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ピストル強盗に襲われました。 南米コロンビア、ボゴタを旅する人々へ

2012/11/12 19:30 投稿

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この記事は渡辺賢太郎さんのブログ『世界八十八湯温泉道 世界一周 極楽エクスプローラーの旅』よりご寄稿いただきました。

■ピストル強盗に襲われました。 南米コロンビア、ボゴタを旅する人々へ

脈略なく突然のUPになりますが、ご容赦ください。

事件のあった翌朝にこの記事を書いています。

私は現在、ボゴタ市内のCOUCH SURFINGホスト宅におります。

いまなお、事件のことを思い出すと身体が熱くなってきますし、額にできた傷や蹴られた首筋などがズキズキしてきます。

怖い、という感覚は不思議と薄いです。

あの瞬間、自分に向けられたピストルが、綺麗なシルバーであったこと、思っていたよりも小さなものだったこと。

助けに来てくれたと思った女性が、自分のウエストポーチをやたら上手に外した瞬間の、カチッという音。

地面に仰向けになって倒れている自分にむけて、赤い帽子の男がなにやら罵声を浴びせていたこと、彼の顔が幼く見えたこと。

それらの情景と感想が一コマずつ、スライドショーのように酷く冷静に思い浮かべられます。

2012年11月3日14:00過ぎ、コロンビアの首都ボゴタの中心部。

ロンプラに載っている有名なベジタリアン食堂でお昼を済ませた私は、その周辺を、いつもの如く路地裏散歩感覚でブラブラ歩いていました。

そのうち坂の上に教会が見えたので、そこまで歩いていってみようとおもい、登り始めました。

当然、いくら昼間とはいえ南米にいるわけですから、人気のない道は避けるのが常識だろう。そう考えて、人通りの多い大きな道を登っていきました。

教会にたどり着くと、その周囲にはたくさんの親子連れがいて、高台から眺めるボゴタの景色を見ながら楽しそうに笑っている様子がみられました。

その教会のすぐ裏手は見晴らしが良さそうだったので、そこまで登って景色を眺めようと思いました。

近所の人々が、物珍しそうに私の方をじっと見ています。そのうちの一人水色の服を着た女性に、オラっ!! とスペイン語で挨拶をすると、少しはにかんで返事をしてくれました。

あまりにものどかな人々の様子に、おそらく私の顔は緩んでいたに違いありません。

と、次の瞬間でした。

だれかが私の左肩をポンっと叩きました。

反射的に振り返ると、よく知っている形状の銀色のものが、その筒先を私の額にそっと近づけていました。

私がその状況を理解するのに、おそらく1秒程度の間があっただろうと思われます。

自分に向けられているのがピストルだということに気付いてからは、それを握っている男の意図もすぐに理解できました。

と同時に、背後から自分を羽交締めにしようとする別の力が加えられました。

ふたりの男が、私の背負っているリュックサックを奪いにかかりました。

自分でも驚いているのですが、この時の私は必至に銃口から顔を背けながら瞬時に、自分が所持している荷物が何で、どこにしまってあるかを把握しなおしたように思います。

アイフォンと財布、キャッシュカード、それにカメラはウエストポーチに入っている、パスポートは所持していない。

背中のリュックにはガイドブックとペットボトルの水くらいしか入っていない。

そういう事をあの瞬間、叫びながら確かに考えていました。

同時に、まだ逃げ切れる、だれかが助けてくれるとも考えていたのです。

次の瞬間、私を羽交締めにし、殴っている男たちの向こうから、先程挨拶を交わしたの水色服の女性がこちらに向かってくるのが見えました。

ほら、やっぱりだれかが助けてくれる!!

安堵を感じた瞬間、彼女は正面から私の腰に手を回し、ウエストポーチを外しにかかりました。

彼女の思惑が成功したカチッという音を聞いた時に、抵抗する気力が完全に失せてしまったあの無力感を今でも思い出します。

その後はされるがまま、身につけていた時計と服以外のすべての物を奪い取られ、地べたに転がされました。

その後、さらに何度か蹴られたように思いますが、はっきりとは覚えていません。

去り際に赤い帽子の男が、私の顔に指さして何やら叫んでいました。

黒いウエストポーチを抱え坂の上へ走って逃げていく女性の姿を力なく見つめることしかできませんでした。

私は、たった今自分が失ったものが、何であるかを冷静に捉えていて、同時に、それらを失ったことが、この旅の継続を、もはや絶対的に困難にすることを気付いていました。

どうしてこのような場所に来てしまったのか?

どうしてカメラとアイフォーンを同時に携帯してしまったのか?

どうしてもっと抵抗しなかったのか?

銃は奪い取れたのではないか?

どうしてだれも助けてくれなかったのか?

