続・言葉で伝えにくいものの正体

今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

■続・言葉で伝えにくいものの正体(メカAG)
前述のように「言葉で伝えにくいもの」とは伝達すべき情報量の多さに起因する。なので俺はそれが言葉以外の手段で伝達できるとは思わない。音や映像や触覚やヴァーチャルリアリティで伝えられるかというと、それは生の外的な情報を伝えているのであって、人間が感じているものそのものではない。

すなわち「花の香」をテクノロジーでネット越しに伝えても、それは相手がその花の香に「感じた気持ち」を伝えることにはならない。そりゃ香りを伝える事は有用だとは思うが、この場合に伝えたいものはあくまで人間の思考や感情のはず。それは所詮は言葉で伝えるしかない。脳の中身を直接伝える技術ができない限り。

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なぜ「いつもの自分」と「いつもと違う自分」の差分が言葉で伝えられないのか。一番大きな理由は、そもそも伝えようと思わない点だろう。「健康」という言葉は直接定義できないにもかかわらず、それを示す言葉が作られ、ある程度役に立っている。それはそういう言葉の必要性があったからだろう。もっといえばそれを他人に伝える必要性があったということ。

「なんとなく元気がない」とか逆に「なんとなくウキウキしている」という状態を人間はあまり他者に伝える必要性を感じなかった。なので概念(言葉)も整備されてこなかった。

またそもそも概念として一般化しにくいというのもあるだろう。一般化(抽象化)は共通部分を括りだすことで行われる。「りんご」だったら、個別にはさまざまな色や大きさの物体がもつ共通の性質を括りだしたものだ。

人間の感情も喜怒哀楽のようにシンプルなレベルでは一般化(言語化)されているが、そこから一歩踏み込むと一気に複雑になり、共通化の手に負えない。

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ただ、それはこれまで人間がそういう感情などを身近な人にしか伝える必要がなかったからかも知れない。ネットの普及によってネット越しに言葉で微妙な感情を伝える必要性を感じれば、そのためのさまざま言葉(概念)が新たに作られていくだろう。たとえば「激しく同意」「逝ってよし」など、インターネット以前にはなかった言葉だよね。

感情というのは従来赤の他人に積極的に伝える必要性が少なかった。その場にいる目の前の相手に身振り手振りを交えて伝えられれば十分だったのかもしれない。それがネット越しに離れた相手にも伝える必要性が生まれれば、いままで未整理だった人間の「心」の部分も分析が進み、伝え方も整備されていくだろう。

感情に関しては、文字のない昔と同じく、口伝で伝えているような段階だった。それがネットによって一気に近代化し文字化できれば、資料として分析可能になり、人間の心の研究も進むだろう。

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古今東西の名作の主人公の心理的分析をした本がある。このように人間の心を記述しているのは従来は、フィクションしかなかった。だからそれを研究材料にするしかなかった。ここにきてインターネット時代になって誰もが膨大な量のテキストを書くようになったから、心理学の分野にもブレイクスルーが起きるかもしれない。

限られた名作の主人公のようなサンプルで手探りで当て推量していた時代から、実際の人間がコミュニケーションに使った膨大な量のテキストをコンピュータで系統だって分析できるようになれば、心理学も工学になるかもしれない。

関連記事:

「言葉で伝えにくいものの正体」 2014年04月10日 『ガジェット通信』

http://getnews.jp/archives/548532

執筆:この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2014年04月09日時点のものです。

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