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『真田十勇士』堤幸彦監督インタビュー「僕は“プロ”なんだけど“プロ”じゃない」

2016/09/30 19:30 投稿

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映画やテレビドラマ、舞台、漫画、ゲーム等、様々な分野で描かれ続ける真田信繁幸村。歴史に名を刻んだ「大坂の陣」から400余年、“真田イヤー”と呼ばれる今年、2014年に大ヒットを記録したスペクタクル超大作舞台「真田十勇士」が、同作品の演出を手がけた奇才・堤幸彦監督により映画化され、全国公開中となります。

本作は、天下の名将と名高い真田幸村が実は“腰抜けの武将”であった、という大胆な発想を基に、堤幸彦監督が手がけるエンターテインメント超大作。スリルに満ちた頭脳戦あり、熱いドラマあり、ほのかなロマンスもあり……。佐助と十勇士が仕掛ける、観客全員がド肝を抜かれる大逆転のストーリーに期待が高まっています。今回は、堤幸彦監督に映画の見所や苦労した点などをインタビュー。色々とお話を伺ってきました。

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―舞台を映画化するにあたり、残した要素と削った要素、その理由を教えてください。

堤監督:十勇士が集まってくる出会いのシーンを映画にも入れてしまうと、尺があと1時間くらい必要になってしまうので、その部分はアニメーションでしました。この映画の一番の目的は、最近では珍しい合戦のシーンであり、そこにいろいろな人間模様が収斂されていって最後に大仕掛けの結末につながる、というところをなるべくたっぷりと見せたかったんです。3時間くらいの映画にしても良かったんですが、そうなると制約も増えてきてしまうし、手ごろな時間に収めることも大事だと思い、アニメーションを使うことにしました。

―冒頭のアニメーションはインパクトがあり、キャストの皆さんのアフレコも素晴らしかったです。

堤監督:やってるうちに本気になってきちゃったんですよ(笑)。 この作品はもともと舞台で何度も公演していて、今も再演中です。となると、皆さん役が入っているんです。節回しなどの音的な表現まで自分のものになっている。その上で映画を作り上げたので、アニメーションになろうが映画になろうが、いろいろなアウトプットができるということです。アニメーションのスタッフも日本有数のスタッフを揃えさせていただいて、クオリティの高いものになったので、このまま全部アニメでもいいかなって気もしたんだけど、さすがにね(笑)。

―本作はオープンセットがかなり大がかりだったと思うのですが、ロケにこだわった理由を教えてください。

堤監督:この映画に登場する合戦というのは大坂城の南側あたりで事実として起こったことで、さらにそれは戦国時代最後の出来事だったわけです。その空気感というのは、ちまちましたことで見せたくないなという想いがあって。でも制約上、馬を何十騎も揃えたりはできず、甲冑の装束も用意できる数は限られている。エキストラも、黒沢明先生の『乱』の時代だったら体育系の大学生を集めて何百人でのシーンが撮れたかもしれないが、今はそれもなかなか難しい。それでも、映像技術に頼りながらも、最大限のアナログな表現を目指したかったんです。同時に、日差しなども含む天候による臨場感が欲しかったので、できる限りロケにしました。セットを建てるにしても、見たこともない規模のものを作りたかった。大坂城の部屋なら、大きな柱があって実際こんな絢爛豪華だったんだろうなと想像させるようなもの。最後に出てくる「糒倉(ほしいぐら)」という倉庫みたいなところも、ほんの一瞬忍者の追っ手が大量に出てくるが為にものすごく大がかりなものを作っちゃったんです。ちょっとバカバカしいくらい、合成などのアイデアで乗り切れるところもあえて大きなもの、広い所、たくさんの人を使うことで、僕が一番やりたかった昭和的な活劇の世界を、現代技術とも相まって表現しました。

