今回は城繁幸さんのブログ『Joe’s Labo』からご寄稿いただきました。
■採用活動とは、一言でいえば「ブラック労働者をふるい落とす作業」です
たぶん多くの人は、ブラック企業という言葉を「割に合わない会社」と考えていると思います。というのも、外食なんかよりよっぽどきつい投資銀行とかテレビ局をブラックだと言っている人は聞いたことがないからです。要は仕事分の対価をきっちり払わない会社がブラックだと漠然と考えているのでしょう。
実は、学生や求職者が「ブラック企業だけはなんとしても避けたい」と思うのと同様、企業側も「割に合わない人材は絶対に採りたくない」と考えています。
そういう意味ではお互いさまですね。
そういう人材を、ここではブラック労働者と呼ぶことにします。
突き詰めれば採用活動というのは「ブラック労働者を洗い出し、ふるい落とすためのプロセス」なわけです。
では、企業からみて、どんな人材がブラック労働者なのか。
そして、現状のシステム内で、求職者に送る最善のアドバイスはなにか。
キャリアを考える上でとても重要な視点なので、簡単にまとめてみたいと思います。
●人事から見た“ブラック労働者”
簡単に言うと「給料分に見合わない労働者」ということになります。たとえば額面で年に500万円とすると、年金保険料等の企業負担分も含めて、だいたい800万円くらいのコストが発生するので「とりあえずはそれだけの価値がある人材かどうか」をじっくり見極めることになります。日本企業はポテンシャルを重視するので、学歴の無い人や筆記試験の結果が悪い人はブラック労働者としてはじかれます。
たまに「厚生年金は会社が半分持ってくれるからサラリーマンはトクだ」という厚労省の大本営発表を信じちゃってる子もいますが、現場からするとありえない話ですね。
トータルの人件費800万円で考えた上で、それだけの価値があるかどうかを見ています。
つまり、企業負担も実質的には本人負担と同じであり、本人の給与から天引きされているか、最初から会社が納めているかの違いでしかありません。
では、いい学歴でTOEICや筆記の結果も上々ならそれでOKかというと、それだけではありません。日本は終身雇用が義務付けられているので、今度は「65歳まで働ける人材かどうか」を見極めることになります。この場合、育児休暇を取得する可能性が高いので、女性という時点でブラック労働者確定です。休暇中も会社の金銭的負担はゼロではないですし、その間も休まず働いてくれるであろう男性の方が企業から見ればホワイトに映るので、仕方ないですね。ちなみに、総合職中に占める女性割合は5.6%。
いかに企業が女性をブラック視しているかよくわかりますね。
同様に、体が弱かったり持病のある人も企業から見れば立派なブラックです。
何十年も雇わないといけないのに、しかもさらに雇用期間が延長される可能性もあるのに体の弱い人を雇うリスクはおかせません。新卒ではなかなかわかりませんが、転職者で休職満了解雇されてたりすると敬遠する企業が大半でしょう。
転職回数がやたら多かったり、3年以上浪人や留年によってダブっている人も敬遠されます。こういう人は組織になじまず定着しないだろうと見なされるからです。
もちろん、40歳以上の中高年求職者も、よほど素晴らしい職歴や専門性が無い以上はブラック労働者確定です。職能給では年齢がいった人はそれだけで割高になってしまうから、仕方ないですね。
まとめるなら、能力や学歴の無い人、女性、体の弱い人、組織に馴染みそうにないタイプの人、そして中高年、こういった人々が企業から見たブラック労働者であり、選考プロセスではじかれることになります。
と、ここまで読んで、勘の良い人は既に気付いたことでしょう。日本は一見すると、格差が少なく、割と最近まで“一億総中流”なんてもてはやされてきた国ですが、一方で男女間の格差は大きく、自殺率も高いといった、それらと真逆な特徴も指摘されている国でもあります。
“終身雇用”という形で社会保障を民間企業に丸投げし、営利組織である企業が自らにとって都合の良い人材のみをつまみ食いした結果だと考えれば、辻褄があうでしょう。
企業は営利組織なので、一円でも多く利益を追求することは当然です。
自らにマッチすると考える人材しか採用しないのも当たり前の話です。
問題は、“終身雇用”の名のもとに、もっとも公的であるべき社会保障機能を誰も引き受けずにほったらかしにしている点にあるわけです。
国民がこの構造に気がつくまで、この国から“ブラック”がなくなることはないでしょう。
以降、
本来、自由な売り買いができるならブラック要素は存在しない
現状、筆者が個人へ送る最善のアドバイスとは
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執筆: この記事は城繁幸さんのブログ『Joe’s Labo』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年07月01日時点のものです。
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