1878年発行の1円紙幣

イギリスで2016年から発行される予定の10ポンド紙幣の裏面において、現行のチャールズ・ダーウィンに代わり19世紀の女流作家ジェーン・オースティンの肖像が採用されると発表されて『Twitter』が炎上、脅迫や個人攻撃に対応したガイドラインが追加される事態になりました。ところが、すべての紙幣の表面に描かれている国家元首のエリザベス2世女王を別にして、従来のポンド紙幣の裏面に女性の肖像が採用されていなかったわけではありません。

●オースティンが初めてではない英ポンド紙幣の女性肖像
1975年発行の10ポンド紙幣では“看護学の母”として、また近年では統計学者として再評価されているフローレンス・ナイチンゲール(1820-1910)が、また2005年から流通している現行の5ポンド紙幣には不衛生な監獄の環境改善に従事した社会運動家のエリザベス・フライ(1780-1845)が採用されています。

ところが、今年4月にイングランド銀行が現行の5ポンド紙幣に代えて元首相のウィンストン・スペンサー=チャーチル(1874-1965)を採用すると発表。「女性の肖像がなくなる」と言う危機感から同時にデザインが変更される10・20・50ポンド紙幣のどれかに女性を採用して欲しいという運動が呼びかけられていました。その結果、イングランド銀行は10ポンド紙幣にオースティンの肖像を採用すると発表したのですが、この発表直後から運動を呼びかけていた女性活動家に対する脅迫が『Twitter』で相次ぐ事態となってしまったのです。

●日本では132年前に女性肖像の紙幣が発行されていた
現在の日本では2004(平成16)年から発行されている五千円紙幣に明治時代を代表する女流作家の1人である樋口一葉(1872-1896)の肖像が描かれていますが、女性肖像の紙幣はこれが最初ではありません。

今から132年前、1881(明治14)年から1883(明治16)年にかけて発行された1円・5円・10円の3種類の改造紙幣に描かれた神功皇后(じんぐうこうごう)が日本で最初に採用された紙幣の女性肖像です。『古事記』や『日本書紀』で仲哀天皇の皇后として登場する伝説上の人物であるため、存命時の肖像画などは存在せず、新政府にお雇い外国人として登用されていたイタリア人のエドゥアルド・キヨッソーネ(1833-1898)が作成した原版を基に、日本人離れした西洋風の顔立ちの肖像が使われました。

紙幣の発行権が政府から日本銀行に移った後は、長らく女性の肖像は採用されませんでしたが、その理由は「男尊女卑でなく、男性の方が顔のしわやひげを細かく描く分だけ偽造がされにくいから」と説明されていました。2000年(平成12年)に発行された2000円紙幣では裏面の隅に『紫式部日記絵巻』からトリミングした紫式部が描かれていますが、神功皇后や樋口一葉のような紙幣の“顔”とは言えない扱いにとどまっています。

●その他の国の女性肖像紙幣
日本以外で早い時期に女性肖像の紙幣を発行していた国としては1910年に発行した100ルーブル紙幣でエカテリーナ2世(1729-1796)の肖像を使用していた帝政時代のロシアがありますが、現在のロシアでは女性肖像の紙幣は発行されていません。

2013年現在も発行中のものでは、以下のような女性肖像紙幣があります。

韓国:5万ウォン紙幣‥申師任堂(16世紀の画家)

フィリピン:500ペソ紙幣‥コラソン・アキノ(元大統領)

グルジア:50ラリ紙幣‥タマル女王(12-13世紀の君主)

スウェーデン:20クローナ紙幣‥セルマ・ラーゲルレーヴ(『ニルスのふしぎな旅』作者)

チュニジア:10ディナール紙幣‥ディードー(カルタゴを建国した女王)

メキシコ:500ペソ紙幣(裏面)‥フリーダ・カーロ(画家)

ジャマイカ:500ドル紙幣‥グラニー・ナニー(18世紀の奴隷解放運動家)

ペルー:200ヌエボ・ソル紙幣‥リマのローサ(17世紀の聖女)

アルゼンチン:100ペソ紙幣‥エバ・ペロン(フアン・ペロン元大統領の夫人)

ニュージーランド:10ドル紙幣‥ケイト・シェパード(世界初の女性参政権獲得を実現した活動家)

参考:Banknotes.com

http://www.banknotes.com/

画像:1881年発行の1円改造紙幣

(画像ソース‥ Wikimedia Commons http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Jingusatsu_1881.jpg CC-BY-SA 3.0)

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