官僚の卵クン達へ ~やっぱり官僚に対する未練は少しあるな~

今回はうさみのりやさんのブログ『うさみのりやのブログGT~三十路の元官僚、独立するの巻~』からご寄稿いただきました。

※この記事は2013年04月21日に書かれたものです。

■官僚の卵クン達へ ~やっぱり官僚に対する未練は少しあるな~
本日は国家公務員総合職試験を目前に控えた官僚の卵クンたち向けの講演でした。

内容としては自分の官僚としての経験や、今考える官僚に求められる役割を語らせてもらいました。講演していて感じたことは、やっぱり自分は官僚という仕事にやりがいを感じていたんだな~、ということ。色々あって辞めることにしたけれど、修行を積んで、大きくなって、いつかもう一度あの世界に戻ってみたいという気になりました。

ではちょっと講演内容の触りだけ。

●【官僚として経験から後輩へのアドバイス】
○ 自分の「やりたいこと」を簡単に定義して、将来の選択肢を狭めない方が良い。官庁のやっている仕事というのは非常に幅広くて、自分が思わぬようなやりがいのある仕事がたくさんある。今の自分の狭い識見で一人で「やりたいこと」を定義すると将来の可能性の芽を摘むことになる。

○ じゃどうすれば良いかというと、単純に「自分の働きやすい場所」を探して、そこを自分の職場とすればよい。組織には性格がある。性格に合わない組織に入ることは組織にとっても自分にとってもお互いに取って不幸。第一志望とか、第二志望とかそういったものはあまり意味が無い話。その上で、将来世の中がどういう風に変化するのか(例えば農業が輸出産業するとか、日本が資源大国になるとか、地方自治体が破綻するとか)仮説を複数考えて、自分が働きたいと思った職場でどういう風にその変化に役立てるかのイメージを作っておいた方が良い。働き方が強くイメージできれば、それが現実になる。

資本主義がグローバル化していく中、国というローカルな単位で国民を守っていく民主主義の役割はむしろ重要になって来ていると思う。今までのように企業や業界団体を向いて仕事するのではなく、一人一人の人間の可能性を引き出すことを重視して仕事をしてほしい。役所は社会と連動しているから急には変われないけど、君たちがずっと問題意識を持ち続けれていれば少しずつ変わっていくはず。ゆっくりと、でも着実に。

自分のことをエリートだと自覚してほしい。自分にその実感がなくとも、世の中は君たちをそう見ることを忘れては行けない。二種、三種の職員が自分たちをどう見ているか、よくよく考てほしい。エリートであるということはリーダーの責任を引き受けるということ。それは茨の道だけれど、それに応える勇気を持ってほしい。

「待機する英雄」であってほしい。今日本は瀬戸際にたたされてて、きっと政治はこれから民主主義のルールを逸脱しかねないおかしなことをたくさんしようとすると思う。その時、あくまで国会は選挙で選ばれた国会議員が議論する民意を代表する場所なのであって、行政である官僚はそれと相克して民主主義の形式を守る立場であることを忘れないでほしい。何かおかしなことがあったら、尖閣諸島のビデオを流した一色正春さんみたいに、「それはおかしい!民主主義のプロトコルに反している!」という勇気を持ち続けてほしい。きっとその後何年も干されることになるだろうけど、それが「高貴なる義務」というものだと思う。

正しく日本の将来に絶望してほしい。例えば現行の日本の社会保障制度は10年、20年スパンで見たら絶対に維持不可能だ。それを経済政策や財政政策で変えられると、変に期待を持たずに、粛々と仮に社会保障制度がダメになったとしても日本全国で首を吊るような人が続出しないようにするための対策を考え続けて、いざその時が来たら実践してほしい。国民の生活を守るとはそういう地道な作業だ。自分はその絶望に絶えきれずに外に出て新しい道を探すことにしたけれど、本当に強い人間、本当の官僚は、全ての絶望的現実を背負って、いざという時に国民の生活を守る為にすべきことを粛々と準備する奴だ。自分の経済産業省の同期のエースもそういう器のデカい奴だった。

「世界」というのはアメリカとEUだけではないことを意識してほしい。世界はグローバル化しているが同時に多極化している。その中で、日本がどういう立ち位置を取るかは、ガラパゴス VS グローバル みたいな単純な枠組みじゃなくて、EU、TPP陣営、BRICS, イスラム、アフリカといった複雑系の動きの中で、日本がどこに立ち位置を取ってバランスをとるかを柔軟に考えるべき時代に来ている。

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あとは色々と生々しい話もしましたけれど、それは来てくれた人の特権ということで

それでは今日のこの辺で。

執筆: この記事はうさみのりやさんのブログ『うさみのりやのブログGT~三十路の元官僚、独立するの巻~』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年05月01日時点のものです。

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