10年後に「食える仕事」「食えない仕事」~グローバル化で職の72%は消える。

今回はtkfireさんのブログ『Blogで本を紹介しちゃいます』からご寄稿いただきました。

■10年後に「食える仕事」「食えない仕事」~グローバル化で職の72%は消える。

『10年後に食える仕事、食えない仕事』(渡邉 正裕 東洋経済新報社)

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/asin/4492261036/blogsoukcojp-22/

グローバル化の勢いが止まらない。楽天やパナソック、ユニクロなどは低迷する国内を捨て人材や資源を海外に向けつつある。ユニクロは2012年度の新卒の約8割にあたる1050人を外国人を採用するとの方針を出して衝撃を与えた。楽天も社内の公用語を英語にするなど、日本離れといってもいい現象が大手では起きている。もし職の72%がグローバル化の波で無くなったとしたら?今はバイトや派遣で食べているが、賃金の安い海外に部門まるごと移動してしてしまったらどうだろう?本書「10年後に食える仕事 食えない仕事」は今まで日本人がタブー化してきた問題に真っ向からぶつかった内容です。

あなたの職は10年後あるのでしょうか?

●10年後に「食える仕事」「食えない仕事」~グローバル化で職の72%は消える。

10年後に「食える仕事」「食えない仕事」~グローバル化で職の72%は消える。

(1)重力の世界

・グローバルの最低賃金水準に修練されていく
・平均賃金が日本の20分の1のインド人、中国人との勝負
・低付加価値なグループカラー職種が多い

(2)無国籍ジャングル

・世界70億人と仁義なき戦い
・超成果主義の世界
・勝ち残れば青天井
・才能も運も必要
・顧客と直接接点のない業種が多い

(3)ジャパンプレミアム

・日本人ならではの高いサービスマインド、職人気質、チームワーカースピリッツを活かす
・「同じ日本人」という信頼感を活用した対面サービス
・営業マンや旅館の女将など

(4)グローカル

・日本人の強みを活かしつつ、高付加価値スキルで勝負
・日本市場向けの高度専門職
・高度な日本語と日本での人的ネットワークを活かす

● (1): 重力の世界

自分がこの項目に分類されている人は、すぐに(1)重力の世界から抜け出す事をオススメする。同じ仕事でも日本なら月収は20万円ほどが、同じ仕事をインドに発注すれば1万ルピー(2万円)、中国なら3500元(4万2000円)でできてしまう。つまり、こうした、人件費が10分の1ほどのインド人・中国人へと置き換わっていくのが「重力の世界」です。この動きは以下の3点に絞る事ができます。

1.IT化で瞬時に海外移転する職業

2.徐々に海外移転していく職業

3.海外移転しないが、国内で徐々に外国人に置き換わっていく職業

・コールセンタースタッフ・プログラマー
・メーカー開発者
・検査・組み立て工
・計算事務員
・農畜産作業員

この最も典型的な例がコールセンターである。今や多くの企業が人件費の安い中国の「大連」にコールセンターを持っている場合が多い。コールセンターに電話したら片言日本語の中国人だった…というケースも多いと思う。

日本なら月収20万円払わなくては雇えない人材が中国では月額4500元(=5万5000円)程度で雇える。これは、時給に換算すると370円ほどだ。深夜に吉野家でバイトをすれば3倍は稼げる。国際電話の低価格化が進み、安くて良質な人材を確保する事が容易になった現代、日本にあるコールセンターはいつ海外に移転してもおかしくはないのです。

●(2): 無国籍ジャングル

知識集約的で、日本人メリットがない職業。まさに世界中がライバルであり、自身の腕一本で仕事を勝ち取っていくのがこの項目です。危険な戦場なので安易に手を出すとヤケドしてしまう。共通言語は英語、それもTOEIC900点が最低ラインです。

1.神の領域への挑戦者

2.ボーダレス経営

3.金融&サイバーの覇者

・彫刻家・建築家
・宇宙飛行士
・デザイナー
・プロスポーツ選手
・CEO/CFO

例えば、アップルの元CEOである故スティーブ・ジョブズ氏は(1)のアーティスト系でもあり(3)のサイバー系でもあったまさに無国籍ジャングルの成功者と言えるでしょう。証券や株のディーラーなどもこの分野に分類されます。

しかし競争は激しく結果を残さない者は容赦なく切られる。債券ディーラーの世界では毎年6人のうち1人が切られる。平均生存率は33%というのだから驚きです。

他にも特殊なスキルを持ち合わせているもの。例えば最近で言えば、GREEやモバゲーなどのソーシャルゲームを開発するスキルを持ち合わせている人。業界の競争は激しく年収1000万円~1500万円と優秀な人材の取り合いとなっているそうです。

しかしこの分類にあっても、航空業界の整備資士のように機体が世界共通で整備する部品が同じような分野では、日本であれアメリカでありドイツであれ、それなりの知識があれば行えるという点で、「重力の世界」に向かいつつあります。

