漫画家・井上三太の代表作「TOKYO TRIBE2」を、鈴木亮平さん、染谷将太さん、窪塚洋介さんら実力派俳優陣、YOUNG DAISさん、清野菜名さんら個性的フレッシュなキャスティングで実写映画化した『TOKYO TRIBE』。いよいよ8月30日より公開となります。
『TOKYO TRIBE』は、さまざまな“トライブ(族)”に属する若者たちが、暴力で街を支配し、縄張りを競い合っている近未来のトーキョーを舞台に、「ブクロWU-RONZ」のヘッドに君臨するメラと、「ムサシノSARU」に所属する海(カイ)の2人を中心に巻き起こる一大抗争を描き出した、世界初のバトルラップミュージカル。
本作の監督・脚本を務めるのは『愛のむきだし』『ヒミズ』の鬼才・園子温監督。「ラップに全然興味が無いから作れた」といった、映画制作にまつわる事から「映画監督は辞める方向に進んでいる」なんて衝撃発言まで、色々とお話を伺ってきました。
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――『TOKYO TRIBE』を今実写映画化した理由やきっかけはどんな事だったのでしょうか?
園:この企画は配給会社である日活から提案をもらったんだけど、ストリートファッションとかヒップホップも全然興味無かったから、最初は出来ないかなと思ったんですよね。でも、ラッパー達に会って話をしていくうちに、「新宿族」とか「池袋族」とか、“TRIBE”って本当に実在するって事を知って興味を持てたの。だったら、そのTRIBE達がぶつかり合う映画をオープンセットで撮ったら面白いだろうなって。俺がヒップホップに興味が無いからこそ撮れたんだと思う。
――興味が無いからこそ撮れた?
園:題材と監督に距離があったから良い映画が生まれたという例はたくさんあって。『ゴッドファーザー』もフランシス・コッポラ監督がマフィアが嫌いだった、『仁義なき戦い』の深作欣二監督もヤクザに全く興味は無かった。大体、Vシネなんかでヤクザが大好きな監督がヤクザもの作ると、めっちゃ格好つけててつまんない映画になるじゃない? 全然興味無いからこその距離感、緊張感、客観性があるから面白い物が作れるって知ってるんで、ヒップホップの部分は俺分かんないから皆に丸投げして。
――監督の映画お馴染みの俳優さんから、YOUNG DAISさんの様に演技経験の無いアーティストの方まで、非常に個性的なキャスティングになっていますね。
園:これまで映画を撮ってきて、もう一度会いたかった人と会ってみたかった人を集めて。叶美香さんなんて映画に出したら面白いなってずっと思ってたから。日本映画ってナヨナヨした人ばかり出てるから、ここまでビシバシした人達が集まるってなかなか無いじゃない。これは『ワイルド・スピード』にも負けないくらいの迫力になるから嬉しいなって。
――鈴木亮平さんが全編、ほぼTバック姿ですが、肉体美が凄まじかったです。
園:「女の子の頬がぽっと染まる様な肉体に仕上げとけ」とだけ言いました。この映画って男の子の大好きな物は詰まってるけど、女の子の好きな要素はどうだろ? と思った時に、鈴木君は女の子がうっとりする様な体を持っているので「それはお前の役目だ!」って。彼も街角で「プロレスラーの方ですよね?」と言われたと喜んでましたけどね。
――ヒロイン役の清野菜名さんについてはいかがですか?
園:清野さんは誰にも相談しないでヒロインに決めたんだけど、スンミでは無ない小さな役のオーディションで来ていたから、決まった時は驚いてマネージャーと抱き合って泣いたと聞きましたね。それで、レッスン中に道場を見に行ったら、隅で小さい子がものすごい身体能力で動いてるから「あれは誰だ?」って聞いたら、「見た目は小学生の男の子にしか見えないけど、高校生の女の子なんだ」と言われてこれは面白いと。百鬼丸とどろろの関係みたいに、スンミの後にトコトコくっついてくるキャラクターにしたいと思って、ヨンという役を作って。
――数多くのアーティストが集結していて、ラップバトルはとても迫力がありましたね。
園:彼らも結構俺の映画観てくれていて、実際に新宿でのラップシーンに「冷たい熱帯魚〜♪」って入ってるんだよね。俺、編集している時それに気がつかなくて、後から入ってる事に気付いてちょっと恥ずかしいんだけど。
――荒くれ者達の集まりの様見えましたが、撮影はスムーズにいったのでしょうか?
