安田氏は『ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて』の著者であり、長年にわたって外国人問題や在特会、ネット右翼、ヘイトスピーチなどを取材している。
「本日、ヨーゲンさん宅を取材で訪ねました。彼がなぜヘイトスピーチを繰り返すのか、その理由を聞いてみたかったからです。実はこれまでに数度、彼の地元に足を運び、周辺取材を重ねていましたが、直接に『当てる』ことはしませんでした」
訪問時の様子は、10連続でツイートされた。その直後、ヨーゲン氏はこれまで自身が行ってきたことは棚に上げ、ひたすら言い訳と保身に走った。
「右翼弁護士求む!訴訟問題 ヨーゲンまで連絡してください!」
「取材で取得た個人情報でも本人の意思に反して使われることは違法行為です。まして、今いわれの無い違法行為とかで事実無根で第三者の伊藤あたりから脅迫され、安田氏も脅迫している。しかし私にはまったく後ろめたい事はないから刑事告訴間違いなくします。金かけずにすむ」
私は初めて安田さんのツイートを見た時、ただすごいと思った。ヨーゲン氏の自宅を探し当てる記者としての執念や矜持を目の当たりにして、胸が苦しくなった。
知らないうちに涙もあふれて来たが、同時に怖くなった。これまで数え切れないほどのヘイトスピーチをまき散らしてきた人間が、匿名という衣を剥がされたとたんに見せる無様な姿を見て、なんとも言えない気持ちになった。
そして、もしも彼に家族がいるなら、彼がしてきたことを見て、発したつぶやきを見て何を思うだろうとも思った。
私は何年にもわたって、ヨーゲン氏にひどいメンションを送り続けられてきた。私が在日コリアンの女性であるため、その大半が民族と性的な侮辱が入り混じったものであり、いわゆる「複合差別」に苦しめられた。
従軍慰安婦を揶揄したり、なぞらえたりもされた。時にはおぞましい画像や動画のURLも貼り付けられた。
初めて明らかにするが、昨年の2月にはしまふくろう氏を脅迫で警察に訴えたが、実は彼だけではなく、複数の人物も訴えた。ヨーゲン氏もその一人だったが、当時は刑事では事件化が難しいという答えだった。状況が変わった今、再捜査はあるのだろうか。
その後、反レイシズム運動で活発な活動を展開してきた伊藤大介氏も、ヨーゲン氏の身元を特定していると示唆したところ、さらにヨーゲン氏は激しく反応した。
「ヨーゲンを提訴したい人はお知らせくださいね。住所氏名お知らせしますよ」
「お前がちゃんと自分のしてきたことに向き合い、反省、謝罪し、2度と同じ過ちを繰り返さないとだな」
しばらくやりとりを交わしていたが、ヨーゲン氏は最終的には観念したように
「わかったお前に服従するからなんでもほしいものを言えかなえてやる」
「明日は反省して自首します。これでいいですか?」
と答えた。
安田氏がヨーゲン氏の自宅を訪問して、1週間が過ぎた。2ちゃんねるでは安田氏がヨーゲン氏の自宅を訪問したことに関するスレッドが6まで伸び、「祭り」となった。ツイッター上でも安田氏や伊藤氏への喝采と、ヨーゲン氏への非難が飛び交った。
それでも私は、まだヨーゲン氏が怖い。
ヨーゲン氏にぶつけられたひどい言葉はこの先もネット上に永遠に残り、何かの拍子に巡ってくる。ここ数日でも、何度も目にした。ネット上で行った差別は、消えることがなく、拡散し続けて行く。
また、この話題に関連してヨーゲン氏は私の名前を挙げてさらに侮辱を重ねている。
「質問、人が厳重に保管してた盗んだ個人情報って、その盗人の正義感で勝手に使えるんですか?たとえば、俺が李信恵さんをトンスルなんとかで、罵ったって、安田くんが、おい!訴訟起こす、場所も名前も特定してるんだぞとか、使えるんですか?やるのかお答えをお待ちします」
朝鮮人であることも、女性であることもずっと踏みにじられて来た。彼が、自分がしてきたことの罪の重さを知る日が、反省する日が来るんだろうか。
そして彼のフォロワーの一部は、彼の行為を肯定し、拡散し続けてもいる。そういうことも含めて怖い。
昨年一年間は、路上に飛び出したヘイトスピーチが激しさを増したが、それらへのカウンター活動や反レイシズムのうねりが大きくなった年でもあった。
だけど、ネット上の差別はずっと消えずにくすぶり続けている。そして、ネット上で差別に出会った被害者は、どうやったら救済されるのだろうか。今年は、そういう部分に重点を置いて深く考えて行きたい。
本年もどうぞよろしくお願いします。
画像:「本日、ヨーゲンさん@Yougen_Sato 宅を取材で訪ね ...」 Twitter - yasudakoichiのキャプチャー
※この記事はガジェ通ウェブライターの「李信恵」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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