『勇者ヨシヒコ』シリーズや『コドモ警察』、『HK/変態仮面』など、次々と独自の世界観を生み出す福田雄一監督。公開待機作『女子ーズ』や7月からスタートするドラマ『アオイホノオ』など、今最も活躍している監督と言っても過言ではありません。
そんな福田雄一監督が再び、HKT48の指原莉乃さんを主演に迎えたのが、5月30日公開の『薔薇色のブー子』。「ブー子」というあだ名で呼ばれる大学生の幸子が、自分を変えようと奮闘しながらも様々な不幸に見舞われる様を描いたコメディです。
指原さんの捨て身の変顔、体当たりの演技はもちろん、ユースケ・サンタマリアさん、田口トモロヲさんなど豪華な共演陣にも注目。今回は福田監督に作品への想いや「指原を初めて可愛いと思った」など、指原さんにまつわるエピソードを伺って来ました。
――本作は、女子高生が次々と不幸な出来事に見舞われるという、矢口史靖監督の『裸足のピクニック』にヒントを得たそうですね。
福田:そうなんですよ。初めてサッシーに会った時から、『裸足のピクニック』の主人公に似てるなと思っていて。表情が作れないわけですよ、へたくそだから。でも、その作れないなりの表情の変化が面白いから、『裸足のピクニック』みたいに主人公が不幸に見舞われて行く様子をサッシーで撮りたかった。『ミューズの鏡』撮ってる途中からしつこく秋元さんに言ってましたね。
――念願かなって、この作品が生まれたわけですが、実際の撮影はいかがでしたか?
福田:あいつって女優に本当に興味が無くて、「バラエティ番組のひな壇の後ろでゆるくやっていきたい」と言ってたんだけど、総選挙一位になったからなのか、何か違う理由があるのか、すごい変わったんですよね。
――指原さんの意識がですか?
福田:この映画で初めて“座長意識”が芽生えたのか知らないけど、すごくやる気があった。序盤で「映画ってすごくたくさんの人間が関わっているけど、全員サッシーの為に来てるんだよ」って話したんですけど、珍しくマジメに聞いてて。最初は「映画なんて嫌だ嫌だ」ってずっとゴネてたのに、撮影中に「指原の乱」のロケで会った時に「映画の撮影すごく楽しいです。スタッフさんもすごく良い方で」って言ってきて。でも、俺の映画のスタッフってずっと一緒だから、スタッフが変わったわけじゃなくて、指原の意識が変わったからそう感じる事が出来たんですよね。後、今回のサッシーは珍しく可愛いですね!
――ナンバーワンアイドルにそんな事言えるのはきっと福田さんだけですね(笑)。
福田:今までのブサイク面じゃない。これまでは女優としての自覚が無いから、女優の顔が出来上がってないわけですよ。朝とかパンパンにむくんだ顔で来やがって。だから初めて「指原今日なんか可愛いな!」って言いましたよ。「夜、長時間お風呂に入って、むくみを取ってから寝るようにしてます」って言われて、そういう工夫をする様になった事がものすごい進歩ですよ。
――それだけこの映画にかける想いが強かったという事ですね!
福田:そうそう。指原が秋元さんに「夕食を付き合ってくれませんか?」って呼び出して、秋元さんは2人きりだと恥ずかしいからリリー・フランキーさんを誘ったらしいんですね。でも、指原は「明日の撮影のセリフ覚えないといけないんで!」ってちゃっちゃと1時間飯食って帰ったらしいですよ。秋元さんは「自分から誘っておいて、飯だけ食って帰るのかい!」って驚いたらしいけど、それだけ映画を大切に思ってくれてたんだなって嬉しかったですね。
――そして指原さんのお父さん役であるユースケ・サンタマリアさんの、「これぞユースケ・サンタマリア!」という演技も最高でした。
福田:ユースケとは元々仲が良いっていうのもあるんですが、企画の段階でお父さん役はユースケが良いと思ってました。状況としてはかなり悲惨なキャラクターなんだけど、それが悲しく見えたら終わりだと思ったんだよね。商社にいた頃よりも今の方が幸せなんじゃないかっていう明るさ。サッシーが不幸な目にあってどんどん落ち込んでいく時に、決して弱音を吐かないお父さんという人物が対比でいて、だからこそ最後の言葉が響くのだろうと。
偶然にも同じ大分の中学出身でね、大分が産んだテキトウ二大巨頭(笑)。ユースケって役者としてはストイックだけど、これは本人そのままの役だから、僕からは何もオーダーせずのびのびと演じてもらいました。
――その他、キャスト陣で監督がこだわった事はありますか?
