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『相棒season11』第17話 ビリー(と、安倍晋三首相Facebookの話)

2013/04/13 18:03 投稿

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『相棒season11』第17話 ビリー(と、安倍晋三首相Facebookの話)

今回はhokke-ookamiさんのブログ『法華狼の日記』からご寄稿いただきました。

■『相棒season11』第17話 ビリー(と、安倍晋三首相Facebookの話)
2月27日に放映された回は、映画『相棒シリーズ X DAY』の予告的な内容であり、映画でバディ役の一方をつとめるオリジナルキャラクター岩月彬がゲストとして登場する。映画を観たsusahadeth52623氏のレビューによると、モチーフも映画と共通しているらしい。

「紅茶の代わりに渋い緑茶はいかが 相棒シリーズ X-DAY」 2013年03月26日 『小覇王の徒然はてな別館』

http://d.hatena.ne.jp/susahadeth52623/20130326/1364225851

シーズン11では劇場版の公開に先駆けてこの劇場版の後日談とでも言えるエピソード「ビリー」が放送されていている。ここでは屋上での殺人、明和銀行の帯封の100万円、動画サイトへの削除依頼、といった同じ要素が出てくる。

同じモチーフを使いつつ、映画の主人公とTVドラマ本編の主人公を対照させ、きちんとミステリらしく展開が二転三転する。制約が多い中できっちり楽しませてくれ、地味に完成度の高い回だった。

ところで寄寓にも、具体的な物語内容が、一ヵ月後に起こった現実の事象とそっくりだった。

「相棒 season11|第17話「ビリー」」 『テレビ朝日』

http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/story/17.html

独身で無職の男性・尾藤(桜木信介)の他殺体が発見された。尾藤は財布とは別に「東京明和銀行」の封筒に入った現金100万円を所持。なぜ、そんな大金を持っていたのか?犯人の目的は金ではなさそうだが…。

尾藤がネットの交流サイトFacegoodで複数の携帯電話を使い、「ビリー・ヘンリー」などの名前で複数の外国人になりすましていたことがわかった。その相手である「フレンドリスト」は非表示になっており、見るにはIDとパスワードが必要だ。

そう、安倍晋三首相Facebookのコメント欄に、フランス人「David Stelter」が登場した件である。

「安倍 晋三さんの写真アルバム」 『Facebook』

http://www.facebook.com/photo.php?fbid=325475644242552&set=a.132334373556681.21871.100003403570846&type=1

そんなだからあなたたち韓国人は、現在最も世界で嫌われていて、それをまったく自覚できていない残念な民族なんだよ。

日本は中国、韓国に対してドイツとは比較にならないほどの補償と経済援助を行って、それをあなたたちの国は受け入れているの。それをあなたたちの馬鹿な国家は馬鹿な民衆に伝えずに、いつまでも思想教育で謝罪と賠償を求め続けさせる乞食根性を植えつけているってわけ。

私たちは前を向いて同じ欧州の人間同士あらためて平和に向かって団結し、発展を目指しているのに対して、あなたたち韓国人、中国人は更にしつこくゴネ続けることで金を日本から揺すり取ることしか頭にない、後ろを向いて自国がいかに狂っている国家であるか?ということから目を逸らしているからである。

この韓国人に対するコメントや、その後の中国人に対するコメントが話題となり、「ガジェット通信」の記事にもなった。

「安倍首相のFacebookに韓国人・中国人が反日コメントするも、何故かフランス人が論破した件」 2013年03月16日 『ガジェット通信』

http://getnews.jp/archives/300073

(強調は原文ママ。)

この韓国人のコメントに食いついたのはフランス人(デヴィドさん)でした。

このフランス人による代理ディベートは話題になり、ネット上での反応も様々でした。

このフランス人を褒め称える人もいれば、逆に異常に戦後処理問題に詳しいところに恐怖を覚える人もいました。

しかし、この件で最も驚愕するべきことは、このデヴィッドさん(フランス人)の日本語の文章力・構成力の高さです。


TVドラマでは、偽アカウントを作るために複数の携帯電話を利用し、それらしい日記を書くため機械翻訳を活用し、インターネット上にある映像を編集するような努力も重ねていた。しかし現実では、日本語を使って読者に心地良いコメントをするだけで、首相公式Facebookという場でもフランス人という自称が信用をうることができたわけだ。

