『ワイルド・スピード』シリーズでおなじみのヴィン・ディーゼルがダークヒーロ“リディック”に扮するSFアクション『リディック:ギャラクシー・バトル』。銀河の彼方に取り残されたリディックの首を狙う賞金稼ぎ。決戦がはじまろうとした時、嵐と共に未知の生命体の大群が出現して……。
全米初登場1位を記録したSF超大作、映像も音響もそれはそれはものすごい迫力です。CG全盛期のこの時代、音だって全部機械で作ってるんでしょう? そう思う方も多いでしょう、しかし本作では“生音”で効果音を作る「フォーリーアーティスト」が大活躍しているんです。
『リディック:ギャラクシー・バトル』で効果音を担当したフォーリー・アーティストの小山吾郎さん。デンゼル・ワシントン主演「フライト」、マット・デイモン主演「エリジウム」、本年度米アカデミーノミネートの「アメリカン・ハッスル」など、様々な作品で活躍しています。
フォーリーアーティストってどんな仕事? どうやって音を作っているの? 今回は小山吾郎さんに電話インタビューを敢行。音作りについて色々とお話を伺いました。
――まずフォーリーアーティストがどの様なお仕事なのかを簡単に教えていただけますか?
小山吾郎(以下、小山):フォーリーというのは映画やテレビの効果音を録音するプロセスの一つです。映像に合わせて色々な物を使って音を出すという。日本では「生音」と言ったりしますね。
――どんなに技術が発達しても生音でしか表現出来ない効果音があるのですね。
小山:そうですね、実際に人間が出した音じゃないとリアルな演出が出来ない場合があります。例えば水の音は機械では作れない音ですね。フォーリーというのは映画に音がつくようになった時代からあるものなので、とても古い技術で、映画を人間が作っている限りは無くならないアートです。先輩達が培ってきた技術を受け継いで使っています。あと、フォーリーの醍醐味は作品ごとに音の出し方を変えていく所にあって、材料は大体同じ物になりますが、少しずつ工夫をして音を作っています。
――小山さんが音作りしている時の写真を見たのですが、野菜をかじったり、パスタや鶏肉を使ったり、これから映画の効果音が出るなんて想像出来なくて面白いですね。
小山:先輩達が築き上げてきたレシピはもちろん、自分で色々試行錯誤して作ります。セロリとグレープフルーツは大好きですね。グレープフルーツは人間の体や動物の体を刺す音を作る時に使います。皮が固くて、実も肉厚で、汁が入ってるので、ピッタリの音が出るんですよね。重宝しています。
――そういう作業をしていると、食事をしている時でも「これ何かに使えるかも」と、考えてしまうのでは?
小山:そうですね、普段の生活でもいつも考えてしまいます。スーパーマーケットに行って野菜をフォーリーの観点から選んでしまったり、買った後耳元で叩いてみたり、子供にはいつも「パパまたやってる!」って言われています(笑)。
――これまでフォーリーを担当して印象に残っている作品はありますか?
小山:最近では『オール・イズ・ロスト 最後の手紙』という作品です。セリフが全く無い映画で、主人公が救命ボートでひたすら海を漂うという、作品としてはそれほどエキサイティングな物ではありませんが、音を入れるのはとても楽しかったですね。水の音を作るのが好きなので、色々な表情の水の音を作れて。
後は『クローバーフィールド HAKAISHA』は楽しかったです。全編ビデオカメラで撮ったというテーマの作品なので、普段避けている事が出来た映画だったんですね。他の作品だとノイズが入らない様に一生懸命注意する所を逆に加えたりして。わざと荒れた音を作ったり、ぶつ切れにしたり、めちゃくちゃさを表現しました。
――それぞれの作品にこだわりポイントがあって、もう一度見直したくなりました。『リディック:ギャラクシー・バトル』の音響を担当されていかがでしたか?
小山:作品のスタイルによって音のスタイルが変わるのですが、『リディック:ギャラクシー・バトル』という作品については“カッコいい”“ド派手”という部分を大切にして音作りをしました。僕はもともとアクション映画が好きなので、やっていてとても楽しかったです。
――本作にかけた時間はどのくらい?
小山:大体12日間くらいですね。他の作品と比べてもかかった時間は平均的なのですが、ここまでの大作だとスケジュール的にはタイトでした。フォーリーでカバーする部分が多かったので。特に冒頭のシーンではリディックがあまり喋らないので、音のオンパレードが楽しめると思います。裏側ではどんな物を使って音を出しているのかな? など想像しながら作品を楽しんでみてください。
――どうもありがとうございました!
『リディック:ギャラクシー・バトル』全国公開中!
全宇宙の支配をもくろむ戦闘軍団の王となったリディックだったが、重臣たちの反乱にあい、銀河の彼方に置き去りにされてしまう。そんなリディックの首を目当てに、2組の賞金稼ぎが灼熱の惑星にやってくる。決戦が始まろうとした時、嵐とともに未知の生命体の大群が出現。リディックは脱出までのタイムリミットが24時間と限られた中で、生き残りをかけて戦う。
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