―ドローンやバギーを用いて撮影したと伺いました。それらのガジェットを使っての撮影で面白かった事を教えてください。

堤監督:面白かったけど、大変でもありましたね。ドローンというのは、例えば「図書館の中で人が歩いているのを浮遊したカメラで撮れます」とか最初はそれくらいの実態だったものが、だんだん大胆でスピード感がある撮影機材に進化していきました。羽もどんどん増え、安定感も増してコントロールもしやすくなって。本作でも今できる最高のドローン技術で主に合戦シーンを撮りましたが、とにかく狙いどおりのものが撮れました。風の影響を強く受けるのでその調整は大変でしたが、そういうところも面白さの一つで、素晴らしい“おもちゃ”だなと(笑)。

【関連記事】超巨大なオープンセット・ドローン&バギーで撮影! 『真田十勇士』の大迫力シーン
http://getnews.jp/archives/1511689 [リンク]

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―舞台版も同時期に再演されてますが、映画版のそれぞれ配役について起用の理由を教えてください。舞台版とキャラを替えて同じキャストが出演しているところも、舞台のファンの方にはたまらないポイントかと思いますが、配役を変えた理由は何かあるのでしょうか?

堤監督:中村勘九郎さん、加藤雅也さんについては、やはりこの作品の「顔」なので配役もそのままにしています。いろいろな人が真田幸村を演じていますが、実在の人物でしかもこの作品においては「腰抜け」だったというキャラクターです。軟弱だけど圧倒的に顔がいい、となると「メンズ・ノンノ」でデビューして、その後俳優としても経験を積んで非常にいいお顔になった加藤雅也さん以外ありえないなと。

勘九郎くんにいたっては、彼は日本の芸能の宝ですよ。猿飛佐助という大嘘つきで素っ頓狂、でも情熱があって型にとらわれない実は大きな真理を背負っている。こんなアンビバレントな役は彼にしかできません。歌舞伎で培われた身体能力、表現力がこの作品で本当にぴったりとハマっていました。アクションはプロのスタントの方々が舌を巻くレベルで、重力なんて彼には関係ないんじゃないかと思うような動きをしますし、火だるまになるのだって自ら望んでやってますからね。私はやめてくれって言ったんですよ(笑)。

初演と映画版の松坂桃李くんは、当代きってのイケメンで、霧隠才蔵はまさにそうでなくてはいけない役で、舞台の再演版では加藤和樹が引き継いだ「イケメン枠」です。イケメンでクールなんだけど冷徹な男ではなく、どこか愛くるしいというか優しい面がなくてはできない役で、桃李くんは本当にぴったりだと思っています。半分顔を隠した髪型を見るだけでちょっとぞくっとしますよね。女性はもちろん男性もドキドキすると思います(笑)。

映画版と舞台版で違う役を演じている加藤和樹と村井良大に関しては、内に秘めてる熱がすごいなという二人なんです。それぞれやり方も表現力も違うんだけれど、眼差しの奥にある力強さ、役者魂みたいなものを感じます。映画と舞台で全く別の役、さらに村井くんは舞台版では根津甚八と豊臣秀頼の一人二役という難しい役どころですが、強い熱量を持っている彼らなら表現できるんじゃないかなと思って配役しました。二人とも全然悩まず面白がって、彼らならではのトライアルをたくさんしてくれましたね。役者冥利に尽きるっていうことなんじゃないかな。

―真田の話はなぜここまで愛されるのか、堤監督が思う魅力を教えてください。

堤監督:日本人は「滅びの美学」が好きなんですかね。そこは大きな魅力なんだと思います。真田幸村は大坂夏の陣で死んだというのが歴史上の事実ですよね。実は大坂の合戦というのは、科学的にみると幸村を筆頭とする武闘派が出ていくのは間違いだったんです。家康は当時すでに相当な高齢でしたから、籠城していれば自然死していた可能性が高い。しかも豊臣家に比べると格下だった徳川家ですから、家康の息子もあまり人気のある武将ではなかった。放っておけば自然に勝っていたところを、「武士(もののふ)の魂じゃ!」とか言ってあえて出ていっちゃったから負けたという、歴史のアイロニーみたいなものも日本人は好きなんだと思いますね。そして幸村というカリスマ的キャラクターは智謀・知略に長けていて、父親ら家族との面白いエピソードもたくさんあって……まあその辺の詳しいところは大河ドラマ見てください(笑)。 そして、合戦の最中、凄い活躍をして死んでいくんです。家康に切腹を迫ったというエピソードもあるくらいですから、ある種のヒーロー像ですよね。そんなヒーローが実は「腰抜け」だったというマキノノゾミさんの独自の発想をモチーフにすると、十勇士のキャラクターの立ち位置が非常に明確に出てくる。単に、幸村を取り巻く架空の傭兵集団ではない、ひとりひとりのキャラがつくり得る面白い集団になれるわけです。平成版『真田十勇士』は、過去の作品で語られてきたこととは、一味も二味も違う面白さを持っていると同時に、日本人がもともと大好きな「幸村ばなし」の良さもきちんと受け継いでいます。

