創立130年を迎える東京藝術大学が、クラウドファンディングサービス『Readyfor』で新たなアーティスト支援や芸術振興を目的とした『東京藝大×クラウドファンディング』をスタート。2016年4月6日より11のプロジェクトが立ち上がり一般人からの支援を求めています。
キックオフイベントに登壇した藝大の澤和樹学長は、「昨今は社会における芸術の重要性は高まっているが、芸術の支援の重要性が高まっているとは言えない」とした上で、文化芸術への国の予算が諸外国と比較して小さく、「国家予算に占める芸術振興費の割合は韓国と比較して10分の1」で、寄付金も世界150ヶ国中102位だと指摘。ここ11年間で藝大の国からの補助金が4000万円削減されていることも合わせて、今回のクラウドファンディングのプロジェクトを始めた理由として挙げました。
『Readyfor』の米良はるか代表は、これまでに藝大が実施したプロジェクト『失われた壁画を完全復元し黄金のアフガニスタンを取り戻したい』『巨匠の響きよ永遠に!藝大に遺されたレコード2万枚の危機を救う』がどちらも成功したことを紹介。とりわけ後者は目標金額が500万円のところ、326人から719万円を調達したこともあり、業務提携に至ったと説明。2017年1月に学部長クラス40人にセミナーを開き、「実際の案件を掘り起こすところからコミットさせて頂きました」と話し、「新時代のパトロンの制度を作りたい」と大学と提携した意義を強調しました。
スタート時点でスタートしたプロジェクトは以下の通り。
・知られざるシマノフスキの魅力を日本で。デュオ・リサイタル開催(目標金額:150万円 実行者:澤和樹氏)
・日本三大絵巻最後の作品、国宝『信貴山絵巻』の現状模写に挑む!(目標金額:200万円 実行者:手塚雄二氏)
・藝大キャンパスの保存林を永く愛される森として守り続けたい(目標金額:100万円 実行者:清水泰博氏・君塚和香氏)
・戦没学生の音楽作品よ、甦れ!楽譜に命を吹き込み今、奏でたい。(目標金額:300万円 実行者:大石泰氏)
・佐藤雅彦研究室/表現手法の探求 短編映画群 “filmlet C” 製作(目標金額:500万円 実行者:c-project)
・太陽の塔だけ? 大阪万博 バシェの音響彫刻を復元 !(目標金額:200万円 実行者:東京藝術大学バシェ音響彫刻修復プロジェクトチーム)
・世界初 クラシック曲”四季”をアニメ化!気鋭の映像作家4人が競作(目標金額:500万円 実行者:岡本美津子氏)
・小泉文夫の研究姿勢を受継ぐ、児童向けweb教材を充実させたい(目標金額:50万円 実行者:東京藝術大学音楽学部 小泉文夫記念資料室)
・焼失した皇居・明治宮殿の天井画 柴田是真の作品を修復したい!(目標金額:350万円 実行者:岡本明子氏)
・自由な表現の挑戦を!作品づくりに必要不可欠な機材を導入したい(目標金額:200万円 実行者:東京藝術大学染織研究室)
・Memorial Rebirth 千住 2017、次世代を担う中学生を育てたい!(目標金額24万円 実行者:アートアクセスあだち 音まち千住の縁)
とりわけ今回注目されるのは、澤学長自らがプロジェクトに挑戦していることでしょう。自身ヴァイオリニストでもある澤学長は、日本での知名度が低いポーランドの作曲家カロル・シマノフスキ(1882-1937)の再評価を狙い、藝大の大学院生として在学中のポーランド人ピアニストのイグナツ・リシェツキ氏と自身がシマノフスキを演奏し、音楽学者のダニエル・チヒ氏を招いて講演を行うデュオ・リサイタルの開催を目指します。
『Readyfor』では、サクセスしたプロジェクトから手数料を払う仕組みですが、今回のプロジェクトではそれを実行者ではなく大学側が負担することで支援。プロジェクトは今後も増える予定となっています。
懸念されるのはクラウドファンディングで資金を集めることで、国の補助金の削減傾向に拍車がかかることですが、米良代表は「プロジェクトが成功することで、支援者や支援額が可視化されると実績になる」と話し、澤学長も「しっかりと研究をやっている大学だと示せる」と期待感をにじませました。
「芸大の活動を知ってもらうことが大事。国に頼らずに卒業生やファンが支える文化を作りたい」という澤学長。これまで予算がなく研究に支障があったプロジェクトが実現できる可能性が高まる一方で、ネット文化に根付き始めているクラウドファンディングをどのように一般層にまで広げることができるか注目されます。
東京藝大×クラウドファンディング(Readyfor)
https://readyfor.jp/tokyogeidai [リンク]
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