今回はふみ~さんのブログ『名前はまだない。』からご寄稿いただきました。
※すべての画像が表示されない場合は、http://getnews.jp/archives/391477をごらんください。
■どうかボクたちの娘を「モノ」扱いしないでください
この記事の内容が役に立たなければ本当にいいのですが、こういうことが起こる可能性は0ではなく、また、実際、生まれてきた赤ちゃんが酷い扱いを受けて辛い思いをなさっているお母さん・お父さんもいらっしゃるようです。
ボク達のような悲しい思いをするお母さん・お父さんがこれ以上増えないようにするため、今回起こった事の一部を「会社名入りで」広く公開することにしました。
●経緯
ボク達の赤ちゃんは、おなかの中にいる時点で既に心臓の動きが止まっていることが分かっていました。いわゆる死産というものです。
ほぼ自然分娩に近い形での処置後、赤ちゃんと対面しました。予想通り女の子。娘でした。帝王切開や大量出血などのリスクがあると事前に説明されていましたが、そのようなこともなく、処置の時間も短く済みました。娘も力を貸してくれたに違いありません。
大変悲しい事でしたが、娘をいつまでもそのままにしておくわけにもいかず、いくつかの手続きを経て埋葬を行う必要がありました。また、葬儀社の通した埋葬をすることとし、葬儀社の手配をすることにしました。
病院から紹介されたところのパンフレットはこのようなもので、きちんと供養してくれそうなところのように見えました。この時点ではこのパンフレットしか情報がないので、普通に葬儀社だと思って電話するわけです。
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
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まず病院から紹介された「日本胞衣衛生(東法協会)」というところに電話しました。以下、やり取りを覚えてる限り再現します。
「はい」
「(……社名名乗りもしないのかよ)そちら日本胞衣衛生でよろしいでしょうか?」
「はい」
「実は、死産で赤ちゃんが亡くなってしまったので葬儀の手配をお願いしたいのですが」
「はい」
「……(お悔みの言葉すらないのかよ)」
「どちらの病院から?」
「*****です」
「今日はもう取りにいけないんですけど、いつ取りにいきますか?」
ねぇ「取り」にって何? うちの子は「モノ」なのか? その上お悔みの言葉ひとつないってどういうことなの? そして全体的に木で鼻をくくったようなぞんざいな対応。一体どういうことなんだろう。とても出産直後の妻に任せられる電話ではありませんでした。
なお、この後ここはキャンセルして、別の葬儀社にお願いしたのですがその際はきちんとお悔みの言葉もありましたし、決して「取りにいく」というような言葉を使わず、娘に敬意を払った対応をして頂きました。
日本胞衣衛生の電話担当者とのやりとりは続きます。
「……(ちょっと言葉にならない)明日の11時には退院するので、それまでには」
「はい明日の11時ですね」
「それで、赤ちゃんの火葬には立ち会いたいのですが」
「(怪訝な感じで)あのー、火葬の立会いは別料金かかるの聞いてます?」
「病院から貰った資料に『火葬の立会いをご希望される場合は、別途ご料金がかかります』とは書いてありますね。いくらかかるのか書いてないですが」
「10万円別にかかるんですよ」
(はぁ!? 葬儀代行33000円って書いておいてなんで立会いするだけで10万かかるんだよ。ふざけんなよ!)
「葬儀代行33000円って書いてありますよね? 立会いに10万かかるというなら何にかかるのか教えてください」
「仕出しの料理とか……」
「いやそんなのいらない」
「葬儀というのはそういうものなんです!(怒ったような口調で)」
この後で何社かの見積りを取り寄せるわけですが、他のどの葬儀社の見積りも「仕出しの料理」に該当する項目の見積り費用は0でした。かかるのはお棺・お花・ドライアイス・人件費などですね。日本胞衣衛生の葬儀はホントどういうものなんだよと。
こうなると、
「ちゃんとやってくれるところですよ」と助産師さんは言っていたけれども、本当にちゃんとやるのかすら疑わしいです。どのあたりが「ちゃんと」なのか?
