高雄のガス爆発事故が酷い
台湾の爆発事故が酷い。爆発というのは非常に速い燃焼のこと。速く燃焼すると急激に周囲を熱するので燃焼ガスが非常に速い速度で膨張する。音速を超える膨張をすれば衝撃波が発生する。“ドーン”という爆発音がそれだ。
今回の爆発事故は、台湾南部・高雄で8月1日午前0時(日本時間同1時)前に起きた。住民や警官、消防団などの少なくとも25人が死亡、267人超が負傷した。
高雄では住宅地の地下に工業用コンビナートのガス管が走っており、そこから漏れて引火したとみられる。人口密集地でのこうした管の埋設を見直すべきだとの声が上がっている。日本ではちょっと考えられないことだ。
消防当局によると、市内の2~3平方キロの幅広い地域で相次いで爆発が発生。数時間前からガス漏れの通報が寄せられていたという。
道路の真下に「プロピレン」のガス管が走っていたらしく、現場付近の道路上には数百mにも渡って、粉々になったアスファルトが散乱していて、その上に消防車や乗用車が横転している。一部の商店や民家は爆発の影響で傾き、倒壊のおそれもある。
地元テレビは、市内各所で猛烈な勢いの火柱が上がる様子や、道路が広範囲で陥没した現場の映像を放送した。政府は軍なども投入し、周辺住民の救出や避難の作業に当たった。
石油化学工業コンビナートの街「高雄」
高雄市は石油化学コンビナートのパイプラインの上にできた都市。石油化学ではナフサ(粗製ガソリン)を原油からつくる。つまり、ガソリンスタンドの上に都市があるような街だ。誰もガソリンの上で暮らしたいとは思わないだろう。
ナフサ(粗製ガソリン)は、さらに、基礎化学品(オレフィン類や芳香族類)に変えられる。オレフィンとは、エチレンやプロピレンなどのように二重結合をもつ鎖状炭化水素のことであり、今回、パイプからもれたのはこのプロピレンという気体。
プロピレンからは、ポリプロピレンなどのプラスチック(合成樹脂)がつくられる。ポリプロピレンというと難しそうだが、身の回りにあるプラスチックの一つで、「ファイル」がポリプロピレンである。
台湾は1945年、日本の降伏により台湾は中華民国が接収することになり、高雄市は省轄市とされ台湾省に帰属した。1966年から楠梓区において加工輸出区が開業し、以後加工貿易の工業団地や重化学工業のコンビナートが集積する台湾随一の工業都市となった。
2010年12月25日には高雄県を合併し、市としては最も広い直轄市となった。市周辺に重工業地帯が広がり大気汚染が社会問題となっていた。
パイプラインの上に多数の住民
今回の事故について、高雄市の陳菊市長は馬英九(マーインチウ)総統に「工業用のガス管の配置を見直し、人口密集地を避けるべきだ」と要請。馬氏は経済部(経済省)に検討を指示した。各地の自治体はガス管などの安全点検の強化を決めた。
高雄は人口280万の南部の拠点都市で、石油化学工場も多い。爆発で1千人余りが学校などに避難。2万4千戸でガスが止まり、水道管にも被害が出て1万3500戸で断水した。
高雄市政府によると、地下には工業団地などに向け、プラスチックの原料となる可燃性の気体プロピレンの輸送管などが通っている。爆発前にこのうちの1本で圧力の異常があった。老朽化した管からガスが漏れた可能性が高いという。
日本では、石油化学原料のパイプラインは「コンビナート内で完結していることが多い」(石油化学工業協会)。市街地で今回のような爆発が起きることは考えにくいという。(2014.8.1 asahi.comより)
トップ画像:author Peellden http://commons.wikimedia.org/wiki/File:National_Highway_No10.jpg
※この記事はガジェ通ウェブライターの「なみたかし」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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