そんなような大小さまざまな思考が超高速で頭の中をぐるぐるしながら、気がついたら、頭を抱えて威嚇とも、悲鳴ともつかない叫び声を上げながら地面にひざまずいていたように思います。よくは覚えていません。

おそらく一部始終を見ていたオバさんのひとりが、私を落ち着かせようと私に何やら声をかけてくれています。

促されるままに坂を降りわずか、20mほど降りた教会の前の広場に腰を落ち着けました。

どこからともなく、別のオバさんが、泣きそうな顔をしながら、私にコップ一杯の水を渡してくれました。

気がつくとノドがカラカラに渇いていました。

少しだけ、水を飲んでみると、ことの重大さが感情をともなって押し寄せてきました。

無一文どころか、友人宅の連絡先も住所もわかりません。だれに、何といって助けを求めていいかもわからないし、何より、英語も日本語も全く通じません。周りに集まってくる人たちが、何を入っているのかもさっぱり検討すらつかない。

その瞬間ドン!!っと孤独が襲ってきて、私は再び頭を抱えて呻き出したのを覚えています。

しばらくして、だれかが私の左肩を叩きました。

顔をあげるとそこには一目でそれとわかる教会のシスターが立っています。

大丈夫?ケガはない?、シスターは英語でそう尋ねてくれました。

英語です!!

何か盗られたの? ケガはない? いま警察が来るからね。

それを聞いて、私の口から、ありがとう。という言葉が出るのと同時に、目から涙がボロボロっと溢れ出すのがわかりました。

人目があるのを気にする余裕もなく、なぜかボロボロ溢れてくる涙を止めることができませんでした。

妻や家族や、親友たちに心配をかけることになるなぁ、という思いが湧いてきたのですが、それとも関係があるのかもしれません。

その後は、教会の施設内に移されデトロイト出身だという神父さんに事情を説明し、神父さんがそれを警官に伝えてくれました。

警官は、私が重傷を負っていないことがわかると、あからさまにやる気を失っていくのが感じ取れました。

なぜなら、盗られたものの詳細も聞かれなかったし、犯人が何人だったかすら聞かれなかったからです。

神父さんいわく、それは当然なのだということです。ボゴタ中心市街地のこのあたりでは強盗事件などは日常茶飯事で、神父さん自身も過去に3度襲われているのだそうです。

なにより、刺されたり、撃たれたりしなかったことだけでもかなりの幸運だったのだよ。と云われました。

このあたりで銃をもっている若者は、例外なくドラッグをやっているのだそうです。

そのためモノを奪うことだけで、犯行が収まることは珍しいのだそうです。

警察に送られて、友人宅に戻ったのは事件から6時間後でした。

結局、警察からは最後まで何も質問されませんでしたし、今後のことについても何も説明されませんでした。

友人宅にて、暗い部屋の中ひとりベッドのうえで被害内容を確認してみました。

現金合計 400 US$相当

キャッシュカード 1枚

カメラ 1台

通話用の携帯 1台

アイフォーン4 1台

眼鏡、予備も含めて 2組

そのほかに細々したものもありますが、何より最もショックが大きかったのは、これまで、ともに世界中の温泉80カ所を巡ってきた

温泉道名人タオル

泉人会タオル

を失ったことに気づいた瞬間でした。 妙に、ただ悔しくて、しばらく眠ることができませんでした。

以上が昨日私に起きた出来事の概要です。

正直、昨日のことを、ブログに書くかどうかは迷いました。

これまでの旅の中でもネガティブな出来事はたくさんあったけれど、それらは敢えて書かないようにしてきました。

なぜなら、私の記事を読む皆さんに、世界のことを好きでいてほしいから。

けれど今回のことは書かずにはいられません。

活字にすることで、いまなお混乱している自分自身を落ち着かせたいとも思っています。

と同時に、ほかの人が同じような目にあう可能性を少しでも減らしたいとも思っています。

そして、なにより、今回の出来事が私の1年半に及んだ旅を、断念させようとしているから。

世界の温泉を巡る

多くの方にとっては道楽以外のなにものでもないでしょうから、きっと笑い話になるかもしれませんが、世界八十八湯温泉巡りというのは、私にとって、とてもとても重要な取り組みだったのです。

世界の温泉地を巡ってみて、そのうえで日本、なにより故郷べっぷの温泉がどれだけ素晴らしいものなのかを、地元の次世代のために書いて残すつもりだったのです。

それが、故郷べっぷに住む人々が、マチに愛と誇りを持って粋る。という嘗て仲間とともに掲げたビジョンに向けた道の一つだと信じてやってきたのです。

しかし今回の事件は、まず資金面で旅をこれ以上継続できないことをはっきりさせました。

最低限必要なものを再び購入した場合、帰国資金を除いて、残り一カ月弱しか継続することができなくなりました。

同時に、精神面でのショックも大きいです。

現地の人々と今までと同じように接することができるのか。

裏道をあるいたり、山奥の温泉に行ったりする中で、自分が人を信じることができるでしょうか?

今後どうするかはまだ決められていません。

最も気楽な道はコロンビアからすぐに日本に帰国することです。

しかし、心の奥底で、諦め切れない自分もおりますので、何らかの方法で資金を調達し、かつ精神面で前向きになれれば前に進むことになると思います。

最後まで読んでくれた方には、こころより お礼申し上げます。

また、ご意見、ご感想があれば、ぜひアドバイスください。

いま自分ひとりで考えていていも、正しい判断が出来ないように思っています。

ありがとう、と自分がまだ言えることに感謝しつつ

以上

執筆: この記事は渡辺賢太郎さんのブログ『世界八十八湯温泉道 世界一周 極楽エクスプローラーの旅』からご寄稿いただきました。

[元記事]

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