しかし、さすがに広く知られると相応の追求を受けることとなる。この「デヴィッドさん(フランス人)」の顔写真が、モデル事務所の画像を流用したものだと判明した。

「外国人男性コンパニオン -1-」 『フリー・ウエイブ』

http://fw-root.kir.jp/catalog/catalog/op0039.html

よく似た顔立ちの「David Capalbo」という名前のモデルが、このモデル事務所サイトで「ドイツ国籍」と書かれていることも判明している。

「モデルカタログ【デビッド・カパルボ】」 『Free Wave』

http://www.f-w.co.jp/talentDB/talent.php?talentId=6126

現在では「デヴィッドさん(フランス人)」のFacebookアカウントは消去され、追及が不可能な状態だ。

さすがに2ちゃんねるや、はてなブックマークでは、こうした経緯が周知されて沈静化しつつある。

「安倍首相のFacebookに韓国人・中国人が反日コメントするも、何故かフランス人が論破した件 - ガジェット通信」 2013年03月16日 『はてなブックマーク』

http://b.hatena.ne.jp/entry/getnews.jp/archives/300073

ところがTwitterでは、まだ信用を失っておらず、現在も記事の拡散が続いているようだ。

「安倍首相のFacebookに韓国人・中国人が反日コメント するも、 何故かフランス人が論破した件 -- ガジェット通信」 『TOPSY』

http://topsy.com/http://getnews.jp/archives/300073

はてなブックマークの一覧性が、こうした情報収集においてTwitterより一面で優越している証といえるだろう。先につけられたコメントを読むことで、単純な間違いならば正しやすい。

残念ながら、先日のリニューアルで一覧性が低くなってしまったが、早急に改善してほしいところだ。

「コメントを一覧表示するページをリニューアルしました」 2013年03月21日 『はてなブックマーク日記』

http://hatena.g.hatena.ne.jp/hatenabookmark/20130321/1363866477

さて最後に、たとえ「デヴィッドさん(フランス人)」のプロフィールが事実だとしても、そのコメントは「論破」と呼べるものではないことも説明しておこう。

そもそも「最も世界で嫌われていて、それをまったく自覚できていない残念な民族」という表現を用いる時点で、「デヴィッドさん(フランス人)」が誉められた価値観の人物でないことは明らかだろう。世界で特定の「民族」が嫌悪されていると認識するのみならず、それを追認する態度は、民族差別主義そのものだ。相手が批判されるべきだとしても、あくまで一個人とみなして対応するべきだろう。

そして具体的な認識でも、「日本は中国、韓国に対してドイツとは比較にならないほどの補償と経済援助を行って」という主張からして誤りだ。たしかに日本は経済援助を行っているが、中国などは補償を放棄している。同様に欧州でも、過酷な賠償請求がナチスドイツを生み出した反省で、連合国の多くが賠償請求権を放棄した。これでは「戦後処理問題に詳しい」とはいえない。

ちなみに、ドイツは第二次世界大戦後に東西へ分裂したこともあって、戦後補償のありかたを単純に比較することが難しい。少し古いが、1994年の『世界』に掲載された記事を紹介しよう。

「戦後補償の国際比較」 『ドイツ現代史を訪ねて』

http://www.geocities.jp/dasheiligewasser/essay3/essay3-3.htm

ドイツの場合、連合国との正式の講和条約はとうとう締結されないまま今日を迎えている。東西に分裂したドイツが統一するまで講和条約の締結を待つというのが表面上の理由だが、実は冷戦の影響が大きい。東西両陣営とも、東と西の両ドイツに対する経済的圧迫を手控えざるを得なかった。一九五五年の西欧諸国と西独とのロンドン債務協定では、戦前、戦後のドイツと旧連合国との請求権の清算が取り決められたが、戦争に起因する請求権問題は講和条約で扱うとしたため、結局、西独の連合国に対する賠償支払いは、いつ結ばれるか分からない将来の講和条約に委ねられた。

つまり、戦後処理問題に詳しいフランス人ならば、イタリアと比較しそうな気がするのだ。

ただパリ条約が連合国全体と枢軸国との講和条約の中で賠償について取り決めたのに対し、サンフランシスコ条約においては賠償問題の具体的取り決めが日本と当該国とのニ国間協定に委ねられており、日本にとってはるかに有利なものとなったことは否めない。

逆に、1994年当時に見られたドイツと連合国側の対立は、日本の現状とよく似た光景である。

一九九〇年九月の東西ドイツと旧連合四ヶ国間の「最終規定条約」、いわゆる二プラス四条約で旧占領四ヶ国はドイツに対するすべての権利と責任を最終的に消滅させている。この最終規定は賠償問題について何ら触れていない が、これにより旧連合国のドイツに対する賠償請求権が消滅したものと考えられるかどうかは微妙な問題だ。すでに、英、仏、オランダ、ギリシャ、セルビアなどがドイツに対し改めて賠償を請求しており、「賠償問題は決着済み」とするドイツ政府と対立している。

もちろん、これによって日本が正当化されるわけではない。日本の戦後補償に限らない普遍的な問題として、広く意識し続けるべきという話だ。

執筆: この記事はhokke-ookamiさんのブログ『法華狼の日記』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年04月10日時点のものです。

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