今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
■生産性を上げるには(メカAG)
生産性を上げる方法というのは、なんか最近ネットでよく見かけるような「ここが効率が悪い」「あそこが無駄だ」というような、だれでもすぐ思いつくようなアプローチではダメだと思うんだよね。
誰でもすぐ思いつくようなものなら、できるものはやってるわけで。「いや、できないのはぬるま湯だからだ、プレッシャーをかければやるだろう」という考えは、力に物を言わせるのだから野蛮ですな。
自分たちは古臭いおっさんよりも考え方が柔軟で賢いというなら、スマートに考えるべきだろう。なぜ都合のいい時だけ昭和の精神論みたいなアプローチをとるのか。
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いままで出来なかったことをやるには、アプローチを変える必要がある。考え方を変える必要がある。一つの例として少し前からGoogleがChromeの開発で導入した「高速リリースサイクル」。なにも根性で早く開発して生産性を上げようというものではない。
いままで多くのソフトウェアは、アルファ版、ベータ版、正式版と順に完成度を上げてたんだよね。アルファ版というのは試作製品のようなもの。とりあえず製品の全体像をつかむために作ってみましたというもので、まともには動かない。すぐにクラッシュしてしまう。「こういう製品になるんだ」というイメージを客に知ってもらうためのデモ。
それをベータ版で一生懸命バグをとって安定して動くようにして、正式版としてリリースする。
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Googleはこの考え方を変えたんだよね。アルファ版とベータ版と正式版をパラレルに(平行して)開発する。1つ先のベータ版をデバッグすると同時に、別のチームが2つ先のアルファ版を作っている。そして時期が来るとベータ版が正式版になり、それまでアルファ版だったものがベータ版に、と1個ずつずれていく。
この方法によりそれまで新しいバージョンをリリースするのに1年ぐらいかかっていたのが、1ヶ月半で次々にリリースされるようになった。Firefoxも真似して高速リリースサイクルを導入している。
むろんいいことばかりではないだろう。3つのバージョンを平行して開発&メンテナンスするのだから、チームも単純に考えれば3倍必要。でもそういうコストアップよりも変化の激しいインターネットに対応するには、こうした開発手法の方が有利だということなのだろう。
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こういう発想は、「ここが無駄だ」「あそこのコスト削減をしろ」とか言ってる人にはできないと思うんだよね。高速リリースサイクルの導入も振り返ればその前史みたいなものがあると思う。以前のLinuxとか安定版と開発版の2つを平行して開発していた。安定版としてリリース後に発見されたバグに対処する一方で、次のバージョンを開発してた。
ソフトウェアにはバグがつきものだから、次期バージョンを開発している時でも、現行のバージョンの細かなバグはとらなければならない。ただむかしはインターネットとかなかったから、バグを修正したバージョンもメーカーからフロッピーとかで送られてきた。一太郎とかも(笑)。だからそんなに頻繁にマイナーチェンジ版をリリースするわけにはいかなかったし、それが普通だった。
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インターネットによるオンラインアップデートの普及が、パラダイムシフトをもたらした。でも最初のうちはその「意味」に誰も気づかなかったと思うんだよね。単にフロッピーの配送料が節約できていいな、みたいな。こういうのはあくまで従来の延長での思考方法だよね。パラダイムシフトじゃない。
でもそのうち、こんなに安価に新バージョンをリリースできるなら、もっとリリースの頻度を上げたほうが、ニーズに素早く対応できるし、ベータ版とかアルファ版とかを先行して使いたがる物好きもいるようだから、そいつらに使わせて、バグ取りとか協力してもらおう、と考える人間が現れた。
アルファ版とかベータ版って言ってみれば不完全な製品だよね。それをエンドユーザーに使わせるなんて、なかなかできない発想ではなかろうか。家電とかでは考えられない。この掃除機は試作品なので「場合によっては火を吹きますので自己責任で使ってください」とかないよね(笑)。開発者とユーザーの距離が近いというソフトウェアの特殊性もあっただろう。でもこれもソフトウェアだけの特殊性とはいえないだろう。マンガとかだって趣味で書いている人もいるし。
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「古い考えに囚われない」「柔軟な発想」ができると自慢する人々は、姑の嫁いびりのようなちまちましたあら探しや、「無能な人間は首にしろ」みたいな陳腐な発想ではなく、真にまったく新しい発想でものを考えてくださいよ、という話。
執筆:この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年06月12日時点のものです。
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