園:現場で鉄則作ったんだよね、「1:殺し合わない事、2:Blu-rayが発売されるまでヤバいものに手を出さない事」とか。それを皆キレイに守ってくれて。映画の現場って待ち時間がすごく長いのに、練マザファッカーなんて朝から夜までずっと待たされても文句一つ言わずにね。でも、日中暑くなって来るとみんな上半身裸でバスケとかするんだけど、全身見事なタトゥーが入ってるから「お、ここはロスの刑務所か」なんて思ったり(笑)。
――本作はセット、ロケ地も素晴らしかったですが、「ロボットレストラン」が出てくるあたりが園監督らしい“TRIBE”の表現なのかなと。
園:「ロボットレストラン」と「ギラギラガールズ」は俺がすごく好きだっていうのもあって、店長さんも友達だし、新宿に漫画にないもう一つのTRIBEを作って、しかもそれが女だけだったら面白いかなと思って作ったんですよ。
――ブッバの家も、カラフルで狂った美術が格好良かったです。
園:面白いセットを組むのに天才的な林田裕至さんっていう人間に美術は全部まかせて。窪塚くん演じるンコイの部屋の、真っ赤な内装に白塗りの生身の人間が椅子になっているという部分は自分でコンテ描いたりもしましたが。後は壁のグラフィックアートは絶対やめようと。ここはロスじゃなくて、アジアのどっかの国なんだから。その代わり、「Chim↑Pom」ってアート集団が主催している「天才ハイスクール!!!」の展覧会に行って「あ、すげえバカがいた!」と見つけたアーティストたちを現場に呼んで描いてもらったんだよね。
――本作は園監督作品の中でも特に、自由な作品だなあと感じているのですが、監督が立て続けに映画を撮り続けられるモチベーションはどんな所にありますか?
園:「日本映画はこうあるべき」って“指令”を受け取ってないからかな。皆知らないうちに「映画雑誌で褒められる映画を作りなさい」「ささやかな映画を作りなさい」「地味な生活を撮って泣かせない」って、埋め込まれたICチップから出てくる指令に惑わされてるわけ。俺は良い意味で野心が無くて、年末にいい感じの賞が欲しいとも思わないし、そういう自由さで色々映画が撮れるんだと思う。日本映画ってなんか知らないけど泣かせたがるでしょ? 『TOKYO TRIBE』も他の人が撮ったら、感動の友情とかの結末にするだろうし、そういうのうるせーって。ただひたすら面白がれる映画にしたかっただけだから。
――あくまで映画はエンタメだと。
園:『希望の国』以降エンタメ作品に振り切ろうと、こだわりやメッセージ性は焼却炉にポイっと捨てちゃったんですよね。俺、ピカソがすごく好きなんだけど、皆「青の時代」が好きで、その後の変な絵を見てガッカリしたじゃない。俺にとって今がその時代なんですけど、そういう思い切り違う方向に進むのって大好きなんですよね。ピカソ的前進だと思っています。先日完成したばかりの『ラブ&ピース』って映画も、これまでの俺の映画のファンはガックリしちゃうかもしれない。でも、ずっと家族全員で、“サザエさん一家”が楽しめる映画を作りたいと思ってたから、その完成系なんだよね。『ラブ&ピース』は『TOKYO TRIBE』の真逆かな。これはサザエさん一家が観たら困るから(笑)。
――その他にも『新宿スワン』といった公開待機作もあり、毎年園監督の映画が観られるのは嬉しい限りなのですが。
園:でも監督は辞める方向に進んでますよ。「毛深い闇」(河出書房新社)で作家デビューもしたし、今度9月30日には恵比寿リキッドルームでアートスクールと対バンライブもするし、絵も描き始めたし、劇団も旗揚げするし、バラエティ番組にもたくさん出てますから、それのどれかが上手くいったら、もう映画は撮らない。
――なんと! それはいちファンとしても寂しいです。
園:まだ映画で飯食ってるし、家賃も払わないといけないから、そういった堅実な仕事としてまだ映画は辞められないんだけどね。以前も映画は一度辞めているしね。映画撮るの辞めて、サンフランシスコでホームレスになってから映画に戻ったら今までよりも自由度の高い、良い作品が撮れたので、いつでも離れられるって思っている事が大事なのかもしれない。
――あくまでも自由に自分らしく映画を作る。『TOKYO TRIBE』を観たら多くの方が納得するのでは無いかと思います。今日はどうもありがとうございました!
『TOKYO TRIBE』ストーリー
近い未来の “トーキョー”には様々なトライブ(族)が存在し、そこに住む若者たちは、街を暴力で支配しながらお互いの縄張りを守っていた。
トライブ間の暴動・乱闘は日々繰り広げられるも、互いの力関係は拮抗し絶妙なバランスで保たれていた。しかし、ある事件をきっかけに、その均衡はもろくも崩れ去る。「ブクロWU-RONZ」のヘッドに君臨する<メラ>と「ムサシノSARU」に所属する<海(カイ)>。二人を取り巻く”トーキョー”中のトライブを巻き込んだ、激しく壮絶な一大バトルが今始まろうとしている――。
(C)2014 INOUE SANTA / “TOKYO TRIBE” FILM PARTNERS
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