昨年8月に発売されたAKB48の32作目のシングル曲『恋するフォーチュンクッキー』の人気が未だに衰えを見せない。
●数字で見る『恋チュン』ブーム
CDシングル売上はリリースから25週が経過した現在もコンスタントに週3,000枚前後売れ続けており、累計では150万枚を突破した。
AKB48のCDシングルというと、握手券や選抜総選挙の投票券をエサにした抱き合わせ商法で売れているイメージが強い。実際にCDを買っているファンの数は、オリコンランキングなどで発表される売上枚数よりかなり少なく、肌で感じる実人気との乖離が激しい、とはよく指摘されるところだ。
たが、『恋チュン』に限ってはそうでもないようだ。
抱き合わせを排除した音楽配信市場でも大きな存在感を放っている。音楽配信サイト大手のiTunesとレコチョクの昨年のダウンロードランキングで、『恋チュン』はAKB48楽曲史上最高位となる1位と2位にランクイン。大手とはいっても市場規模自体が小さく、やや利用者層に偏りのあるランキングではあるものの、きゃりーぱみゅぱみゅの『にんじゃりばんばん』、Linked Horizonの『紅蓮の弓矢』よりも上位にきている点は評価できる。現時点でも、今年になってから発売された新曲に混じって20位以内に食い込んでいる。
流行曲を身近に感じることのできるカラオケ人気も凄まじい。オリコンが毎週発表するカラオケランキングで、『恋チュン』は2013年9月16日付から現在まで22週連続1位を獲得し、他を寄せ付けない人気曲となっている。カラオケ関連でもう1つ興味深いデータがある。JOYSOUNDが2013年の世代別人気曲ランキングを発表しているのだが、『恋チュン』は30代で8位、40代で4位、50代で8位にランクインしているのだ。30代以上の世代にこれほど歌われているAKB48楽曲が他にあるだろうか。AKB48の人気は『恋チュン』で初めて“一般層”にまで浸透したと言っていいだろう。
その他の人気指標として、参考までにYouTubeの再生回数を見てみよう。日本人アーティストがYouTubeに公開しているミュージックビデオのうち最も再生数が多いのは、もうすぐ1億の大台に到達する『ヘビーローテーション』だが、『恋チュン』は再生ペースにおいて『ヘビロテ』をかなり上回っている。『ヘビロテ』はYouTubeに公式MVがアップされてからおよそ7カ月で3,000万再生を達成したのに対し、『恋チュン』は4カ月後の今月中にも3,000万回に届きそうな勢いだ。
●「踊れば、嫌なことも忘れられる」ダンスと曲自体の魅力
なぜCDをリピート再生するのではなく、わざわざMVを繰り返し見に来るのか。YouTubeのコメント欄を見ると、これまで特にAKB48が好きなわけではなかったという人からのコメント比率が高い。彼らは、前向きな気持ちになれる歌詞、'70年代ディスコ調の覚えやすいメロディー、子供から大人まで簡単に踊れるダンス、そして3,800人のエキストラが心を1つにして踊る楽しげな雰囲気を『恋チュン』MVの魅力に挙げている。
パパイヤ鈴木が担当した振り付けは小一時間もあれば誰でもマスターできる簡単なものでありながら見栄えもする。パンタロンとアフロヘアが流行っていた頃に見たような気がするどこか懐かしいダンスは、前述した中年層からの支持にもつながっている。ある程度踊り手のアレンジに任せた自由度を残しているあたりも、一緒に踊ってみようとする人を惹きつけるのだろう。官公庁、企業、病院、各種学校などがPRのため『恋チュン』人気にあやかって「踊ってみた」動画はちょっとした社会現象になっている。そのブームは今年になってからも拡散し続け、有名どころではFMヨコハマ、永谷園、明治大学、ホリプロ、留学JAPAN(文部科学省)などが動画をアップし、公式MVとの相乗効果で再生数を稼いでいる。
「そんなにネガティブにならずに」「未来はそんな悪くないよ」――失恋の予感を前にしても明るく前向きでいようとする歌詞は、アベノミクスだオリンピックだと閉塞感を打破しようとする今の日本社会にマッチしていた。
また、指原莉乃を知るファンにとっては、これほど彼女のイメージにぴったりな歌詞もない。「ダンスも下手だし、歌も下手だし、かわいくない」指原がセンターになったことで、「会いに行けるアイドル」をコンセプトにしてきたAKB48は完成をみたのではないだろうか。ちょうど新旧メンバーの大規模な交代期でもある。10年後に振り返ってみた時に、「ああ、『恋チュン』の時がAKB48の全盛期だったなぁ……」と思い出される曲になっているのではないか。そんな予感がするのだ。
画像:『恋するフォーチュンクッキー』公式MVより
動画:【MV】恋するフォーチュンクッキー / AKB48[公式](YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=dFf4AgBNR1E
※この記事はガジェ通ウェブライターの「ろくす」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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