今回は登大遊さんのブログ『登 大遊@筑波大学大学院コンピュータサイエンス専攻の SoftEther VPN 日記』からご寄稿いただきました。
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■Amazonで中古書籍をスキャン代行業者に送付してPDF化してもらいKindleで読む方法とツール
Amazonで中古書籍を購入し、書籍のスキャン代行業者(いわゆる自炊業者)に直接送付することで、中古書籍をPDF化してもらい、そのデータをPCの画面やKindleで読むという方法が便利である。
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://getnews.jp/img/archives/2013/09/amazon.jpg
Amazonでは、新品の本のほか、多数の中古書籍(古本)が販売されている。1冊の新品の本の商品ページを開くと、たいていの場合は、中古書籍も販売されている旨が表示される。中古書籍のリンクをクリックすると、その書籍の中古書籍を販売している古本屋さんの一覧と、それぞれが提示している価格の一覧が表示される。価格は出品者が自由に決めることができるので、需要と供給によって変動する。希少な本で、すでに新品を入手できないようなもの(絶版)の場合は、非常に高額になっている場合も多い。一方、まだ新品の本が供給されている状態の本の中古書籍はとても安く、場合によっては「1円」などの価格で販売されている。1円といっても、その他に配送料が250円かかるので、最低でも251円からの販売になる(実際の普通郵便での配送にかかるコストは100円程度なので、出品者は配送料で利益を得ている訳である)。
しかし、中古書籍は新品と比較してカバーが汚れていたり、綴じ目が疲労していたり、紙が変色していたり、前の所有者の環境において付着した臭い(たとえば煙草臭など)が残っていたりする場合が多い。クリーニングを行って出品している古本屋さんもあるようだが、その場合はクリーニング剤の臭いがする。このように、新品の本と比較して、中古書籍を購入することには少し抵抗がある人も多いはずである。新品の本と、中古書籍とでは、内容は全く同じである。それでもなお、251円で中古書籍を購入できるにもかかわらず、あえて定価の2,500円を支払って新品の本を購入したくなる理由は、手元に届く本がクリーンであり、紙の変色や臭いの付着などが無いという保証を得たいためである。
つまり、読者の視点で考えた場合、Amazonの同一のページに安価な中古書籍があるのにもかかわらず、定価を支払って新品の書籍を購入するという行為について考えると、定価と中古書籍の売価との金額の差の主たる要素は、「手元に届く本が衛生的に問題ないことの保証の対価」であると考えることができる。
さて、中古書籍を書籍のスキャン代行業者にスキャンしてもらい生成されるPDFデータを自分のPCの画面やKindleで読む場合について考えてみる。スキャンされる元の書籍のカバーが多少汚れていたり、ヘンな臭いが付着していたりしたところで、いったんデジタル化してしまえば、PDFデータからは汚れも臭いも発生しないので、本を読む分には全く問題ではなくなる。「ヘンな臭いのする中古書籍をPDF化してもらったら、そのPDFを読む際にPCの画面からヘンな臭いが発せられる」、ということはあり得ない(仮にデジタルにおける臭いの伝搬が可能になれば、そのほうがすごい。大革新である)。ただし、元の書籍のページの汚れがひどい場合や、前の所有者による書き込みが見られる場合は、それらもあわせてスキャンされてしまう。しかしAmazonの中古書籍販売ページでは、書き込みがある場合はたいていそのように記載されている。ページの汚れについては、軽い変色程度であればPDFデータを画像補正することで消去することができる。
Amazonで購入した中古書籍を書籍のスキャン代行業者にスキャンしてもらう場合の問題は、いったん自宅に Amazonの出品者から書籍が郵送されてきたものをスキャン代行業者に転送するのにかかる時間と送料である。送料は微々たる金額である一方で、そのような作業を行う「手間」が面倒であると感じられる場合が多い。
そこで、顧客の手間を軽減するため、いくつかのスキャン代行業者は、Amazonなどのオンラインショップの書籍送付先をスキャン代行業者の住所に設定することを許容している。この場合、スキャン代行業者に会員登録をすると会員番号が発行されるようになっており、その会員番号を、スキャン代行業者の住所の末尾に付加して中古書籍を注文するという方法が可能である。スキャン代行業者の側では、Amazonや出品者から届いた書籍の宛先住所に記載されている会員番号をもとに顧客を識別し、スキャンした結果のPDFを顧客に納品する。
