今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
■集中講義録・エネルギー資源を理解する(1) エネルギーは「輸入するもの」では無くなった(中部大学教授 武田邦彦)
日本にはまだ1970年初頭の第一次石油ショックのトラウマが残っていて、石油は備蓄しなければならない、いったん事あればエネルギー資源を失う、等の話があります。
でも、すでにエネルギー資源は供給過多の状態にあり、産出国は多く、技術がポイントになっています。つまり、かつては「山」がある国が強かったのですが、いまでは「技術」が「資源」になったのです。
世界はこの40年で大きく変わったのですが、日本では主としてNHKなどが「世界は同じような状態にある」ということを基本とした報道が続いたので、「エネルギーは不足している」という認識が広まっています。
でも、すでに石油は、中東、ベネズエラ、北海、アメリカ、ロシアなど多くの場所で生産され、天然ガスはカナダ、ロシアなどを中心に生産量が伸び得ています。石炭は世界で広く存在し、資源量も豊富です。
これに加えて、シェールガス、シェールオイル、オイルサンド、オイルシェール等の新しいタイプの化石燃料が多く、その分布も世界に広く分布しています。
つまり、今や「化石燃料(炭素資源)」は、1)産出国が多い、2)供給過剰である、ということから「特殊な輸入品」ではなく、「一般的にどこからでも買うことができるもの」に変わっています。
それに加えて大きく変化したのが、「山から技術へ」の変化です。かつては「石炭の山」を持っていれば「お金持ち」だったのですが、今では「石炭の山」を持っていても「掘る技術」がなければ、石炭もないも同じになったのです。
石炭はかつて「つるはし」を使って掘ったので「炭坑夫」を雇えば石炭を売ることができたのですが、今では「劣った技術」で掘ったら大きな赤字になるので、「優れた掘削技術」を持っていなければ山は持ち腐れになるからです。
つまり、資源は「鉱山」から「技術」へと変貌したのです。その結果、日本のように掘削技術の部品に強い国やアメリカのように掘削システムを持っている国が「資源国」で、石炭やシェールガスの鉱山があるからと言っても、技術がなければ「資源国」とは言えないのです。
・・・・・・まとめ・・・・・・
1)資源の山を持っていても資源国では無い、
2)技術を持っていれば資源を持っていると同じ、
3)だから日本は資源国で、「国産資源」とは「技術」ということ。
また、省エネルギーというのは産出国にとってもとても辛いことだということを知っておく必要があります。怪しげで税金を狙った話に引っかからないようにしたいものです。エネルギーの専門家は現状を良く分析し、できるだけ正確な情報を提供していただくよう期待しています。
執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年03月29日時点のものです。
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