いちブロガーの立場から見て「なぜ?」と感じる、国会や官公庁の慣習や仕組みについて、政治家や官僚、メディアの中の人に聞いてみる『なぞなぞ霞ヶ関』。しばらく霞ヶ関の泥沼にはまってしまって続けるのをあきらめようか、とも考えましたが、やりはじめた以上は続けます! というわけで、今回のテーマは“高速道路無料化”について。
2009年の衆議院選挙で民主党は自民党に圧勝して政権を奪取しました。その時のマニフェストで大きくうたわれたのが“高速道路の無料化”です。流通コストの引き下げを通じて生活コストを引き下げ、産地から消費地へ商品を運びやすいようにして、地域経済を活性化するということで、必要額として算出された1.3兆円を投じて2010年度から段階的に実施することになっていました。
ところが、鳩山政権時の前原誠司国土交通大臣は、財政の悪化や公共交通機関への影響を理由に無料化社会実験を主要都市間を結ぶ基本路線以外に限定しました。それでも2010年6月15日より全体の18%にあたる37路線50区間で実験が開始、実質的に無料化が実施されます。
ところが、2011年3月11日の東日本大震災で状況が変わります。復旧・復興費用をまかなうために予算をまわし、6月19日いっぱいで実験を中止。無料化は「一時凍結」とされました。
国土交通省のサイトでは実験一時凍結後24時間の観測データ等の掲載、つまり2011年6月20日の段階で更新が止まっています。一体どうなっているのか、道路局高速道路課に問い合わせてみると……。
「25年度の概算要求に社会化実験の項目はありません」
「……つまり、来年度の一時凍結はそのままということですね?」
「はい」
「それでは、一時凍結はいつ解除になりのでしょう」
「それを決めるのは私どもではありません」
官僚の皆様は政治家の政策を実現に向けて動くので、これは質問した私が悪うございました。申し訳ありません…。
と、いうことで、これは当時国交相で、先ごろまで党内で政調会長の要職にあり、現在は国家戦略担当大臣として野田総理を支える前原氏に直接聞いてみるしかない! ということで勇んで大臣会見へ行って、質問をしてみました。
「高速道路の無料化についてですが、現状一時凍結のままになっております。25年度の概算要求には含まれていないとのことですが、こちらの社会実験を再開する目処を検討されることはあるのでしょうか?」
この質問に、国交相時代の社会実験の内容やデータ、東日本大震災によって一時凍結になった経緯をよどみなくすらすらと述べる前原大臣。そして……。
「三党合意の中で、向こう5年間は社会実験を行わないことを合意しています。そのことで、無料化をやめるということではありませんが、三党間の取り決めでそう決定したということです」
えっ。ええ~っ!!
慌ててニュースソースを調べてみると、民主党が2011年8月11日に出しているリリースの中にこのような文言がありました。
岡田克也幹事長は9日午後、国会内で自民・公明幹事長と会談を行い、2011年度予算を執行するための裏付けとなる特例公債法案成立のため、2012年度予算において高速道路無料化の社会実験を凍結すること、高校無償化及び戸別所得補償制度などの政策の見直しを検討することについて確認した。
また、2012年7月12日の衆議院予算委員会で、安住淳財務相(当時)が無料化予算に関して「合意に変更がない限り、来年度予算に(計上する)ということはない」と答弁していました。これは私の勉強不足、調査不足でした。申し訳ありません……。
とはいえ、「向こう5年間の社会実験を行わない」というのは調べた限りどこにもソースがありませんでした。5年という時間がどういうプロセスで、いつ、誰が決めたのかは分からずじまい……。これは引き続き調査する必要がありそうです。それにしても、国民の約束だったはずのマニフェストの重要政策だった高速道路無料化。このままなし崩しになくなってしまうのでしょうか??
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