今回は下痢腹わた子さんのブログ『下痢腹わた子の毒吐きブログ』からご寄稿いただきました。
※すべての画像が表示されない場合は、http://getnews.jp/archives/393581をごらんください。
■付き合ってもいない男から婚姻届を書くよう迫られた話
数年前の話。
飲み会で知り合った仲間的な人たちの中に、金正男に似ている男がいた。
その男(以下、正男と呼ぶ)は、みんなで飲んでいるときにふと目が合ったりすると、すぐに目を反らして頬を赤らめるようなやつだった。
(もしかしてコイツ、私に気があるのか...?)
(いやでも、ただのコミュ障だろうな...)
最初のうちはそんなに気にしていなかったのだが、何回か飲み会を開催しているうちに、正男は目が合っても反らさなくなってきた。
というよりむしろ、私から視線を外すことなくこっちを見てくるようになった。
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://px1img.getnews.jp/img/archives/2013/08/22.jpg
「なんだこいつ...」と思っているうちに、正男からメールが頻繁に来るようになった。
「美味しいレストランを見つけた」
「今日は仕事で成功した」
「いつヒマ?」
何回か誘われたけど、5回ぐらい適当に理由をつけて断っていた。
別に見た目が正男だからどうのこうのってわけではない。
正男は自分の知識を語りだすと、平気で30分は話し続けるような男だった。
それ以外は黙っているような人だが、どうもこの人とは会話のキャッチボールが出来る気がしない。
小難しい話を30分続けられるとか、ドッジボールで袋叩きにされている気分になるんだぜ。
しかし、何度断っても誘ってくるので
「あー、あんまり断るのも悪いか...。」と思い、いわゆる2人で食事に行くデートを決行することにした。
基本的に無口だが、自分のことを話し出すと止まらない。
いわゆるオタクタイプに人間、それが正男。
私も口数が多いほうではないため、正男と下痢腹が2人でいても、会話は成立しなかった。
お互い無言、なんだこれ。
営業のクロージングかよ。
営業マンが最後に黙ってお客から話させるってことやるやつ、それがクロージング。
お互いクロージングかけあってるのかよ。
とりあえず正男おすすめのレストランに入った。
すると正男がメニューを広げ、勝手に料理もお酒も注文してしまった。
私にもメニュー見せろや(怒)。
数分後、小さなグラスに入ったお酒が2杯届いた。
「何これ?」
私は正男に聞いた。
「~△×□!※☆~!☆○□××△~ー!◇○□△!?××○□! ☆!☆!~☆~?☆!×○□ーーーー!※○△×□ーーー!!! ○○!□ー!×××△※ー!」
謎の説明が始まった。
とりあえず乾杯して飲んでみた。
なんだこれ、めっちゃ濃いwww
「結構強いお酒なんだね...。あ、でも美味しい(嘘)」
とりあえず間を持たせるために、正男に説明させて私は相づちを打っていた。
料理が次々に運ばれてきた。
パエリアとか、海老のやつとか、あとは忘れた。
とりあえず間を持たせないといけないので、ブリっ子が何か食べたときに震えるポーズをとりながら、
「ん~♪美味しい~~~!!!」
みたいなことをやった気がする。
すると正男は微笑んだ。そして、私をじっと見て目を離さなくなった。
「え?なに?www」
私は言った。
すると正男は
「下痢腹ちゃん、食べてる姿、可愛いよね。」
とボソボソ言ってきた。
「え...。あー、まあ美味しそうに食べるとはよく言われる(てか今はブリっ子のマネしただけだけど)」
そしてまた沈黙になった。
正男はこっちをずっと見つめてくるので、私はケータイをずっといじり倒した。
1時間ほど経過し、頼んだ料理は全て運ばれてきて、もう食べ終わるであろうという頃である。
事件は起きた。
いきなり正男がモゾモゾと動き始めた。
そしてアタッシュケースから何やら書類のようなものを取り出した。
「なにこれ?」
私は正男に聞いた。
しかし、正男が説明する前に気づいた。
これは、婚姻届だ。
「え...。」
私は困惑した。
なんだか脳みそが宙に浮く感じの衝撃を受けた。
「結婚し」
「帰る」
正男はおそらく「結婚しよう」と言ったのだが、私はかぶせ気味に帰宅宣言。
「いや!ちょっと待って!」
正男は動揺した。
私だって動揺していた。
そして反省した。
あのときに食事に行くことをOKしなければよかった。
メールの段階で、「あなたとお付き合いする気はないですよ」と断りを入れておけばよかった。
しかし、私の人生は18歳までは162cm98kgの巨漢、20歳でやっと53kgの標準体型になれたという経緯である。
当時、23歳だった私はとりあえず普通の人間になってからまだ3年。3歳でしゅ。
「どうしてパパのココにはソーセージがついてるの?」といっているような段階だから仕方ないだろ。
気があるとかないとか、そういうのがわかるはずがない。
いや、感づいていたとしても、「私なんかに惚れる男はいない」という自尊心の低さが影響したのか。
とにかく事件だった。
とりあえず私は、
「いや、正男くん。こういうのは困るってば」
と言ってみた。
「どうして困るの?」
と正男。
「いや、困るでしょ」
答えにならない答えを返す下痢腹。
「だって俺は、下痢腹ちゃんが好きなんだもん!ずっと一緒にいたいし離したくないし!誰かに取られるのなんて絶対いやだ!(ゼェゼェハァハァ)」
正男はいきなり大声を上げた。
そして質問攻撃が始まった。
「好きな人はいるの?」
「結婚願望はないの?」
「俺はどこを変えればいい?」
「一緒に住もうよ」
断りながら、はぐらかしながら、私は泣きそうだった。
そして一旦冷静になることを考えた。
当時私は営業職についていたので、こういう客が相手のときはどう対応するべきかを黙って考えた。
考えているのに、
「ほら!婚姻届、書き間違えるとだめだと思って3枚もらってきたよ!」
とうるさい正男。
とりあえず黙れよ。おまえ、私に強い酒のませて思考力低下させやがって!
何も思いつかないぞ!ったくこのやろう!
モテた試しのない私は、男のフリ方がわからない。
しかし、必死で考えていると奇跡的にいい言葉がみつかった。
そしてこう言った。
「ねえ正男くん。付き合うとか結婚とかっていうのはさ、そうやって相手を説得して決めることじゃないよね?お互いが納得して付き合うんだよね?」
どうだ、決まっただろ?
正男は黙った。
そして、涙目になってトイレにいった。
私は正男がいないスキに帰ってしまおうかと思ったけれど、店員に食い逃げだと思われたらどうしようとか、よくわからないことで不安になって、とりあえず座ったままでいた。
正男は戻ってきた。
そして、
「ごめん、帰ろう」
と、つぶやいた。
その瞬間、私はドラクエのラスボスを倒したかぐらいの達成感を得た。
勝った!勝ったぞ!やったーーーー!!!!!
店を出た後、正男は
「じゃあ俺、ちょっと用事あるから」
と言って、駅とは逆の方向へと歩いて行った。
とりあえず帰って行く姿を見送っていたら、正男は頭をかきながら「あーーー!!!」みたいな声を出していた。
周りの人は正男を「うわ!」という目で見ていた。
執筆: この記事はwatakochanさんのブログ『下痢腹わた子の毒吐きブログ』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年08月07日時点のものです。
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