● (3): ジャパンプレミアム

意外に置き換わりにくいのが、日本人メリットを生かせる分野です。本書では「ジャパンプレミアム」と呼んでいますが、日本人らしい心配りであった、高度な日本語を活用する職業。この分野においては、すぐに外国人に置き換わるという事は少ないです。

1.独自カルチャーの依存

2.チームワーク&サービス

3.信用&コミニュケーション

4.ハイレベルな日本語

5.国による参入規制

・住宅営業・人材紹介
・ケアマネージャー
・メガバンクの地域営業
・保険、証券のセールス

今やコンビニなどでは外国人が働いている姿を見ることは当たり前になる。しかし、日本人的なおもてなしの精神は強みとして活かせる場合か多い。保険の営業や住宅の営業などがその典型的な例でしょう。

片言の外国人に自分の一生のうち最大の買い物である「お家」の購入を任せることはできない。共産党主導で教育をしている中国人などにとっては、コンビニで両手でお釣りを渡すようなサービスは考えられないそうです。インドも同じで、5つ星ホテルであってもトラブルがあっても言わない方が負け。日本人のような一歩引いて礼をつくすといったサービスは考えられないそうです。

日本人的な「おもてなし」の精神。これは、易々と外国人に置き換わる可能性は低そうです。

● (4): グローカル

日本人のメリットを活かしつつ、ホワイトカラーとして高付加価値なスキルを身につけて外国人労働者からの高い参入障壁を築く、これを本書では「グローカル」と説明しています。

1.独自カルチャーの依存

2.チームワーク&サービス

3.信用&コミニュケーション

4.ハイレベルな日本語

5.国による参入規制

・住宅営業・人材紹介
・ケアマネージャー
・メガバンクの地域営業
・保険、証券のセールス

中国人などの場合、文化的に技術の伝承が難しい部分がある。日本人からすれば考えられないことだが、「なんで自分の成功を他人に教えなくてはならないの?」といった文化がある。

楽天が中国に上陸した際には、日本的な運営手法かまったく通じなかった。やはり現地の仕事は現地の人間が管理するほうがいい。世界最大の製造委託企業「フォクスコン」が成功している理由には、台湾企業でありながら、現地の中国人を採用するという姿勢があるそうだ。

日本では外国人の採用は規制されている官僚や政治家などの仕事がグローカルに値する。議決権の20%以上を外国人が獲得できないテレビ業界も同じだ。下請けの製作会社では外国人労働者も働いているのだろうが、局の正社員と言えば安定職という位置づけが高い。

過去にソフトバンクの孫さんと世界のメディア王であるルパード・マードック氏がテレビ朝日株を大量に獲得した歴史があるが、楽天にしろライブドアにしろテレビ局買収の敷居は高い。

テレビ局と言えば日本有数の高給の会社として知られている。参入障壁もありグローカル。働くには理想的な場所ですよね。でも入社のハードルは非常に高いのが問題ではありますが…。

●7割の人は危機感を持て

統計によれば日本人の雇用の約72.5%(4223万8300人)が「重力の世界」に分類されているという。多くが販売員という形をとっている。この分野では別に日本人でなくても、顧客はブランドを買いに来ているので、それなりの日本語が使える海外労働者でも問題はない。先日、イトーヨーカ堂がパートの比率を9割にするという衝撃的な発表を行ったが、別に、棚卸のパートが中国人でもインド人でもお客には関係のない話だ。バーコードを読み取る単純作業であるなら、賃金の安い外国人労働者でもいい。

「時計回りの雇用」というものがある。簡単にすれば…

(2)無国籍ジャングル(発明)
      ↓
(4)グローカル(マーケティング/開発)
      ↓
(3)ジャパンプレミアム(生産)
      ↓
(1)重力の世界(コモディティ化、低賃金地での生産)

という時計回りのサイクルが早まりつつある。テレビが良い例だろう。今やシャープ、パナソニック、ソニーはテレビ事業の大幅な赤字を抱えている。日立に至ってはテレビ生産からの撤退を発表した。2000年代前半に過去最高益をたたき出していた日本企業が10年後赤字に陥っている事を誰が予想できただろう。世界がグローバル化する。それによってトヨタ自動車などの勝ち組はどんどん利益を増やしていく。しかし、その裏では産業の空洞化、現地生産の拡大が懸念される。ただでさえ超円高時代。このまま無策なリーダシップが続けば、失業率は拡大し、日本が第2のギリシャ、スペインになる日も近いのかもしれない。

あなたの仕事がある日、外国人労働者に切り替わる日も近いのかもしれない。

ある意味で背筋が凍る、刺激的な本でした。

執筆この記事はtkfireさんのブログ『Blogで本を紹介しちゃいます』からご寄稿いただきました。

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