今回は池田信夫さんのブログ『池田信夫blog part2』からご寄稿いただきました。
※この記事は2012年11月23日に書かれたものです。
※すべての画像が表示されない場合は、http://getnews.jp/archives/275270をごらんください。
■日銀はインフレ予想を起こせるか
11月22日のニコ生は、田原さんの司会が珍しく混乱していて、ただでさえわかりにくいマクロ経済の話が、余計わかりにくくなったようだ。現実には、高橋洋一氏と私の意見の違いは見かけほど大きくない。
「 ガチンコ対決! 高橋洋一VS池田信夫 審判:田原総一朗「新政権で日本経済はどうなる!?」 (番組ID:lv115967379) 」 『ニコニコ生放送』
http://live.nicovideo.jp/watch/lv115967379
※この番組は 2012/11/22(木) 23:15 に終了いたしました。
まず一致点は
・ 公共事業のバラマキで総需要を拡大する「国土強靱化」は筋が悪い
・ 日銀の外債購入は為替介入で、短期的な効果しかない
・ 国債の日銀引き受けは、今のような平時には買いオペと同じ
相違点(高橋氏の主張)は
・ マネタリーベースが増えれば、マネーストックが増えなくてもインフレ予想が起こる
・ 為替もマネタリーベースで動く。マネーストックはどうでもいい
・ 金利が上昇しても、銀行はALMで管理しているので大丈夫
これは彼独自の「非伝統的金融理論」で、学問的な根拠がまったくない。私は次の図を見せて「マネタリーベースと物価にはまったく相関がない」と言ったのだが、彼は「インフレ予想には影響がある」というので、私が「インフレ予想が上がって現実にはインフレにならなかったのなら、市場をミスリードしただけだ」と言い、田原さんも「予想が変わってもデフレは直ってないじゃないか」と追及したが、高橋氏は「ラグがある」といった曖昧な答えに終始した。
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://px1img.getnews.jp/img/archives/1192.jpg
これを見ていた橋下市長*1が「池田さんは、期待インフレ率を知らなかったようだ」とコメントしたのには愕然とした。いうまでもないが、「インフレ予想」(inflation expectation)は「期待インフレ」のことだ。Expectationを「期待」と訳すのは誤解のもと(これは高橋氏も同意)なので、最近は「予想」と訳すことが多い。
*1:「橋下徹@t_ishin」 『Twitter』
ニコ生ガチンコ高橋洋一氏VS池田信夫氏視聴。高橋さんの圧勝だった。池田さんは、期待インフレ率を知らなかったようだ。名目金利が0だから金融緩和は意味ないというロジックの一点張り。池田さんの高橋さん批判の論ってこんな程度だったの?名目金利0でデフレだったら実質金利はプラス。
https://twitter.com/t_ishin/status/271626816450613248
これについては何度も説明したが、日銀の時間軸政策*2は世界で初めてインフレ予想をコントロールしようという革新的な政策で、一定の効果はあったというのが世界的な評価だ。FRBも同様の政策を採用しているが、その効果は弱い。これは「何かのきっかけでインフレになっても引き締めない」というだけで、中央銀行がどうやってインフレを起こすかわからないからだ。
*2:「クルーグマンの量的緩和論」 2012年04月23日 『池田信夫blog part2』
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51826080.html
・・・と説明しても、95%以上の読者には何のことかわからないだろう。マクロ経済は非常に複雑で、わかりにくい。それを高橋氏のように「マネーを印刷すればインフレになる!」といえばわかりやすいのだろうが、上の図をみればわかるように、彼の話は現実にはすべて反証されたのだ。
執筆: この記事は池田信夫さんのブログ『池田信夫blog part2』からご寄稿いただきました。
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