空前の大ヒットを巻き起こしているモバイルゲーム『ポケモンGO』だが、今週はIT業界の大物たちからも強い関心を受けた。アップルのCEOティム・クック、グーグルのCEOサンダー・ピチャイ、そして、フェイスブックのCEOマーク・ザッカーバーグは、それぞれの会社の業績発表で、全員が『ポケモンGO』について言及した。
彼ら経営陣にとって、ポケモンGOを引用することは、最新情報を取り入れ、関連性があるように見せるための試みの一部であった - クックについては、「ポケマン」と繰り返し呼び、笑えるほどに間違っていたが。彼らがこのゲームについて語る理由の大半は、『ポケモンGO』の成功に興奮しているという点にある。
まずはクックから始めよう。7月26日(現地時間)の業績発表での「ポケマン」発言で、“やや年を取ったお父さん”的なイメージを定着させたクックは、『ポケモンGO』の台頭について、「信じられないようなことが起こった」と、コメントした。
クックは、アップルの開発プラットフォームの成功例として『ポケモンGO』を称賛している。その理由は、同社が『ポケモンGO』から多大な利益を得ているからだ。アップルは、アプリ内のすべての購入から30パーセントを手数料として徴収しており、同ゲームのユーザーが消費する金額は非常に大きなものだ。『ポケモンGO』は、配信開始して以来、全世界のアプリストアで売上のトップを占めており、アプリに関する市場データと分析ツールを提供するアップアニーのデータによると、Spotify(スポティファイ)や他のどのモバイルゲームよりも多くの売上を生み出している。
グーグルのCEOサンダー・ピチャイもまた、『ポケモンGO』について聞こえのいい言葉を並べ、7月28日(現地時間)に行われたアルファベットの業績発表で自身が話していた間に、一部のアナリストはおそらくこのゲームをプレイしていただろうというジョークまで持ち出した。
ピチャイには、『ポケモンGO』に夢中になる多くの理由がある。アップルと同じように、グーグルもまたアプリ内のすべての購入から30パーセントの手数料を徴収している。
また、グーグルはサンフランシスコに拠点を置き、株式会社ポケモン、任天堂と共に『ポケモンGO』の開発に関わるスタートアップ企業ナイアンティックラボの一部を所有している。この関係のおかげで、『ポケモンGO』はグーグルのサーバー上で稼働しており、『ポケモンGO』の成功は、グーグルのクラウド・サービスやビジネスを良い意味で強化しているということを意味する。
フェイスブックのCEOマーク・ザッカーバーグは、7月27日(現地時間)に行われた業績発表で、『ポケモンGO』をプレイしていることを認め、“他のみんなと同じように”ゲームを楽しんでいると語った。アップルやグーグルとは違い、フェイスブックは今のところ『ポケモンGO』の利益は享受していない。
しかし、それでもやはりポケモンは戦略的な理由からフェイスブックとは非常に関連が高い。同社は、市場にオキュラスリフトのバーチャル・リアリティー(VR・仮想現実)ヘッドセットを広めるために多額の資金をつぎ込んできた。マイクロソフトのような企業だけが、現実世界に仮想オブジェクトを重ね合わせる独自のオーグメンテッド・リアリティー(AR・拡張現実)ヘッドセットの公開の準備を行っている。
『ポケモンGO』はARに対して非常に異なるアプローチを取り、ヘッドセットを全く使用せずに済ませた。これは、マイクロソフトのホロレンズに比べると、オキュラスリフトのようにはるかに脅迫感が少ないものだ。ザッカーバーグは27日(現地時間)の業績発表で、ARグラスやヘッドセットには触れず、ARにとって「携帯電話は、おそらく消費者のメインプラットフォームになるだとう」と、主張した。
しかし、IT業界の経営陣が『ポケモンGO』に夢中になる理由は他にもある。彼らは、投資家たちに説明が難しいVRやAR、実用化にはまだ遠いその他の技術についての長期的な戦略の策を検証しているのだ。クックは、「私たちは多額の投資をし続けてきた。私たちはARに賭けている」と、語った。
アップル、グーグル、フェイスブックが現在投資しているものの1つは、もしかすると、次なる『ポケモンGO』なのかもしれない。