今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
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■指導者の資格 一貫性と誠実さ・・・私たちが働いた成果は誰に?(中部大学教授 武田邦彦)
1956年から1990年までの34年間、日本は高度成長をした。途中の1973年に石油ショックがあったので、その前は年率9%で、その後は年率4.5%程度で成長したから、前期高度成長期と後期高度成長期に分けても良いだろう。
いずれにしてもこの間で日本のGDPは8.8倍になった。GDPがそのまま個人の所得になるわけではないが、インフラストラクチャーなども入れれば、総合的に個人の豊かさが8.8倍になったとできるし、5万年の月給が44万円になったと言っても良い。
国の経済に関心のある経済学者は、「日本はヨーロッパ並みに所得に国になった」と言うだろうが、私は全く違うと思う。国民から見て、この高度成長と言うのはどういう意味を持っていたのだろうか? 国民はなぜ一所懸命になって働いたのか?
「日本は貧困な生活から、ヨーロッパ並みの豊かな人生を過ごそう」と政府は呼びかけ、NHKはアメリカの家庭のドラマを放映した。そこには、自動車、冷蔵庫、デート、家族旅行などが満載されていて、私たちはそれを夢見たものである。
日本国民は素直に政府の言うことを聴き、一所懸命になって働いた。朝は6時に起きて7時に満員電車に乗り、駅員が押し込んで会社に行った。夜は10時まで働き、11時に妻が夕食とお風呂を準備してくれていた。一家総出でお父さんの仕事を守り、そして日本は高度成長をした。
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://getnews.jp/img/archives/2014/02/22.jpg
ところが、前期高度成長が終わったころ、日本人の所得が「消費」を上回り、そのお金は、一部が赤字国債に、一部が年金に回った。さらに後期高度成長が終わったら、さらに赤字国債と年金拠出でお金は政府に吸い取られていった。
1990年代に吹き荒れた「環境問題」と「少子化問題」の正体は、高度成長した日本人の所得をいかにして吸い上げるかの政府の作戦だった。すでに1990年には日本の環境破壊は終わっていて、環境が原因で病気になる人はほぼゼロになっていた。でも、「ゴミがあふれる」、「ダイオキシン」、「地球温暖化」と次々と環境問題をでっち上げて、お金を吸い上げるのに政府は懸命になった。
年金では社会保険庁が故意に不祥事を起こし、積み立てていた年金がなくなっているのを隠ぺいし、マスコミはそれを手伝って「年金の大幅な流用問題」を「少子化問題」にすり替えた(少し説明がいるが、急ぐ人はシアターテレビジョンの「現代のコペルニクス」2月のニコニコ動画を見てほしい)。
・・・・・・・・・
「まともな政府」というのはいったい何をするためにあるのだろうか?
現在の日本政府も、首相は「GDPの動きを見て増税を決める」と言い、決して「給与の動きを見て・・・」とは言わないし、日銀総裁は「物価を2%上げるのが目標」と言い、決して「給料を2%上げるのが目標」とは言わない。
つまり、日本政府というのは国民の利害も代表していないし、国民の仕事の辛さも知らない。GDPも物価もどちらかというと政府の指標だが、政府のもともとの存在意義は「給料があがるか」(国民が豊かになるか)であって、GDPそのものではない。GDPが高くなっても、その分はすべて政治家、官僚、大企業に行ってしまって、国民には届かないというのが20年も続いている。
だから、今回の増税も、インフレターゲットも、アベノミクスも、これまでの20年のように、国民に危機意識を作り出し、働かせ、銀行預金を吸い上げ、増税して一部の人だけが儲かるという仕組みの可能性が高いのだ。
私たちの世代は「働き蜂」、「ウサギ小屋」とマスコミに揶揄されながら、ひたすら「子供には豊かな生活(水洗トイレ、内風呂、瞬間湯沸かし器、自家用車など)」をさせたいと一心に働いた。でも、その結果が、増税、非正規雇用者、休暇のない生活、解雇の危険だったということは、政策に一貫性がないことを如実に示している。
(日本人の努力の結果:休暇:フランス32日(1年)、日本8日。 旅行:フランス1年20泊、日本1年1泊2日)
私がこのブログで誠意のない日本は衰退すると考えたり、NHKや東大を無くさないと日本は良くならないというのは、日本が繁栄してきたのは、世界にもまれに指導層が道徳を大切にしたからで、明治天皇がご誓文で示されたように、私利私欲、利権、メンツなどにこだわらず、「万機公論に決すべし」を旨としたからに他ならない。
日本の社会が歪んでいるもっとも大きな原因は、首相や大臣、東大教授、NHKなど日本を指導する立場にある人たちが、「自分の利益」、「省益」などを優先して、本来の役割である「国民の努力に対して国民が幸福になることで、自分も嬉しくなる」という気持ちになることだ。
執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2014年02月18日時点のものです。
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