鼻血騒動で話題になった『美味しんぼ』。1983年より、かれこれ30年以上続いている作品だ。アレの影響を受けて、頑なにフライドチキンを食べなかったりスーパードライを飲まなかったりしていた過去を消したい感じである。とはいえ、今コミックスを読み返しても山岡と栗田さんの結婚式くらいまでは間違いなく面白かったというのは確かだと思う。髪型を変えるまでの初期栗田さんの可愛さは異常。
作中にはいろいろな料理が出てくるのだが、中でもいつか食べたいなぁと思っていたもののひとつが、コミックス9巻収録の『食べない理由』に登場する“仏跳牆(ファッテューチョン)”。とある理由で外では食事をしない“東起デパート”の稲森社長に、なんとか親睦会で物食べさせようとする“ニューギンザデパート”の板山社長が山岡に相談し、出すことになった究極のメニューのひとつ。
今回、その“仏跳牆”を食べる会が催されるということで参加して来た。仏跳牆は一回で作るのが10人前になるので、10人で集まる。場所は幡ヶ谷にある有名店“チャイナハウス龍口酒家”。参加者とは初めてお会いする方が多かったのだが「昔の『美味しんぼ』はよかったのに、どうしてああなった」という話に花が咲いた次第である。
キジを丸ごとと、フカヒレ、シカのアキレス腱、アワビ、ナマコ、魚(何の魚かは不明)の浮袋を干したものを器に入れて3時間半蒸したとのこと。
漫画のように「ああ……この香りを胸の奥まで吸いこむと、何やら押さえがきかなくなってくる……」とまではいかないが、なんともいい香り。飲んでみるとトロリとした口触りで、その複雑な味わいには脱帽する。漫画みたいに「ズッ ズッ」と一心不乱に飲みほしてしまった。アワビやナマコなどは干すと旨味が増すというが、それらの濃厚な旨味がスープに詰まっている感じである。
器に入れる材料でいろいろ変化がつけられるという仏跳牆、今回提供していただいたもののお値段は10人前で3万円。コーヒーカップ大の器に具も入って、一人2杯くらいは飲めるだろうか。一人アタマ3000円ナリであるが20数年来で一度食べてみたいと思っていた料理であるので特段高いとは思わなかった。この日は、他にも皆でいろいろな料理を頼んで、結構な量のお酒も飲んで一人頭9000円かそこらといったところだろうか。名物のクロレラ入りの麺とチャーハンで締めて大満足だった。いずれまた人数を集めて食べたいと思う次第なのである。
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