みなさんの愛犬は、動物病院が好きですか?おそらく「好き」と答える方は少ないのではないでしょうか。病院での診察では、犬の嫌がることばかりが行われるので、病院嫌いの犬はとても多いことと思います。しかしこの”病院嫌い”を甘くみていると困ったことになることもあります。最近では、犬の寿命が延びていると言われています。故に高齢になれば様々な病気に罹ることになります。愛犬が病院嫌いのままでは、治療行為が不快なストレスとなり、治療へも悪影響を与えてしまいます。また、若いうちでも怪我などで通院することはしばしばあるものです。病院嫌いも酷くなると、怪我の治療時に暴れたり、獣医師や看護師に噛み付いたりして、治療がまともに行えなくなることもあります。
本稿では、病院嫌いにさせない方法と、すでに病院嫌いの犬の克服についてご紹介します。愛犬がまだ子犬なら、至って簡単です。もし成犬になっているのなら、コツコツと取り組むことで病院嫌いを克服することができます。
なぜ病院嫌いになるのか
病院では、知らない人(獣医師・看護師)など身体の色々な所を触られます。マズル(口)を持たれて歯のチェックをしたり、耳の中に綿棒を入れらたり、肛門に体温計を刺されたり、注射されたり….しかもこうした受診の際には、犬が動かないように身体を抑えられたりもします。こうした行為は、犬にとっては不本意なので、犬は当然嫌がります。大抵の場合では、嫌がっても無理やり受診させることが続きます。こうした行為の連続で、犬の病院嫌いは出来上がります。
病院嫌いになっていないウチに、良い印象を植え付ける
愛犬が子犬なら、比較的に簡単に病院嫌いを予防できます。子犬はまだ、病院に対する悪いイメージを抱いていないので、病院を楽しい場所だと認識できるようにします。愛犬がすでに成犬であっても克服するプロセスは同じです。ただし、根気よくコツコツと行う必要があるでしょう。
あらかじめ、おやつを大量に用意しておきます。普段のおやつよりも価値が高いものが好ましいです。例えば、レバーを煮たものや、ササミ肉を煮たものが良いでしょう。犬が「病院に行くときは、特別なおやつが食べられる!」と感じるようにするのが大切です。また、スモールステップで徐々に行うのがコツです。
以下に通院時のトレーニング手順をご紹介します。
1,病院に到着(中に入る前に)→おやつを2〜3個与える
2,少し間をおいて、犬が落ち着いたら中に入る→おやつを2〜3個与える
3,待合室の席に座ったら、犬の名前を呼び注意を引く→おやつを2〜3個与える
4,待っている間は、数分間隔で名前を呼んでおやつを与える
5,診察室に入ったら直ぐにおやつを2〜3個与える
6,診察室中を自由に歩かせて、状況の確認をさせる(リードは外す)
7,診察台に乗せてから、おやつを2〜3個与える※1
8,獣医師や看護師さんと挨拶を交わす(子犬なら撫でてもらい、スキンシップを先に行います)
9,受診が始まったら、おやつを与え続けて、犬の意識をおやつに集中させる
10,特に嫌がる耳掃除などは、手の中におやつを沢山持ち、手を握るようにして、少しづつ与え続けるようする
11,診察が終わったら沢山褒めて、おやつを5~10個ほど与える
12,診察室から待合室に移動し、おやつを2〜3個与える
13,病院を出た所でも、おやつを2〜3個与える
※1,最近では可動式の診察台があり、台を低くできるものがあります。この診察台が望ましいです。この場合なら、おやつを愛犬の鼻先(1cm程度)に提示して、おやつを動かしながら犬が自ら診察台に登るように誘導します。うまく乗れたら、おやつを2〜3個与えます。
手におやつを仕込んでおいて、手を握り口を狭くする。これで一気におやつを食べられないようになる。作業中はずっと食べることができる。
愛犬が成犬の場合では、上記のプロセスの1,を行った後に中には入らず帰ります。これを数日間繰り返し、犬が怖がらないようになったら次のステップに移ります。3,~8,も同様に一つづつクリアできるまで先に進めないようにします。8,のステップで犬が落ち着いていられるようなら、ステップ9,以降に進みます。ここまでクリアできたら後は一気に進めても大丈夫なことが多いです。それでも、途中で犬が嫌がるようなら、ステップを幾つか遡って繰り返しましょう。
新たな治療を受けるときの注意点
こうして病院嫌いを克服できても、怪我や病気で今までに経験したこのない治療を受けると、嫌がることがあります。もし愛犬が診察や治療を嫌がったら、上記の7,以降を行うようにします。
一番大切なのは、人の振る舞い
こうしたプロセスを行っても上手くいかないときは、人の方に問題があることが多くあります。犬が不安がっているときに、「大丈夫だよ〜」と猫撫で声で話しかけると、愛犬はさらに混乱します。飼い主の声は、大抵の場合で犬にとって報酬になっているので、不安な状態で褒められる犬は、どのように振る舞えば良いのかわからなくなり、益々混乱していきます。反対に、叱るのは当然ながら逆効果です。犬を叱れば、怖がっているのに罰を与えることになります。これでは愛犬は飼い主や病院を信用しなくなります。
犬が不安がったり怖がっているときは、あまり話しかけないようにするのがポイントです。犬が少しでも取り乱していたら、まずは冷静に名前を呼んでみましょう。これで愛犬が、飼い主の方へ意識を向けたらおやつで報酬を与えます。もし、混乱が続いていたら、おやつを鼻先に提示して意識を切り替えてから、与えます。それでもダメなら、上記のステップをやり直します。
つまり、怖がっていることには報酬を与えず、意識が飼い主に向いた時や、落ついている時にのみ報酬を与えるようにします。望ましい状態で報酬を与えることで、犬は何が正解なのかを簡単に理解することができます。
いかがでしたでしょうか。犬が病院を楽しい場所だと認識できれば、診療も楽になるばかりではなく、犬にも不快なストレスを与えずに済みます。さらに愛犬は病院に行くことを楽しみにするようにもなります。こうして病院が好きになった犬は、診察室に入るなり、自ら診察台に飛び乗るようにもなります。愛犬の健康管理のためには、病院は必要不可欠です。適切な治療を受けるためにも、病院を楽しい場所にすることは、飼い主の責任でもあるのではないでしょうか。
TOP画像は著者が撮影したもの
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(執筆者: MASSAORI TANAKA) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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