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宮藤官九郎監督が『少年メリケンサック』以来4年ぶりに手がける映画『中学生円山』。オリジナル脚本で挑む新作は、エッチな妄想で頭がいっぱいで、毎日「自主トレ」に励む中学生男子が、同じ団地に越してきたシングルファーザーと出会い、成長する物語です。

ささいなことで傷つき、自分だけの世界に入り込み、妄想にとらわれ続ける主人公の姿は、誰もが通過した“中学生時代”。妄想と青春を行き交う独特のストーリーは、主役の草彅剛さん、15歳の平岡拓真さんら俳優陣の熱演によって、新たなヒーローアクションに仕上がっています。

本作でスキャンダルによって本国を追われ、日本でひっそりと生活する“元・韓流スター”を演じたのがヤン・イクチュンさん。監督、製作、脚本、主演、編集をてがけた映画『息もできない』(2009)にて映画史に鮮烈な記憶を残した映画監督兼俳優です。

今回、宮藤官九郎監督とヤン・イクチュンさんに2ショットインタビューを敢行。撮影秘話や、自身の中学生時代の妄想についてまで、様々なお話を伺って来ました。

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――まず、お互いの第一印象を伺いたいのですが。

宮藤官九郎:皆さんそうだと思うんですけど『息もできない』という映画の印象が強烈で。『息もできない』が上映されていた当時、劇場に貼ってあるポスターを見てドキュメンタリーだと勘違いしたんですよね。「本物のヤクザが写ってるんじゃないか」って(笑)。そんな強面のイメージが強かったので、今回は全く違うキャラクターにキャスティングさせてもらったんですね。撮影ではギャップにやられちゃいました。

ヤン・イクチュン:私は権威のある監督の前では緊張してしまう事が多いのですが、宮藤さんはオープンな方で、非常に温かく受け入れてくれたのが印象的です。撮影の過程そのものを楽しむ事が出来ました。

――ヤンさんは“元韓流スター“という役柄について、抵抗があったのではないでしょうか?

ヤン・イクチュン:元々私は日本の韓流ブームというものに関心はあって、この役をいただいた時も驚きましたが、映画の中のドラマ、作中作品で私が演じた役柄には風刺が込められていて面白いなと思ったんですよね。

宮藤官九郎:こういった役をやってもらうのは申し訳ないなと思いつつ。映画の中のドラマで、ヤンさん以外の俳優さんは、日本在住の韓国人の俳優さん達を集めてオーディションで決めたんですが、とにかく皆がやりすぎてて面白かったんですよ。「号泣して」っていうと「ウワアアア」って膝から崩れ落ちて泣くので可笑しくて可笑しくて。カットかかってもやめなかったりとか、とにかく過剰なサービス精神に圧倒されましたね。

映画の中では「韓流ドラマっぽさ」という物を追求しているわけですが、日本の奥様達が韓流ドラマに盛り上がるのは、あれに代わる物が日本に無いっていう負い目もあるんですよね。僕等には作れないわけですから。

ヤン・イクチュン:私の考えを打ち明けますと、20代の頃、俗に言う韓流ドラマを観て「こんなのがドラマなんてお話にならない」と思っていたんですね。でも、私の母親の世代、60代くらいの人たちは、ドラマに描かれている様な生き方を本当にしてきている。好きな人と結婚出来ない、とか貧困とか今では考えられない様な事が本当にあった。しかも当時は政治的なこととか時代のせいもあって、耐えるしかなったんです。自分の感情を素直に表現することができなかった。だからドラマに共感できるのだと思うし、ドラマを見て一緒に泣いたりすることが本当に大事なんだなと最近では理解出来る様になってきました。

とはいえ、私は今度機会があればドラマの演出をしてみたいと思っていて、韓国のドラマが全て「好きな人が生き別れの兄弟だった!」といった設定ではないって、いつか宮藤さんに観ていただきたいですね(笑)。

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――この作品は「妄想」というのが大きなテーマがベースとなっているわけですが、そもそも妄想って日本っぽいアクションなんでしょうか? 韓国の中学生も妄想は活発なのでしょうか?

ヤン・イクチュン:もちろん、私もセックスに関するファンタジーだけが広がってマスターベーションに明け暮れていた日々でした。

宮藤官九郎:一緒です。一緒、一緒。

ヤン・イクチュン:中学生の頃って、性的な感情は芽生えているのに実体験がともなっていないわけです。私自身もきちんとした性教育を受けていなかった。日本は性的なものに対してオープンですよね。メディアでも性描写もよく描かれていますし。表に出ている分は笑い飛ばせる事もあるんだけど、私が中学生の時の韓国では性的なものは抑圧され、遮断されていたので、その分異様に妄想だけが活発となるわけです。

宮藤官九郎:今の話聞いて思ったのは、僕が小学生の頃って深夜にエッチなテレビ番組がやってて、親の目を盗んで発散させていたんですよ。でも、日本でも段々とそういう番組が減っているから、逆に心配ではありますよね。

――ある程度はオープンにしたほうが良いと。

ヤン・イクチュン:私たちの父親世代は少なくとも1本はアダルトなビデオテープを所持していて、息子は中学生くらいになると、そのテープを発見して友達と一緒に盗み観たり。そうするとセックスがファンタジーではなく現実になっていくんですよね。

宮藤官九郎:僕も、父親の部屋から変な写真が出てきて見てたな~。でも、ヤンさんと違うのは友達と共有はしていなくて「自分だけがこんなに変態だったらどうしよう」って悩んだり。

――そこは『中学生円山』の円山と共通していますね。

ヤン・イクチュン:基本的に男というものは、セックスというものを知った瞬間から妄想にとりつかれる生き物だと思うんですね。それは30代になっても40代になっても年齢に関わらず。それが雄の本能であり。だからこそ、この作品は全ての年代の男性に楽しんでいただける作品だと思いました。

――どうもありがとうございました!

中学生円山

『中学生円山』ストーリー

定時で帰ってくる父(仲村トオル)、韓流ドラマにはまっている母(坂井真紀)、デリカシーのない妹といったごく普通の家庭に育った中学2年生の円山克也(平岡拓真)。団地と学校を往復するだけの日々を過ごす克也だが、思春期らしく頭の中ではエロいことばかり考えている。最近は、ある目的のために自主トレと称して身体を柔らかくする努力をしている。ついには限界まで背中を折り曲げて妄想の世界へトリップするように。その頃、上の階に下井辰夫という男(草なぎ剛)が引っ越してくる。シングルファーザーで、仕事をしている様子はないが、なぜか団地の主婦たちの間にうまく溶け込んでいる。そんなある日、団地の近所で殺人事件が起こる。克也は謎が多い下井が殺し屋ではないかという妄想に取りつかれてしまう……。

5月18日 全国ロードショー

http://maruyama-movie.jp/

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