こういうやり取りがあったので日本胞衣衛生への依頼はキャンセルして別の葬儀社を手配する事にしました。最近は便利で、「何社かの葬儀社を無料で紹介する」第三者機関がありまして。そこに電話して娘の葬儀が必要な事を伝えたうえで、
「娘は胎児のまま死んでしまったのですが、どうかボクたちの娘を『モノ』扱いしない、人として尊厳あるおくりかたをしてくれるところをお願いします」
と、お願いしました。ボク達にとっては当たり前のことなのですが、こんな当たり前のこともお願いしなくてはいけないのか……と言っていてなんともやるせない気持ちになりました。
前述したとおりではありますが、紹介された葬儀社からの電話はどの社からの電話も相応の応対をして頂き、その中からボク達にとって一番よい葬儀を執り行ってくれそうなところを一社選ばせて頂きました。
次の日、なんと日本胞衣衛生の担当者が娘の遺体を引き取りに来ていました。断りの旨電話を入れたのにこの体たらくです。助産師さんから電話があったので、断りの旨電話を入れたことを伝えて改めて断るように伝えました。
一悶着あったものの、ボクたちの娘はボクたちで一旦自宅まで連れて帰って一緒に過ごしてから火葬することにしました。法律で決まっているのですが、出産24時間以上経過しないと火葬にできないという理由と、胎児なので朝一番の釜でないと火力が強すぎて骨すら残らない……という理由から一日猶予ができたわけです。
一晩だけではありましたが、娘と一緒に過ごした時間はかけがえのないものでした。生まれた直後に見た時は分からなかったのですが、暫くしてからよく見るとちょっと髪の毛が生えてきているのが分かるんですよ。それがくせっ毛でボクに似てるんですよね。そして鼻とか口のあたりはなんとなく妻に似て可愛いんです。それを見て嬉しかったり。でも何故か泣きそうになりました。……嘘です泣きました。
また、娘に手紙を書いたり、絵を描いてあげたりする時間も取れました。こういったことができたのは、今回お願いした葬儀社の担当者様のアドバイスのおかげです。こういったアドバイスもなければ悲しみにくれてボーっとしたまま無為に時間を過ごしてしまい、出棺まで何もできなかったかもしれません。娘にしてあげられることがこの時点でもまだあって、いくつか娘のためにしてあげられることをしてあげられたのはとてもよいことでした。
もしあのまま日本胞衣衛生に依頼していたら……と思うとゾッとします。こういう時間も全く取れず、してあげられたこともしてあげられなかったわけです。断って本当によかったと思っています。
また、病院から紹介された葬儀社を断った形になりましたが、特に不利益は被りませんでした。むしろこちらの想定以上によくして頂けたと感じています。
ただ、そんなによい対応をして頂いた病院にしてはなぜこんなところを紹介したのか、というところは納得がいかなかったので、紹介頂いた助産師さんに直接疑問をぶつけてみました。経緯を伝えて話を聞いてみた結果、
・ うちでは向こうの業務内容は関与していない
・ お金を貰って紹介しているわけでもない
・ 付き合いが長いのでこういう事があった際にお勧めしていた
・ 今回の件はあってはならないことだし、関係者及び上長にはこういう事があったという事は伝えておく
・ 文書で窓口に今回あった事を報告することもできるので、そうしてみては
ということのようです。次の通院の際、今回の経緯を文書にまとめて、傷口をえぐり塩を塗りこむような対応をしてくれた日本胞衣衛生の紹介をやめてもらうようにお願いするつもりです。
ちなみに日本胞衣衛生の出してきた葬儀代行33000円というのは異様に安くて、そのあたりも今回依頼した葬儀社の担当者様と会話する機会があったのですが、
「後から請求される費用があるのではないか」 「産業廃棄物と同じ扱いで処理するためあの値段で、普通は立ち合わせないので、立ち会うとなったら費用が上がるのではないか」
というような事をおっしゃっていました。「産業廃棄物と同じ扱い」というあたりは「胎児の処理」でググると詳しく分かりますのでそちらを。
●(2013/07/23追記)
日本胞衣衛生が葬儀会社かそうでないかというような点を論点にされる方がいらっしゃるようですが、ボクとしてはそれは本当にどうでもよいことです。何を生業にしている会社だったとしても、胎児の最後に立ち会う会社であれば胎児の遺体に対する扱いはもっとなにか別の形があるのではないでしょうか?
また、「社名を名乗らない」「かかる費用の説明が適切ではない」「引継ぎが不十分」という点については法人の対応としてそれが適切なのでしょうか?
●まとめ
■ 病院から紹介された葬儀社は断っても失礼にはあたらないし、断っても問題にならない
・ 断ったせいで病院から不利益な扱いをされる事は通常ありえません。私たちも断りましたが最後まで親身に対応頂きました。万一そのようなことがありましたら大問題ですので、医療安全支援センター*1に相談するなどの方法をお勧めします
*1:「医療安全支援センターとは」 『医療安全支援センター総合支援事業』
http://www.anzen-shien.jp/aboutus/index.html
・ 即答せず、保留してその紹介された葬儀社で本当によいか、よく考えましょう
■ 葬儀社は複数社に問い合わせて自分たちにあった葬儀社を選ぶ
・ 電話応対である程度葬儀社の比較はできます
・ 葬儀社に問い合わせた後断ることも失礼にはあたりません。また、複数社に問い合わせる行為に罪悪感を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、故人を適切におくってあげるために必要な行為ではないでしょうか
■ 自分たちで赤ちゃんを一緒に家まで連れて帰り、一緒の時間を共有した後、火葬場まで一緒に連れていって火葬することも可能。この場合死胎火葬許可証と念のため死産届のコピーを携帯するようにしてください
■ この知識、役に立つ日が来ないほうが絶対いい
●これをお読みになった葬儀・医療関係者の皆様へ
■ 流産・死産などで亡くなってしまった赤ちゃんはご両親にとってはかけがえのない存在です。どうかモノのような扱いをせず、最後まで人としての尊厳ある対応をして頂きますようお願いします
■ 特に医療関係の皆様へのお願いとなります。葬儀社を紹介するのであれば、ある程度葬儀社のやっている事を把握した上で紹介してください。杜撰なところを紹介されるぐらいなら何処も紹介しないほうがマシです。病院からの紹介って断りにくいんですよ。普段は断れる人でもこういう時は断れない可能性もありますし
■ 特に葬儀関係の皆様へのお願いとなります。赤ちゃんの葬儀は大人の葬儀と勝手が違うところもございますので、悲しい思いをしているご両親に適切なアドバイスをしてくださいますようお願いします
●※こちらの記事に温かいコメントを寄せてくださった皆様へ
励ましのお言葉本当に有難うございます。皆様の励ましのメッセージはすべて目を通しておりますが、なにぶん大量に届いておりますので、すぐにお返事を記載することができません。落ち着きましたらゆっくりコメント返しをさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
特に、ご自身も同じような辛い思いをされたのに私達の事を気遣ってくださった皆様におかれましては、最愛のお子様を失われた悲しみに耐え、その上でコメントを頂いておりますわけで、そのご労苦を拝察いたしますと、本当に頭が下がる思いです。こちらからもお子さんが天国で安らかに過ごせるようぜひお祈りさせてください。どうぞよろしくお願いいたします。
執筆: この記事はふみ~さんのブログ『名前はまだない。』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年08月02日時点のものです。
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