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JASRACの謝罪文について

2012/12/17 21:01 投稿

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JASRAC の謝罪文について

今回はmedtoolzさんのブログ『レジデント初期研修用資料』からご寄稿いただきました。

■JASRACの謝罪文について
日本音楽著作権協会(JASRAC)が最近出した謝罪の告知*1 は、組織へのダメージを最少にするという意味において、上手な謝罪のお手本に思えた。

「雅楽演奏者へのお問い合わせについて」 2012年12月14日 『JASRAC』

http://www.jasrac.or.jp/news/12/1214.html

●状況説明と謝罪はセットで行う
この謝罪文ではまず、「行われたことは通常業務の一環であった」という表明を行い、今後も同じようなことが発生する可能性に対して言及を行った。雅楽演奏家の方が体感された不快について、「そのことにつきましてお詫び申し上げました」と、お詫びの範囲を限定した上で謝意を表明した。

謝罪と状況説明の順番は、病院だとおそらく逆になるのではないかと思うけれど、両者は必ずセットで行わないといけない。

謝意の表明を省略して、「通常業務の一環でした。よろしくご理解ください」で説明を終えてしまえば、今の時代だったら必ず、ホームページが爆発炎上する。かと言って、状況説明を手折ってしまい、とりあえず「全部まとめてごめんなさい」をやってしまうと、今度はたぶん、「誠意が感じられない」と様々な方面から叩かれる。

●防止できないものを「防止します」と言わない
謝罪告知の決まり文句である「再発防止に努めて参ります」という文言は、それが達成できないのならば、むしろ書くべきではないのだと思う。

再発防止の努力をどれだけ払ったところで、同じような失敗事例は高い確率で再発する。再発したら、「再発防止に努めて参ります」と表明したリーダーには、もう逃げ場がなくなってしまう。

JASRAC の謝罪文は、確認作業は通常業務の一環であること、演奏する側の方が不快に感じるミス事例はどうしても生じ、防ぎようがないことを表明して、その上で演奏家の不愉快な体験に対して謝罪を表明した。

SMAPの草なぎ剛が飲酒をめぐるトラブルからの復帰会見で、「禁酒を表明しなかった」ことを、何かの危機管理の本でいい事例として紹介していた。「もう二度と酒には手を出しません」という宣言のほうが潔く聞こえるけれど、これをやってしまうともう、その人には後がなくなってしまう。

●謝罪の範囲を限定する
謝罪のタイミングは早ければ早いほど、謝罪の範囲は小さければ小さいほど、組織防衛の観点からは好ましい。

謝罪には模範解答があって、「相手が不快を表明した直後」のタイミングで、「相手が不快を感覚した」ことに対して謝意を表明すれば、その事自体を不快に思う人はまずいない。

謝意の表明と、責任の引き受けとは区別して語らないといけない。何かのトラブルに対して不快を感覚した側は、当然のように両者を同じものだと考えるから、不快を引き受ける側はなおのこと、なるべく早い段階で謝意の表明を行い、問題を調査することを宣言して、両者を一刻も早く切り離さないといけない。

JASRAC の謝罪文は、「演奏家の不快」に対してのみ謝意を表明して、それ以外の問題については言及していない。それでもこの文章は「謝罪文だ」と読めるし、謝罪文に炎上阻止の効果を期待する上では、これで十分なのだろうと思う。

●謝罪は個人的に行う
どのような事例であっても、謝罪というのはできるだけ相手に近い場所で行わないといけないのだという。

直接あって謝罪するのが最高で、電話や手紙ではもう遠い。会社のホームページに、個人に当てた謝罪の告知を置いて「お詫び申し上げます」と書くのは最も遠くて、それはそもそも謝罪ではないし、問題の当事者ではない人たちに、叩くための燃料を注いでしまうことになる。

実際どんなやり取りが行われたのかは分からないけれど、この謝罪告知では、JASRACは演奏家本人に謝意を表明して、「直接ご本人にお詫び申し上げました」とだけ報告した。少なくとも「組織を守る」という立場からは、これは上手なやりかたに思えた。

謝罪の文章を、ネット上に全て公開してしまうと、JASRAC という組織はただでさえ悪役認定を受けているのだから、謝罪文は単語単位で解析され、「この部分がふざけている」とか、「謝罪文にこの表現はありえない」とか、どんな文章を書いたところで燃料として消費されてしまう。

裏側で実際に行われた謝罪が、謝罪には遠い、誠意の全く感じられないものであったとしても、告知文に「お詫び申し上げました」と書いてしまえば、実際のやり取りを公開するカードは、相手の側に移ることになる。

何かを公開する側は、同時に叩かれるリスクを背負うことになる。公開されたそのやりとりが、実際に誠意の感じられない酷い内容であったとしても、炎上すれば「どっちもどっち」を言い出す人が必ず出てくる。公開の主体が相手に移った時点で、結果として炎上が「引き分け」認定される確率は高くなる。

●慇懃無礼には正解がある
最初からちゃんとやっていればそもそもこんなトラブルにはならないのかもしれないし、こうした技術はもちろん、単に上っ面を取り繕うだけのものではあるのだけれど、謝罪には「これ」という正解のやりかたがあって、JASRAC の謝罪告知は、模範解答に近いものであるように思う。

執筆: この記事はmedtoolzさんのブログ『レジデント初期研修用資料』からご寄稿いただきました。

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