今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
■賃金はなぜ上がる?
賃金が上がるか下がるかという話を最近ネットでよく目にするのだが、なんか経営者のモラルみたいな話が多くて気持ちが悪い。経済の話にそういうものを持ち込むと、何の話かわからなくなる。
賃金が上がるのはどういう時か?といえば、ずばり人手不足の時だろう。もっと労働者がほしいのに来てくれない。ならば賃金を上げようということになる。
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端的に言えば求人倍率が1.0よりちょっとでも大きければ、賃金は上昇傾向になり上がり続ける。企業にとってチキンレース。労働者の取り合いだから、他社よりも少しでも賃金を上げようとする。
逆に求人倍率が1.0よりほんの僅かでも小さければ、買い手市場だから、労働者を確保するのに賃金を上げる必要はなく、徐々に賃金は下がっていくだろう。それだけのこと。
職を求めている労働者が1000人いて、企業が必要とする労働者が1001人なら、賃金は上昇するし、999人なら賃金は下落する。1001人と999人の違いはわずか2人だが、それが明暗を分けるわけだ。
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よく景気が良くなると賃金が増えるという。それ自体は間違いではないが、それは景気がよくなると、企業の仕事が増え、人手不足になるから、労働者を確保しようと賃金を上げるわけだ。
したがって理屈としては求人倍率が1.0を超えないと自然には賃金は上がらない。実際には他の理由でも賃金は上がるが。例えば生活必需品の価格が高騰すれば、労働者は生活できなくなるわけで、ストライキとかをやって賃金を上げさせるだろう。
また同じジャンルの企業で、どれかの企業が優秀な人材を確保しようと賃金を上げれば、残りの企業も追従せざるを得なくなる。そうでないと優秀な人材がライバルに流れてしまうのだから。
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もうずっと20年近くデフレ&不況で、労働者が余り気味なので、どういう時に賃金が上がるか、みんな忘れてるんじゃないですかね?基本的に、人手不足で労働者の取り合いになるぐらい景気が回復しないと、賃金は自然には上がらない。
ようは経済活動が活発にならないと賃金は上がらない。そうでない限り下がり続ける。よく「もうこれからは競争の時代じゃない」とかいうけれど、「競争=活発な経済活動」という意味なら、それを否定すると、労働者はどんどん余り、賃金も際限なく下がっていくと思うのだけどね。
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本質的に経済活動というのは、「無駄」なことだ。1000円の娯楽のために、1000円分余計に働くわけで。娯楽がなくてもいいから、その分働かないというと、社会を維持するための労働者の数はどんどん減っていき、人手があまるから、賃金もどんどん下がっていく。
仕事を生み出すというのは、どれだけ「無駄」に時間とエネルギーを費やすかだ。経済を活性化させるというのは、無駄使いのために仕事をするということ。それによって仕事が増え、人手不足になり、賃金が上がる。
たとえば「穴をほって埋める」仕事を公共事業としてやるとする。それ自体はなんの価値も生み出さないが、その作業に労働力が割かれるから、労働者不足を引き起こす。結果的に賃金が上がるわけだ。問題は労働者不足を引き起こすほど、大量に穴を掘らせなかったこと。求人倍率が変わるぐらい大量の公共事業をやらないから、中途半端になり結果的になんの効果もないだけ。
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よく一握りの成功者が大金を稼いで、それを弱者に分配すればいいという人がいるけれど、分配の仕方が問題で、仕事が増えるような形(労働者が不足する形)で分配しなければ意味がない。
例えば生活保護のような形で分配した場合、彼らは依然として職を求めているわけで、求人倍率を低下させる原因となっている。つまりそれは生活保護として一方的に金を得るだけでなく、職に付いている人間の賃金を下げる間接的な原因になっている。
金持ちが弱者に自分の資産を分配したいなら、直接金を与えるのではなく、事業を起こし仕事を増やすことで、間接的に賃金として与えなければならない。これならその分必要な労働者が増えるから、労働者が不足し、他の企業の賃金も結果として上昇する。
よく赤字企業に資金を投入して存続させるぐらいなら、そんな企業は倒産させて、生活保護やベーシックインカムで直接失業者に金を渡したほうが合理的だという主張がなされるが、それはまったくのナンセンス。そんなことをしたら求人倍率が下がるだけだ。赤字企業を存続させるべき。賃金を上げるには、仕事を増やし、人手不足の状況を作りださなければならない。
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●追記2013-07-10
後半が理解できない。ベーシックインカムなりで生活できて求職しない人が増えたら求人倍率は上がるんじゃないの?http://twitter.com/fuktommy/status/354613601228697600
確かに俺の上記の話は、求職するモチベーションが失われるほどベーシックインカムの支給額を増やせない、という前提ではある。
そうでない場合、企業はベーシックインカムという「会社」と労働者を取り合うことになるから、確かに賃金を上げることになる。ただそうすると今度は「最低限生活できる」水準が上昇してしまい、ベーシックインカムの支給額も上げざるをえなくなる。イタチごっこのインフレになる。
デフレ対策としてはいいけど問題は、そのような一生それだけで生きていくようなベーシックインカムは、一度始めたらやめられないこと。そういう政策を20年ぐらい続けて、生まれてから一度も働いたことのないまま中高年になった人間は、ある時「来年からベーシックインカム廃止です」とかなったら困っちゃう。なのでそういうベーシックインカムは半永久的なインフレをもたらし、コントロールできなくなる。ギリシャですな。
ということでベーシックインカムの支給額は高くできないという前提で述べたのだけど、確かにこのエントリの本題である純粋な労働力の需給と賃金の話だけからは、それを導き出すことはできないね…。
執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年07月10日時点のものです。
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