今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
■江戸時代とEU
「2012年 池上彰×岩井克人 新春対談 お金の正体(その1)」 2012年1月4日 『日経ビジネスオンライン』
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20111227/225721/
非常に良い記事。日本の江戸時代と現在のEUを比較している。江戸時代は藩札があり、経済はそれぞれの藩で独立していた。松江藩(島根県)は藩の経済状況が悪化すると藩札をたくさん発行した。
それは松江藩に流通するお金(藩札)を増やし、お金の価値を下げる。それは江戸や大阪に対して藩の産品を輸出しやすくする。その一方で江戸や大阪からの輸入は減るから、藩内の雇用を確保することになる。
今風にいえば、インフレ&円安政策。輸出を伸ばし輸入を制限することで国内の雇用を守る。
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江戸時代はそれぞれの藩が経済政策を行い、藩の経済を守っていた。明治維新で通貨が円に統一され、日本国内は単一の通貨、単一の経済政策の下で動くようになった。同時に江戸時代は制限されていた労働人口や物品の移動が自由となった。それは日本という国を強くした一方で、東京や大阪など中央の都市を栄えさせ、地方を過疎に追い込んだ。
単一の通貨圏では、物品や人口が自由に移動し、中央に物や人が集中し、中央が栄え地方は寂れる。これは必然的なことだ。
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EUのギリシャ危機は、通貨を統一した一方で、人口の移動はそれほど自由ではなかった。人々は生まれ育った母国(ギリシャ)に愛着を持ち、労働人口が中央(ドイツやフランス)への移動がさほど行われなかった。
そのためギリシャは経済力以上の人口を抱えることになり、破綻した。人口が自由に移動すれば、ギリシャは過疎になり寂れただろうが、人口が減ることで破綻はしなかったであろう。
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TPPもそうだけど、経済の自由化推進論者は、無意識に、あるいは意図的に2つのことを混同していると思うのだよね。明治維新による国内の人口移動や流通の自由化により日本国はたしかに強くなった。しかし地方は寂れた。
つまり経済的繁栄には2つあるのだ。全体の繁栄と局所的な繁栄。自由化すれば経済は現在よりももっと繁栄するはず、と主張している人々は、世界全体の繁栄のことをいっている。自由化すると国内の経済は衰退すると主張する人々は、日本国という地方の盛衰について述べている。つまり両者に別に矛盾はないのだ。
日本国が衰退しても世界全体が栄えるならいいだろうという考えと、世界全体なんて知ったことか、日本国の繁栄こそが重要という考え。
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もちろん世界全体が繁栄し、なおかつその中で日本国が世界の中心になり繁栄するという可能性もゼロではないが、現状を見るかぎり望み薄だろう。ドイツとフランスはEUの中でも中心になれると計算したから、ユーロ統一を推し進めた。アメリアもTPPの中で中心になれると計算したからTPPを推進しようとしている。
日本がTPPの中で中心になれるか…たとえば日本国内でいえば東京(=アメリカ)は無理としても、ナンバー2の大阪ぐらいの地位を占められるか? TPPを推進しようとしている人々は可能だと考えているのだろうが、俺は悲観的だ。
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とはいえ経済のブロック化の流れは避けられそうにない。世界経済がグローバル化する中で、もう一回ぐらい世界大戦が起きそうな気がする。いますぐではないにせよ、この先50年ぐらいの間に。ヨーロッパや北米はもう波風が立たないだろう。アフリカや南米はまだ大規模な戦争を起こす力がない。次に世界大戦が起きるとすれば、アジアだろう。
アメリカと中国が東南アジアの国々(ベトナムとかフィリピンとか)をどちらの陣営に引き入れるかの争い。日本も否応なしに巻き込まれざるをえない。その戦争を経て、アジアのグローバル経済化が完成するのだろう。明治維新にも戦争が必要だった。世界経済の大規模な構造的変化にはやはり戦争が不可避なのだ…。
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日本が戦争に巻き込まれずに済む道は…あまり日本に選択肢はないのだが、強いて言えば中国を内部崩壊させることだろうな。中国の各自治区に独立戦争をしかけさせる。これなら中国は国内のことに手一杯で、国外が戦場になる可能性は多少減る。まあ中国で内戦が起きれば、どのみち周辺国も無傷ではいられない(日本も)。違いは中国の国境の外側か内側か、どちらが主戦場になるかだ。
執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
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