日放送の『ビートたけしのTVタックル』に出演した際の発言がネット上で話題となっている土屋正忠氏が次のような推薦文を寄せていました。
武蔵野市長 土屋正忠
現場にいて、政治に青春をかけた著者は、ヒトラーの選挙戦略という刺激的な言葉を使って、国民に政治参加を呼びかけている。同感!青年よ、観客席からグランドへ。
この広告では他に羽田孜元首相や粕谷茂元北海道・沖縄開発庁長官、寺澤芳男元経済企画庁長官、保坂三蔵元経済産業副大臣らも名を連ねていますが、発行から20年が経過した時点でこの広告を見ると、真っ先に目を引くのが現職議員の高市・土屋両氏であることは間違いありません。
高市・稲田両氏とNSJAP代表者のツーショット写真が海外で問題となってからこの『ヒトラー選挙戦略』も再び注目を集めており、Amazonのマーケットプレイスでは10万円のプレミア価格で売り出されています。実際、抗議を受けて短期間で絶版になったため流通量が少ないとみられますが、本自体は国立国会図書館はもちろん、各地の公共図書館でも所蔵されており読むこと自体はそれほど困難な状態ではないようです。
高市氏らはNSJAP代表者と2011年に写真を撮ったことは認めながらも「相手がどのような政治信条の人物であったかは知らなかった」と関係を否定し、菅官房長官も11日の記者会見で一連の対応を「全く問題ない」と擁護しました。しかし、海外で『ヒトラー選挙戦略』推薦文の問題が追い打ちをかける形で取り上げられたことは日本の現職閣僚、ひいては政権そのものが極右勢力と親和的であるイメージをより強く印象付ける結果となっており、官邸の対応はそのことがいかに深刻な問題であるかを認識していないのではないかと評せざるを得ません。
参考:仮説実験授業研究会・丸山秀一「小粥義雄『ヒトラー選挙戦略』を読む」
http://www.kasetsu.net/PDF/Rhitler.pdf
Japanese Book Praises Hitler For His Electoral Techniques - New York Times (June 8, 1994)
http://www.nytimes.com/1994/06/08/world/japanese-book-praises-hitler-for-his-electoral-techniques.html
画像:『ヒトラー選挙戦略』発行時広告の一部(右から5番目が高市氏、6番目が土屋氏)
※この記事はガジェ通ウェブライターの「84oca」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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