うちの子はビビリで…怖がって吠える…犬や人に吠える…車やバイクに吠える…などのお悩みをお持ちの飼い主さんも多いのでは無いでしょうか。
昔から、ドッグトレーナーやドッグビヘイビアリストの間では、「飼い主の不安は犬に伝搬する」と言われます。これはつまり、飼い主の性格や、その都度の不安を犬は感じ取り、強く影響すると言えます。なので、こうした専門家は飼い主さんに対して、「飼い主は穏やかで冷静であれ」と指導します。
また、アメリカCIAのサイト(1)の”トップ10,ドッグトレーニングTips”という記事の一部には、「訓練場に入る前に不安を捨てろ」とも記されています。これも同様にハンドラーの不安が犬に伝わり、犬が不安になるからだとされています。このように、古くから犬の訓練士は、犬の前では常に穏やかに、かつ毅然とした態度であることが如何に重要かを体験的に知っているのです。
私の元に問題行動の相談をされるケースでも、私の前では問題が出ないこともあります。これは私に一切の不安がなく、堂々としているからかも知れません。
例えば、他の犬や人などに吠えかかる、他の犬を見ると逃げる、などの行動が見られる場合、犬はかなりの不安を感じていることでしょう。この場合、飼い主も同様に不安になっていることが多いのも事実です。散歩中、正面から愛犬が嫌いな物(犬や人、車やバイクなど)が近づいていると、飼い主は「あ、ヤバい…吠えるなぁ」などと感じ、不安になってしまいます。この不安は、まさに現実となり、犬は予想通りの行動を取ります。こうしたケースで、私がリードを持って対峙すると、一切この行動が出ないことも多々あります。このようなケースであれば、リードの持ち方と歩き方を見直し、堂々として冷静になることの大切さを飼い主様へお伝えしています。
不安になっている飼い主は、多くの場合で正面から来る脅威に対して冷静な対処ができません。焦ってしまったり、ただ不安がっていても、適切な判断はできないでしょう。なので、迫り来る脅威を冷静に捉え、その場での対策をしっかりと判断するだけの余裕が求められます。
例えば、正面から嫌いな犬がくるとします。冷静な飼い主は、その脅威を認識してすぐに安全な回避場所の有無を確かめます。接近しなければならない場合は、自分が盾になるような位置関係を作るなどの工夫をします。回避場所があれば、十分に回避し、犬が反応を起こす前に、犬の名前を呼び、こちらに注意を向けるなどの対処が考え付くかも知れません。
冷静に物事を捉えられば、もっと色々なアイディアも浮かぶかも知れません。しかし、焦っていては良いアイディアが浮かばず、常に犬の行動の後手に回ってしまうでしょう。一旦犬が反応を起こせば、飼い主が何を言っても耳には入らないでしょう。
最近、発表された論文では、”飼い主の性格が犬の性格に影響を与える(2)”と言った物があります。ここには「不安定な飼い主と暮らす犬は不安定な傾向にある」や「神経症傾向にある飼い主と暮らす犬は、神経症傾向にある」などとあります。反対に「おおらかな飼い主と暮らす犬は、おおらかな性格である」とも記されています。我々飼い主の性格も、犬の性格に大きく影響するようです。犬は、飼い主への観察を怠りません。これは彼らが、言葉を使わない動物だからです。非言語でコミュニケーションする彼らは、常に相手のボディーランゲージ、表情、声のトーンなどを鋭く察し、感情を読みます。そしてその返答も、ボディーランゲージ、表情、行動で表現します。こうしたやりとりの中で性格は形成されていきます。
怖がりな犬ができる仕組みはもっと複雑です。社会化の問題や遺伝の問題もあります。しかし、これらをクリアにしても、飼い主が不安傾向だと、犬も不安に陥ってしまうということを知っておくと、我々も直すべきことがあることに気づかされます。どうしても自信がなかったり、うまく行かない時は、専門家に依頼してみましょう。
もし、愛犬が怖がりなら、まずはご自身の性格にも目を向けてみましょう。犬の興奮に飲まれることなく、常に穏やかで、毅然とした(断定的、堂々としている)態度を心がけます。もし焦ってしまったら、その場で深呼吸を数回すると落ち着けるかも知れません。怖がりな犬は、幸せでしょうか。私にはそうは思えません。怖い物が少なく、毎日が楽しい方が良いはずです。こうした状況を作ることができるのは、他でもない飼い主だけです。
不必要なものに怖がることなく、人も犬も毎日を楽しく送ることができれば、互いにポジティブな性格になります。この相互作用を良い方向に使うことが、充実した愛犬ライフには必要です。私も時より、犬の興奮に飲まれて失敗することがあります。これを機に、今一度、気を引き締めたいと思います。
参考文献;
1.CIA(2017),CIA’s Top 10 Dog Training Tipster,US
2.Iris Schöberl,Manuela Wedl,Andrea Beetz,Kurt Kotrschal(2017),Psychobiological Factors Affecting Cortisol Variability in Human-Dog Dyads,California-US,Plos one.
TOP画像は著者が撮影したもの。
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(執筆者: 田中 雅織) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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