福田: 田口トモロヲさんが出てくれたのは嬉しかったですね、なんで受けてくれたんだろうって思うくらい。「お子さんがAKB48のファンですか?」って聞いてみたんですけど「いや、脚本が面白かったから」って言われて。指原はトモロヲさんの事知らなかったんですよ。AKB48の現場でそれを聞いた(大島)優子ちゃんが「田口トモロヲさんってすごい人なんだよ!」って言ったらしく、「優子ちゃんにうらやましがられました」って言ってきました。
――堤真一さんを知らなかったという指原さんらしいエピソードですね(笑)。劇中に登場するヒーロー「魚レンジャー」は、人気芸人さん達が扮しているのに、顔が一切出ないという、これまだ豪華な。
福田:僕が今大好きな、シソンヌとジューシーズとザ・ギースに出てもらいました。そうだ、顔出てないからエンドロールで「どこに出てたっけ!?」って思う人たくさんいるだろうね(笑)。
――そんな豪華なキャスト陣が“不幸な出来事”になって、ブー子に襲いかかるという……。よくここまで不幸な出来事が思いつくなあと感心してしまいました。
福田:元々バラエティ作家なので、「不幸」というテーマでネタ出しする感覚で、久々に頭使ったな、っていう気持ち良さがありましたね。「道路にまきびしがあってタイヤがパンクする」所で、ユースケさんが「忍者が出やがった!」って言いますけど、「忍者が出やがった!」って自然と言えるユースケってすごいなあって思いましたね(笑)。
――約90分の上映時間中、小ネタの連続で息つく暇が無いですね。
福田:『33分探偵』から何年か、カッコいい人がカッコいい感じでものすごくくだらない事を言うって事をやってきていたんだけど、今回は久しぶりにそれをしていないんですよね。いわゆる、ワンクッション無いストレートなお笑い。コミカルなBGMも使って、コテコテな感じで。昔のアイドル映画ってこんな感じだったなぁなんて思いながら。
サッシーのファンって幅広くって、還暦過ぎた方が握手会来るって言ってましたからね。あのあか抜けなさが良いんだと思うんだけど。あと、子供のファンが多い。だから、地方のシネコンで流れて、子供からお年寄りまでが安心して観れる作品にしようと思ってはいましたね。
――監督はこれから公開される映画、ドラマもあり、最近本当に色々な場所で活躍していますが、今後のヴィジョンというのは考えていたりしますか?
福田:「手広くやるね〜」って言われる事がよくあるんですけど、僕としては手広くやってるつもりなんて全然無くて。メディアは違っても笑い以外の事をやった事は無いんですね。例えば僕が「スッキリ!」の構成作家をしているとしたら、「手広い」って言われるのは分かるんですよ。でも僕は情報番組の作家もした事無いし、恋愛ドラマもやった事無いし。
――アプローチは異なっても、全てが「笑い」であると。
福田:心の師と仰いでるのが、アメリカのザッカー兄弟なんですけど。『裸の銃を持つ男』とか『フライング・ハイ』とか相当くだらない映画ばかり撮ってたくせに、いきなりの『ゴースト/ニューヨークの幻』っていうね。アレって壮大なボケでしょ(笑)。だから僕も「福田はくだらないのしか撮らない」ってもう少し世間の皆さんに認知される様になってから、『ゴースト』を撮りたいなとは思っています。
――監督の『ゴースト』! 楽しみにしております(笑)。今日はどうもありがとうございました。
『薔薇色のブー子』ストーリー
何かにつけ文句ばかりで、「ブー子」というあだ名で呼ばれる大学生の幸子は、いつか少女漫画のような出会いがあると信じている。そんなある日、趣味がぴったりでジョニー・デップに似ているという男、スパロウさんとTwitter上で知り合った幸子は、スパロウさんに会うため外出するが、何十匹もの黒猫に遭遇したり、落とし穴にはまったりと、散々な目に遭ってばかりで……。
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