●公営ギャンブルを全否定する国税局の理屈
“馬券で蔵を建て”られるほどの独自理論を確立しただけでも驚きだが、もっと驚きなのがこの男性を告発した大阪国税局の言い分だ。大阪国税局は、約30億1000万円の配当額は一時所得にあたり、約27億4000万円分の外れ馬券の購入額は必要経費と認めないとし、約5億7000万円の所得税額を算定した。
この国税局の理屈に対してネット上では、競馬ファンのみならず、すべてのギャンブラーを巻き込んで「それはおかしい」の大合唱が起こっている。
・資金を回転させて継続的に儲けてるんだから、一時所得ではなくて事業か雑所得だろう・外れ馬券は当たり馬券のオッズ構成要素であり表裏一体なのだから、負けた分も経費だ
・パチンコに置き換えると、スタートチェッカーに入って当たった1玉分しか経費として認められないことになる
・馬券の金額には25%のテラ銭が含まれている(※うち10%を国庫納付)のだから二重課税だ
・年間収支で大幅に負けていても、払い戻し総額が50万円超えたら課税か
・勝っても破産、負けても破産じゃ誰もやらないぞ
・この理屈が認められたら競馬どころかすべての公営ギャンブルが終了
●「競馬配当は事業所得か否か」を争点にしたい国税庁
競馬配当を巡っては、過去にも外れ馬券を必要経費として申告した人が認められなかったケースがある(※1、現在も係争中)。その時の国税庁の言い分は以下のようなものだった。
競走馬の着順に係る予想は、必ずしも的中するとは限らないため、 馬券を購入する行為と購入馬券の的中との間には相関関係がなく、予想の結果がどのようなものになるかは、偶発性のみに由来すると認められる上、競馬については、いわゆる必勝法はないとされていることからすると、競馬に営利性があるとは認められません。そして、たとえ高確率で予想が的中し競馬に継続して参加する者に所得が生じたとしても、それは、営利性から認められない行為から生じているにすぎず、継続して馬券を購入していたとしても、当該行為から生じた所得について、営利を目的とする継続的行為から生じた所得ではなく、事業所得には該当しないこととなります。
一時所得には必要経費の概念が適用されず、「その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額」と定められたかなり限定的な控除しか認められないため、競馬の利益は事業所得か否かが争点になっているのだが、却下されているのだ。しかし、今回の男性のように、結果的に3年もの間利益をあげ続け、100万円を1億4000万円まで増やした行為が「偶発性のみに由来し、営利性がない」と言い切れるのだろうか。
国税庁が「競馬の配当は一時所得」と主張する根拠は、一時所得を例示した『所得税法基本通達34-1』に「競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等」とあること。ただし、この通達はあくまでも解釈であり、所得税法自体が競馬配当を定義しているわけではない。
要するに、パチンコの三店方式についてもそうだが、ギャンブル関連の法解釈を曖昧なままにしてきたツケが回ってきたということだ。一部政治家の間にはカジノ特区を作ろうとする動きも出てきているご時世なのに、法整備がまったく追いついていない。勝った金額を律儀に申告した人までが不条理な追徴課税をされるのは、徴税の精神からしてもおかしいだろう。なにより、この事件で萎縮した競馬ファンが減少して、公営ギャンブルからの税収もダウンしてしまったのでは、国税庁にとっても本末転倒だと思うのだが……。
※1:ほはてい氏のブログ「ほはてい一直線」
http://povertyx.blog37.fc2.com/
画像:flickr from Yahoo!より
http://www.flickr.com/photos/tanni/290983874/
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