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芸人ワッキーの偉業は素直に喜ぶべきなのだろうか?

2012/11/13 19:30 投稿

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お笑いコンビ ペナルティのワッキー(40)が偉業を達成した。『サハラ砂漠レース』という、文字どおり灼熱のサハラ砂漠を1週間かけて250キロをマラソンする世界有数の過酷なレースを完走したのだ。世界の過酷なレーストップ10に選ばれたレースで、食糧自給のためバックパックを背負って走らなければいけない。140名が参加して完走したのは116名。ワッキーは87位。このようにハードなレースは順位なんて関係ないだろう。世界中で140人しか参加せず、それなりの覚悟を持ってやってきた猛者が挑み、それでも24名がリタイヤしたのだからかなり厳しいレースだったはずだ。

ワッキーはNHKの『地球イチバン』(木曜10時)という番組の企画で参加した。ペナルティのワッキーはサッカーの名門船橋市立船橋高等学校の出身で、全国高等学校サッカー選手権に出たこともあり、他の番組でも身体能力がすぐれている場面をよく見かける。しかしそんなワッキーも40歳。無理ができる年齢ではないだろう。『サハラ砂漠レース』は芸人として生き残るための必死のアピールで、モチベーションも高かったのかもしれない。

それにしても無事で良かった。忘れていけないのはお笑いタレントの事故が相次いでいたことである。スギちゃん、森三中の村上、いとうあさこ、かまいたち山内。少し前に話題になったのがイモトのマッターホルン登頂だった。

日本テレビの『世界の果てまでイッテQ』が放送された直後、下山にヘリコプターを使ったことを『Twitter』のフォロワーから知らされ、アルピニストの野口さんが答えたのが下の一文。

民間会社のヘリもありますから「お金さえ払えばへりが迎えに来てくれる」はひとつの考えかもしれませんが、原則論として自分の足で登った山は自分の足で降りてくる。達成感も含め山とはそういうものだと僕は思っています。

このツイートに批判的な意見が多かった。野口さんの意図がちゃんと伝わっていなかったのだろう。天候が悪くてヘリが迎えにこられない場合などを想定して野口さんは危惧したのだ。登山に予想できないアクシデントはつきもの。相手は大自然なのだから、ちゃんと自分の足で下山できる体力と精神力がなければ命を落としますよ、と警告してくれたのだ。野口さんは全然間違ったことは言っていない。

こうした問題の責任はテレビ局側や芸能事務所にあるだろう。今や売れっ子のイモトは時間がなく、次の仕事のために歩いて下山する時間の猶予がなかったのかもしれないし、もともと体力的に無理だったから下山はヘリを使う予定だったのかもしれない。

マッターホルンというプロの登山家でも難しい山にチャレンジさせる企画をするからにはよほどの覚悟が必要なはず。実際登山する本人はそれなりの準備をしていたとは思うが、テレビ局や芸能事務所側がどれほどの覚悟でのぞんでいたかはさだかではない。アイドルが芸人のバラエティー番組に浸食するように、芸人がプロの登山家の領域に足を踏み入れてしまったことの重大さを考えていたとは思えない。

このような企画はさらにエスカレートして視聴者はさらに過酷さを望むだろう。それでいて事故が起きれば、世間から「それみたことか」という冷たい反応が返ってくるのは目に見えている。

今回のワッキーのレースをインターネット上では称賛する声は多いが、すでにこのような企画モノは芸人が“そこまでするか!”という域をとうに越してしまっている。視聴者の欲求に歯止めがかからず、テレビ局がそれに応えようとするならば、死人が出るのは時間の問題かもしれない。そんなことになれば日本というお国柄だとすぐに自粛モードになり、体を張った芸人の番組は消えていくだろう。

イメージ画像:「Sahara By veroyama」『flickr from YAHOO!』

http://www.flickr.com/photos/veroyama/4103845880/

※この記事はガジェ通ウェブライターの「赤いからす」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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