4月16日、東京地裁にて“記者席”を巡っての、ある民事裁判がスタートする。裁判のニュースで、法廷内の映像がたまに流れることからご存知の方も多いだろうが、日本の裁判所には“記者席”というものがある。基本、記者クラブに所属している社の記者らのために設けられた席だ。多くの傍聴人がつめかけ、人気でなかなか傍聴できない裁判も、記者らはこの“記者席”に座り傍聴することができる。記者席には白いカバーがかけられ、「報道」の腕章を付けた記者しか座れない。この席は記者クラブが裁判所に申請することで用意される。
ところが、この記者席を裁判所は、一般の傍聴人を制限するために利用しているのでは? という疑惑が発生した。東京地裁で、ある「公務執行妨害、傷害」の裁判を傍聴し続けていたジャーナリスト、今井亮一氏はこう憤慨する。
「マスコミ的には無名の事件だったんですが、初回からずっと傍聴券が抽選となり、開廷30分前に傍聴券をゲットしなければ傍聴できませんでした。空席があっても、です。しかも、法廷には記者席が5席設けられていたんですが、記者なんか1人もいなかったんですよ」
第1回公判は5席とも無人。第2回公判で、女性が1人、15分ほど座った。その後の公判では男性が1人座るようになった。が、残る4席はずっと無人。それでも裁判所は白いカバーを外して一般傍聴人を座らせることもなかったという。
疑問に思った今井氏は、記者クラブに赴き、各社に記者席を申請したのか尋ねた。すると、申請などしておらず、そもそもその裁判が行われていること自体、多くの記者は知らなかったのだ。どこも申請していなかったとなると、第2回公判で15分ほど座った女性と、その後の公判で座っていた男性は一体、何者だったのだろうか……。
「調べたところ、ふたりとも某テレビ局の記者だったようです。女性のほうには直接確認していないのですが。しかし、残りの4席はずっと無人。これって、記者席だとだましていることにほかならない。やめてくださいと、私は裁判所に対し文書で申し入れをしたんです。回答がないので聞きに行ったら、なんて言われたと思います? “お答えしない”の6文字ですよ。裁判監視の役割を担う傍聴人を、裁判所はあまりにも軽く見ている。裁判員にはチヤホヤするそうなのに」(同)
とうとうガマンがならなくなった今井氏は「“虚偽記者席”のせいで傍聴できないこともあった。そんな卑怯・卑劣なものを見せつけられ精神的損害を被った」と損害賠償請求の民事裁判を起こした。第1回公判は4月16日10時15分、東京地裁527号法廷で開かれる予定だ。
「私だって、ほんとは裁判なんて面倒なことは、やりたくないんです。しかし本件は、あまりにひどすぎる。“国民に身近な司法を”とか言いながら、いっくらなんでも、ウソでだまして傍聴妨害は、ひどすぎるでしょ。 今後の展開は私のメールマガジンで随時レポートしていきます。記者クラブから申請がないのに裁判所が勝手に記者席を設け、少なくとも4席の空席をわざとつくり続けたのは事実。ごめんなさいと謝るのか、謝らず争うなら、いったいどんな理屈で正当化するのか見ものです」(同)
初公判、そしてその後の展開も、随時リポートしていく予定である。
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