6月24日に、池袋で「脱法ドラッグ」を吸引して交通事故を起こした事件を受け、脱法ドラッグは「危険ドラッグ」と改称された。 しかしながら、人体にどのような被害を及ぼすのか、わかりにくいという意見が相次いでいる。
そのこともあってか、乱用はあとを絶たない。
精神保健福祉法に基づいて、薬物依存などの問題に対応する施設が用意されているが、全国で69カ所開設されているものの、危険ドラッグ乱用に悩む人すべてが、心身のトラブルから回復するためのサポートを受けるのは難しい状態だ。 当然のことながら規制が強化されているが、販売者とのいたちごっこが依然として続いている。
安全なドラッグなどない。覚醒剤乱用よりも治療が難しいケースも
危険ドラッグに手を伸ばす人がよく使うのは「安全だから」「違法ではないから」というフレーズだとされる。 そもそも、心身になんらかの影響を与える物質のうち、副作用がないものは存在しないといっていい。
また、危険ドラッグの化学構造からして、「覚醒剤などの乱用患者より治療が難しくなるのではないか」と指摘する薬学の専門家や薬物依存治療の専門医もいる。
先述の薬学の専門家や薬物依存治療の専門医が、危険ドラッグの乱用を危険視する理由は、危険ドラッグの製造者が、法の網をくぐり抜けるために化学構造を次々と変えて販売することだという。
現行の法体系では、精神に影響を与える薬物は、薬物の化学構造を規制の基準にしている。たとえば、覚醒剤のように法規制がなされている薬物と同じ化学構造を持つ危険ドラッグは、違法薬物として取り締まられる。
しかしながら、規制されている薬物に新たな化学物質が添加された化学構造をしていれば、規制できないという盲点があった。(現在では法規制が改正され、一部に規制された薬物の化学構造を持つ危険ドラッグは、もれなく規制の対象となる。)
ところが、危険ドラッグの製造者は、心身の恍惚感などといった薬理作用が得られる上に、法規制の対象にならない化学構造を持つ危険ドラッグを開発して販売を繰り返している。まさにいたちごっこだ。
恐ろしいことに、法の網をくぐり抜けた化学構造を持つ危険ドラッグによって薬物依存が生じた場合、効果的な依存の治療が難しい場合もあり得ると複数の専門家は指摘している。医薬品のように、動物実験や臨床試験(ある程度の安全性を確認して、実際に人に投与して問題を確認する試験)を経ているとは限らないため、手探りで治療を行わなければならないケースが出てくるためだという。
日本救急医学会などのデータによると、危険ドラッグの乱用によって救急医療施設に搬送された患者は、2012年では469例となっている。(救急医療施設に対してのアンケートのうち、任意の回答のため、すべての例を反映した数字ではない。)
20代、30代の男性の乱用が圧倒的に多く、対人・対物への暴力、交通事故、自傷行為、自殺企図などの有害行為が見られるケースも多いと報告されている。また、腎障害、肝障害などが確認されたケースも確認されているという。
単に、一過性の錯乱などの症状を起こすだけでなく、使用後に生命の危機を引き起こすケースもあるということになる。
絶対に利用しないことはもちろん、未成年者には危険性を説明し、利用させない社会全体での取り組みが必要だ。
※画像は『足成』より
http://www.ashinari.com/2011/01/19-344825.php
※この記事はガジェ通ウェブライターの「松沢直樹」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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