―監督は毎年の様に映画を発表し、舞台にドラマに多方面で活躍されていますが、作品を作り続けるモチベーションはどこにあるのでしょうか。

堤監督:一言でいうと、“プロ”なんだけど“プロ”じゃないということですかね。もともと学生時代に自主映画を作ったり、劇団で制作していたとかもなく、テレビのコント番組のADから始まって、しばらくは音楽の映像でご飯食べていた時もありました。1988年に幸いに映画デビューすることができたけど、当時の僕にとって映画は遥か彼方にある芸術作品で、とても自分が参加できるようなものではないと思っていたんですが、テクノロジーの変化でHDが開発されてからはこんな私でも映画産業に参画することができるようになった。今やiPhoneで映画撮る時代ですしね。でもやはり映画というのは、黒沢明監督や小津安二郎監督、世界の名だたる巨匠を筆頭にした作家たちの最高の表現形態であることは変わらないと思います。僕がやっている商業映画はそういう方々の足元にも及ばない作品群ですが、死ぬまでに巨匠たちの作品に一歩でも二歩でも近づけるようになりたい。だからいろいろな作品に出逢ってそれらを何とかたくさんの方々に見てもらえるように努力して、巨匠たちに少しでも胸を張れる作品を作り上げたいという、素人の貧乏臭さとでもいいましょうか(笑)、そんなところを拠りどころにやっています。

―今日はありがとうございました!

『真田十勇士』全国公開中!
(C)2016『真田十勇士』製作委員会

監督:堤幸彦
出演:中村勘九郎、松坂桃李、大島優子、永山絢斗、加藤和樹、高橋光臣、石垣佑磨、駿河太郎、村井良大、荒井敦史、望月歩、青木健、伊武雅刀、佐藤二朗、野添義弘、松平健(特別出演)、加藤雅也、大竹しのぶ

【ストーリー】
関ヶ原の戦いから14年。天下統一を目前にした徳川家康と、復権を狙う豊臣家の対立が深まっていた戦国の世で、“天下に並ぶ者なし”の名将として、世間から尊敬を集めていた男、真田幸村(加藤雅也)。しかし実はこの幸村、その男前な容貌と、偶発的な幸運の連続によって勝ちを拾ってきただけの、気弱な〈腰抜け男〉だったのだ!実像と虚像の違いに悩んでいた幸村はある時、猿飛佐助(中村勘九郎)と運命的に出会う。忍者の里から飛び出してドデカいことを成し遂げたいと思っていた佐助は、幸村を担いで「本物の天下一の英雄に仕立て上げようじゃないか!」と、同じ抜け忍の霧隠才蔵(松坂桃李)を筆頭に一癖も二癖もある十人の男たちを集め、世にいう《真田十勇士》を誕生させる!亡き秀吉の妻・淀殿に呼び寄せられた幸村、そして十勇士たちは、またたく間に徳川との最終決戦の最前線に立つこととなった。戦国最後にして最大の戦い、徳川対豊臣の〈大坂の陣〉がついに幕を開ける!ついに明かされる“真田の謎”、佐助と才蔵を狙う、くノ一(女忍者)の火垂(大島優子)との“因縁”、淀殿と幸村の禁断の“秘密”、そして勝つ事は不可能とも思える圧倒的に不利な徳川との戦いで、佐助と十勇士が企てた驚愕の“大仕掛け”とは……。徳川軍二十万VS十勇士、時代を変える《大逆転》がいま、始まる!!

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