これは読者の立場から見て何を意味するのか。Amazonで書籍を購入しようとしたときに、まだその書籍の電子書籍版(Kindle版)が提供されていないような場合は、Amazonでその紙の書籍を注文し、配送先をスキャン代行業者の住所に設定して注文ボタンをクリックすれば、2、3日後にスキャンした結果のPDFデータが顧客に納品される、という体験を得ることができるのである。これは非常に斬新で快適な体験である。Amazonでは紙の書籍しか販売されていなくても、PCの前でボタンをクリックするだけで、数日間のタイムラグはあるものの、しばらくすれば電子書籍版(PDFデータ)に変換されてダウンロード可能になるという訳である。この間に、読者は一度も物理的な紙の書籍に手を触れる必要がない。Amazonで中古書籍を購入する場合でも、前述のように中古書籍が汚れているのではないかとか、ヘンな臭いがするのではないかといった衛生状態について心配することなく、その中古書籍を自分の好きな端末で快適に読むことができるのである。
これまで、Amazonで販売されている中古書籍は、古本屋さんの店頭で現物確認をしてから購入する場合と比較して、購入前に汚れや衛生状態を確認することができないため、購入に抵抗感が生じるという問題があった。このような抵抗感によりAmazonでの中古書籍の購入を控えようとする人は多くいたのではないかと思う。これらのAmazonに出品されている中古書籍の大量の在庫が効率的に有効活用される道は、より多くの読者の間で、Amazonの中古書籍販売ページから直接スキャン代行業者に送付してスキャンを委託するという方法が普及することによって開かれる。
スキャン代行業者は多数の会社が乱立しているので、インターネット上で検索して好きな業者を見つけることができる。一例として、ブックスキャン http://www.bookscan.co.jp/ というサービスがある。このサービスは、http://www.bookscan.co.jp/company_history.php にあるようにかなり急速に成長しているベンチャー企業が提供するものであり、多数の工程をシステム化することで非常に効率的に業務を行っていることが特徴的である。この業者の場合、スキャンした後の物理的な本は再販せずに、完全溶解処分を行うことをWebサイト上で明記している。すなわち、1部の中古書籍から生成可能なスキャン済みPDFは1部のみである。このように、スキャン済みの書籍を廃棄処分する旨を明示してスキャン代行事業を行うことは、著作権者の利益を害する恐れがなく、大変素晴らしい姿勢であると評価することができる。(ブックスキャンからお金をもらって宣伝している訳ではない)
『BOOKSCAN』
http://www.bookscan.co.jp/
「サービス沿革」 『BOOKSCAN
http://www.bookscan.co.jp/company_history.php
このように、Amazonとスキャン代行業者を組み合わせて、自分専用の電子書籍データを作る方法は、健常者だけでなく、たとえば身体障がい者の方や寝たきりのお年寄りなどにとっても大変有効な方法である。これらの弱者の方々は、たくさんの本を読みたいけれども、書店へ行くことが難しい。Amazonの通販で購入しても、玄関まで本を受け取りに行かないといけない。玄関での受け取りは誰かにやってもらったとしても、本を読む際には自分の手でページをめくらなければならない。手が不自由なお年寄りは、自分の力で本を読むことが難しい場合がある。しかし、このような弱者の方々は、これからはAmazonで中古書籍を注文し、これをスキャン代行業者に送付してPDFで納品してもらうことで、自分のパソコンの大画面で本を読むことができるのである。読書中に本を手で保持したり、ページめくりをしたりする必要はない。マウスや、マウスに代わる身体障がい者向けの操作デバイスで、快適にページめくりをし、大きな文字サイズで画面に表示して快適に読むことができる。身体障がい者や寝たきりのお年寄りなどで読書が好きな方々が、Amazonとスキャン代行業者との組み合わせの便利さを知れば、涙を流して喜ぶに違いない。
また、日本国外に長期出張している日本人が和書を読むのにも便利である。日本のAmazonから海外発送すると時間やお金がかかる。また、中古書籍について多くの出品者は海外発送してくれない。さらに、言論の規制が厳しい国に居住している場合、日本から紙媒体の書籍を国際郵便で郵送して持ち込もうとすると、税関検査で没収されてしまう可能性がある。これらのことは、すべて、Amazonとスキャン代行業者を組み合わせて海外にいながら日本の書籍を電子データで読めば、解決することができる。
スキャンされた結果のPDFファイルは、そのままPCの画面で読む分には問題ないが、これをKindleやiPad、Androidタブレットなどに転送して読む場合は、PDFを最適化してサイズを縮小し、また、コントラスト調整などを行って文字を読みやすいように微調整したほうが良い。そのためのソフトウェアとして、ChainLPという素晴らしいフリーウェアがある。ChainLPは、http://iphone.f-tools.net/E-book-Jisui/Kobo-ChainLP-Kirei.html や http://www.assioma.jp/?p=3623 や http://ringonoki.net/tool/utility-s/chainlp.php で紹介されている。ChainLP を使用すれば、大量のPDFがあるときにこれを一括で iPad やKindleに最適化したPDFに変換することができる。
