それとともに、ツイッターやネットでは従軍慰安婦についてのデマも横行しているらしく、28日は荒巻丈@joearamakiと名乗る人物をはじめ、さまざまなネット右翼に絡まれた。
「年齢が合わないという小学生でもわかるウソという根本的をミス犯すのが朝鮮人クオリティーホント汚らわしい」「デマというならお前が証拠を持って立証してみろや記者なんだろ?同胞のためだろ?」
「ところで慰安婦年齢違いをデマと言い切った自称ジャーナリストは早くデマだと立証できんのか?さすがチョウセンクオリティ」
そして荒巻丈氏はガジェット通信の「慰安婦とされる女性、既報の証言と自身の年齢のつじつまが合わず」http://getnews.jp/archives/348426
と題した記事を持ち出し
「だからこれをどうにかしてみろ」
と迫って来た。
なにかと忙しかったが、従軍慰安婦問題についてずっと考え、微力ながら支援をしているものとして見過ごすわけにはいかないと思った。自分のことのように、悔しかったということもある。そして解説し、立証した。
すると荒巻丈氏は一連の発言をスルー。いわゆる「逃亡」をしたが、ネット右翼はだいたいそんなものだ。誠実に答えても、都合が悪い話は聞こうともしない。今頃もまた、自分の都合のいい「真実」をネット上かどこかでさがしているのだろうか。
ただ、他の方からも同様の質問があったので、この機会にまとめようと思った。誤解があればそれを解きたいし、高齢にもかかわらず日本にわざわざやって来たハルモニ達に、なにかできればと思ったからだ。
元従軍慰安婦の証言した年齢にずれがある原因、ひとつは韓国が数え年を使っているからではないか。生まれた時点で1歳、元旦が来たら2歳になる。例えば12月31日に出生した場合、出生時に1歳で翌日(1月1日)に2歳だ。韓国の記事を翻訳する際、この点をいつも注意している。
ふたつ目は、終戦後は女性たちを慰安婦ではなく、看護婦などとして働かせていたのではないか。「戦争が終わった時点で朝鮮人女性を看護婦として雇ったことは日本軍の慰安婦制度を隠蔽、または最後まで朝鮮の女性労動力を収奪しようと日帝の意図と解釈することができる」との記事もある。(朝鮮日報 2005/01/11 )http://f17.aaacafe.ne.jp/~kasiwa/korea/readnp/k285.html
などと思いつくままにまとめた。そして、ガジェット通信の担当者に掲載したいと相談したところ「真実はひとつなので、沖縄タイムスに電話などして、担当記者と話す方がいいのでは?」と返事が。
そして、「この段階では何が本当か調べて、わかった事実を出すというのがベストじゃない?」という言葉に大きくうなずいて、翌朝の29日、沖縄タイムスに電話で取材してみた。
沖縄タイムスによると、同様の問い合わせはすでに何件か来ているという。22日付の紙面の「社会・くらし」で、18日に沖縄県で行われた集会での金福童さんの一問一答を掲載した。そこにその答えはあるのだが、残念ながらその記事は電子化されていない。
そのために今回の疑問が生まれたのかもしれないが、被害者の証言の矛盾「だけ」を探し出し、貶める道具にしようとする人々の存在の気味悪さ、うっすらとした悪意も感じた。
結論から言えば、やはり金さんは、解放後しばらく日本の陸軍病院に従事させられた。14歳で騙されて連行され、
「シンガポール、マレー半島、インドネシアなど様々な前線地を転々としました。終戦を迎える時には慰安婦の存在を隠すため第10陸軍病院の看護婦に仕立て上げられました。怪我をした軍人を手術するため、私たちは血液まで供出させられました。その後アメリカの捕虜収容所に入れられ大変苦労しました」(沖縄タイムス 5月22日付19面より引用)
と云う。
沖縄タイムスの担当者の方は、「8月15日が過ぎて直ちに帰ってこられるわけじゃなかった。戦時中に外地にいた場合、終戦後も1-2年は現地に留まることはよくある話だったんですけどね」とおっしゃっていた。私を含め、多くの人たちはそんな単純な話さえ見過ごしている。戦争を知らないことは恥ずかしい。
5月24日、25日、26日の3日間、私は来阪した元従軍慰安婦のハルモニに関する集会や行事、それに関する排外デモのカウンター活動などを取材した。在日特権があるとして差別に加担する人々と、従軍慰安婦を罵る人は見事に重なる。
私たちは、元従軍慰安婦の女性たちが残りの人生を有意義に過ごすために、いま出来ることをしなければと思う。それは、被害者の声をしっかり受け止めることではないだろうか。
従軍慰安婦についてのデマに踊らされることは、彼女たちの人生をまた踏みにじることだ。
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(李信恵)
画像:2013年5月26日に行われた「日韓国交断絶国民大行進 in 大阪」のデモ隊
※この記事はガジェ通ウェブライターの「李信恵」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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