今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
■たまにはリモートワークについてポジティブに論じてみるか(メカAG)
「旅とリモートワーク」 2014年07月06日 『運河』
http://uiuret.hatenablog.com/entry/2014/07/06/232423
この人が実際にどういう仕事をしてるのか書いてないので(他のエントリには書いてあるのかも知れないが)、わからないのだが、ハテナの人らしい。というか学生さん?
まあそれはそうと、さんざんリモートワークについて否定的なことを書いてきたので、たまには別な面から書いてみる。ソフト開発のリモートワーク。あ、ソフト開発を知っている人は何も目新しいことは書いてないので、読まなくていいと思う。知らない人向け。
バイトの仕事ぐらいであれば可能だと思うんだよね。というか他ならぬ俺がそういう形で学生時代バイトをしていた。1週間か2週間ごとにバイト先に顔を出して、打ち合わせして「こういうプログラムを作ってくれ」といわれ、プログラミング自体は自宅でやっていた。できるとバイト先に持っていく。
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さすがにデバッグとかで手こずると、バイト先に入り浸りになることも少なくなかったけどね。単体でデバッグできる部分は自宅でできるのだが、最終的には他のモジュールを組み合わせて動作チェックをしなければならない。あと、組み込み系のソフトを作ってたので、物(特殊なハードウェアやメカ(ロボットですな))がないと、最終的にはデバッグできない。
自宅ではそういう部分は全部ダミーの処理(簡単なシミュレータ)を作ってテストするが、当然それだけで本番で動くほど甘くない。いまみたいにテストツールとかもなかったし。そもそもアセンブラとかで作ってたし。
ようは独立性が高いプログラムなら自分一人で自宅で開発できる。他の部分との絡みが増えていくにしたがって、バイト先に行って共同作業する比率が増えていく。
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だから自宅での作業を主体とするバイトに割り振れるのはそういう部分ということになる。ちょどうどよくそういう部分が見つかればいい。この場合、独立性の高さが重要で、難易度は関係ない。自分で言うのも何だけど、当時バイトの俺は、結構難易度の高いプログラムを組んでたと思う。
難易度の高いプログラムは自然と開発時間が長くなるから、家でじっくり組めて俺としては好都合だった。簡単なプログラムだとすぐにできてしまうから、次の打ち合わせに頻繁に打ち合わせに行かなければならない。
でも仕事によってはそういう都合のいい部分がないこともある。またどんな仕事でも誰かがそういうモジュールをつなぎあわせて全体をまとめて動作チェックもしなければならない。また客先との仕様の打ち合わせも。
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そのうち俺も就職してバイトではなく社員になった。そうなると立場が変わって、バイトに仕事を割り振って、できてきたプログラムをつなぎあわせて、動作チェックを行い、必要ならバイトに「ここの動作がなんかおかしいんだけど」とか、「この仕様をかえてほしい」とか言う側になった。
まあ煩雑というかダラダラと時間ばかりかかって、純粋なプログラミングに打ち込める時間は減ってしまった。バイトの頃はひたすらプログラミングしてればよかったんだけどね(苦笑)。
んで、バイトの頃にやってたような作業ならリモートワークで可能。現に俺は自宅でコーディングしてたんだから。一方社員になってからの仕事はリモートワークじゃできない。当時はネットなんてなかったからできないのは当然だけど、いまでもやっぱ難しいと思う。
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バイトの頃はひたすら好きなプログラミングに打ち込めて楽しかった。だから社員になった最初の頃は「もっとプログラミングしたいな」と思ってた。しかたないから会社の昼休みに趣味のプログラムを作ってたぐらい(苦笑)。
でもプロジェクトの運営として見た場合、それはそれで面白くはある。プロジェクトの方向を決める楽しさというか。もちろん上司や客からの要求には従わなければならないが、「それをどう実現するか?」というのは、広義にはプログラミングなわけで、それはそれで腕の見せどころ。バイトに比べれば裁量の範囲は跳ね上がる(当然といえば当然だが)。
