今回は宋文洲さんのブログ『宋文洲のメルマガの読者広場』からご寄稿いただきました。
矛盾は美しくない(宋文洲のメルマガの読者広場)
特区は中国の改革開放を象徴するような言葉です。深センという村とその周辺の地域に対して中央政府は殆どの規制を外し、人々の好きなようにさせたのです。規制廃止と共に、税収を含む一切の経済政策に、中央政府が口出しを止めたため、深センはこの30年で住民が1000万人を超え、北京に近いGDPを生み出しています。
本来、特区とは自由な地区です。好きなことをやってリスクも自分で取ります。中央政府は政策の自由を与えるが、お金を与えないのがポイントです。うまくいったことも失敗したこともぜんぶ参考として中央政府に吸い上げられ、将来の中国全体の改革に活かされるはずです。
特区とはあくまでもテストであり、最終目的は特区でのテスト結果を全国の改革に活かすことにあるのです。
加計学園の話を聞いていると相変わらずのオトモダチ政治と「問題ない」との強弁ぶりは言うまでもありませんが、私はジャブジャブの予算と利権に特別な不快を感じます。相変わらずの官庁申請もおかしいのですが、その申請に政治が特別に許可を与えるように圧力をかける、いわゆる古い体制に利権だらけの政治操作を施すいびつなやり方です。これで特区というならば、「特区」を発案した鄧小平も天国で怒っているはずです。税金を無駄にした上、特区の最終目的も遠ざけるのみです。
私が安倍政権に批判的である最大の理由は彼の政策の是非ではなく、言っていることとやっていることが矛盾しているだけではなく、言っていること自体も時々矛盾する酷さです。
先日、「そこまで言って委員会」という番組に出た際、安倍政権の憲法改正案の是非を議論しました。「戦力を保持しない」条項を保留したまま、自衛隊の合法化を明記する案に右派の方々が賛成する中、唯一の左派の方が自衛隊は必要だが、憲法を変えるべきではないと主張するのです。どちらも矛盾しています。
賛成も反対も構わないと静かに聞いていた私でしたが、段々双方の矛盾にイライラしてとうとう不満を爆発させたのです。「ここでの議論は聞いていられない。これが日本の世論のレベルも代表している。矛盾しているのが分からないのか。」「私は憲法改正について特別な意見はない。日本人の好きなようにすればいい。しかし、自己矛盾しているような憲法だけは作ってほしくない。子供もおかしいと思うような書き方はやめたほうがいい。」
そして経営も政治も同じですが、矛盾していることは理屈抜きに美しくないのです。当然、結果もよくありません。また科学の視点から見れば自己矛盾は間違いの証明です。そんな自分で自分の間違いを証明する憲法を平気で推し進めることは「憲法を変えたい」安倍総理とそのオトモダチの私欲に過ぎません。
前回はたまたまシルクロード交易について書きましたが、多くの方々に不快な思いを与えたかもしれません。しかし、あれだけ「中国包囲」とかいってAIIBやシルクロードを批判してきた安倍首相が、5日の会合でシルクロード交易に参加の意欲を表明しました。ミスに気付いて変化したのならば、大歓迎ですが、単に米国の本音に気付いて動き出したのであれば、自己矛盾の嘲笑対象になるだけです。米国の属国に甘んじている政治家は本当の政治家でもなければ、本当の右翼ですらないのです。
執筆: この記事は宋文洲さんのブログ『宋文洲のメルマガの読者広場』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2016年06月15日時点のものです。
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