「自炊したPDFをKoboできれいに表示させるには」 2013年07月31日 『iPhone入門』
http://iphone.f-tools.net/E-book-Jisui/Kobo-ChainLP-Kirei.html
「Kindle Paperwhite と ChainLP で自炊した書籍を読む方法」 2012年11月25日 『ASSIOMA』
http://www.assioma.jp/?p=3623
「ChainLP」 『林檎の木』
http://ringonoki.net/tool/utility-s/chainlp.php
スキャン・調整結果として生成されたPDFファイルをKindlePaperwhiteで読むには、Kindle Paperwhiteに転送しなければならない。このとき、PDFファイルをChainLPを用いて Mobi ファイルに変換してからKindleに転送したほうが良い。Mobiファイルに返信された自前の電子書籍は、Kindle上の公式の有料電子書籍コンテンツと同様に、AmazonKindleの中央サーバーによって「どのページまで読んだか」が管理される。複数のKindle端末を持つユーザーが、ある1冊の書籍のMobiファイルを各Kindleに転送しておけば、そのユーザーは複数のKindleで「最後に読んだページ」情報を同期することができる。これは極めて便利である。
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://getnews.jp/img/archives/2013/09/amazon02.jpg
スキャンを度々行うようになれば、Kindleへのデータ転送が面倒であるように思えてくることがある。特に複数台のKindleを使用している場合はすべてのKindleにデータ転送を行う必要がある。そのような場合は、「Amazonsend to kindle」 http://www.amazon.com/gp/sendtokindle/pc というAmazon公式のフリーウェアを使用すると便利である。このソフトウェアを使用すると、すべてのKindleにMobiファイルをプッシュ配信することができる。KindleがWi-Fiの圏内にある場合は、数分後に自動ダウンロードが開始される。Wi-Fiの圏外にある場合は、次回圏内になったときに自動的にダウンロードが開始される。
「Send to Kindle for PC」 『amazon』
http://www.amazon.com/gp/sendtokindle/pc
最後に、省エネルギーに関する考察をする。Amazonで中古書籍を購入し、それをスキャン代行業者にスキャンしてもらいKindleで読むというのは、とても快適であるが、よく考えると無駄なエネルギーの消費が色々な場所で発生している。まず、中古書籍といっても、元々はどこかの印刷会社で製本されたものであるので、製紙、印刷、製本などにかかるエネルギーがある。次に、Amazonに出品している中古屋さんの倉庫で中古書籍が保管されていた訳なので、それに係る人件費や光熱水費などのエネルギーがある。そして、中古屋さんからスキャン代行業者までの配送に係るエネルギーがある。最後に、スキャン代行業者でスキャナを運用するための人件費やスキャナの損料、光熱水費などのエネルギーがある。そしてスキャンされた結果のPDFデータは画像データであり、文字データではないので、ファイルサイズが大きくなり、余計なディスクスペースを占有することになってしまう。これらの工程それぞれで消費されるエネルギーは、本来、書籍のテキストデータが電子書籍として提供され販売されていれば、一切浪費する必要のないものである。米国では、大部分の洋書が、紙の書籍と同時に電子書籍で販売されている。しかし日本の和書はまだまだ一部分の書籍しか電子書籍化されていない。電子版が存在しない書籍を電子端末で読みたい場合は、前記のような本来不要なエネルギーを消費して電子化する必要がある。出版社が紙の書籍のみを販売し、電子書籍を販売しないことは、省エネルギー化が叫ばれている現代社会において、その時代の流れに逆行することである。あえて電子書籍を販売しようとしない出版社は、エネルギーの無駄な消費が発生することを善であると主張しているようなものである。今後、より多くの出版社で省エネルギー指向が生じ、少なくとも新たに出版されるすべての書籍について、紙の書籍のほか、電子書籍も提供されるようになれば、とても良い社会になるはずである。
執筆: この記事は登大遊さんのブログ『登 大遊@筑波大学大学院コンピュータサイエンス専攻の SoftEther VPN 日記』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年09月04日時点のものです。
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