だからずっと純粋なプログラミングの作業だけをしていたい、それが自分に合っているという人は、上述のようなバイト時代の俺の仕事のようなものを、リモートワークでやることは可能だと思う。当時も俺もプログラミング作業だけをずっとしていたいと思っていたし。
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ただそのうちプロジェクトの運営の面白さもそれなりにわかってきた。バイトの頃はそういうのを「つまんない仕事」だと思ってたんだけどね(苦笑)。まあつまんない部分(事務的、雑用的な作業)が多いのはその通りだし。
そういう部分の仕事はリモートワークではできないと思う。だからそういうのがやりたくなったら、バイトから社員になったのと同じように、リモートワークから会社で仕事をする形態にスタイルを切り替える必要がある。
その時気になるのは、あまり年食ってからだと、この切り替えが上手くいかないんじゃないかという点。やっぱプロジェクトの運営方法は先輩社員のやってることを時間をかけて徐々に見よう見まねで覚えていくわけで、未経験の人間が明日からいきなりはできないと思うのだよね…。まあ中には要領よくできる人もいるだろうけど、一般的には難しいんじゃなかろうか。
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以前
「「就職、絶望期」(海老原嗣生)」 2012年03月25日 『疑似科学ニュース』
http://nebula3.asks.jp/83295.html
や
「続・終身雇用・年功序列は日本だけか」 2014年06月11日 『疑似科学ニュース』
http://nebula3.asks.jp/208209.html
のエントリで述べたけれど、将来の幹部候補と現場の作業者が渾然一体となっている点が日本企業の問題で、欧米では入り口(入社時点)ではっきり分かれているという。日本の場合むかしは大卒が幹部候補生、高卒が現場の作業者という位置づけだった。高卒はせいぜい課長補佐ぐらいまでしか出世できない。逆に言えば将来の幹部候補生と対等に競争するような「無駄な努力」をしなくてすむ。
1980年代以降、大学進学率が増えたためこの住み分けは民間企業では崩れてしまった。これがポスト不足の原因であり、よくいわれるような経済成長が止まったからポストが不足しだしたというわけではない。みんな大学に行くようになって、みんな名目上は幹部候補生となってしまったので、ポストが不足するようになった。官僚ではキャリアとノンキャリア、軍(自衛隊)でも士官候補生という形で、住み分けがいまも残っている。
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なので再び将来の幹部候補生(プロジェクト運営やいずれはその先を念頭に置いた社員)と、あくまで現場の作業のプロフェッショナル(その代わり出世はできない)にわけ、後者をリモートワークで行うことは、あるいは可能かもしれない。
勤続年数が長くなってもあくまで仕事は現場の実務であり、仕事の難易度も変わらない代わりに、給料もそれほど変わらないだろうけれど、そういう生き方はそれはそれでありだと思う。そもそも現状だって全員が出世できるわけではないのだから、結果は同じだし、不毛な出世レースに参加する必要がないから、その分私生活が充実するだろう。
まさに最近人気の「がんばらない生き方」だ。1970年代頃までは、大卒は出世レース、高卒は頑張らない生き方、と自然と住み分けがされていたのだろう。「大卒エリート様は出世レースで大変だが、俺達高卒には縁のないもの」とぼやきながらも、彼らは彼らで自分たちの人生を楽しんでいたのかもしれない。
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おそらくこれが一番現実的なリモートワークスの形態だと思う。それをどう考えるかは人それぞれですな。「俺は将来も出世レースには参加しない。あくまで現場の作業者に徹する。給料もほどほどで結構。その範囲で割りきって仕事と私生活をバランスよく生きていく」というのは、ありだと思う。
それなら企業も「非幹部候補生」を採用する錦の御旗ができてよいかもしれない。「リモートワークス社員募集」と。
執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年07月10日時点のものです。
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