今回は城繁幸さんのブログ『Joe’s Labo』からご寄稿いただきました。
■インターンシップで成長する人、こける人
先日、ニュースZEROを何気なく見ていると、特集内で早稲田大学のキャリア大学プログラムが紹介されていました。
「あらかじめ職業内容に触れさせることで、学生と企業のミスマッチを無くして離職率を抑制するのだ」という大学の熱意はびんびんに伝わってきたのですが、見ていると筆者はなんだか悲しくなってきました。
たとえば、教室で学生同士わきあいあいとプレゼンしあって、それを企業側の人間がニコニコしながら見守っているなんてシチュに、実社会で遭遇する可能性なんてあるんでしょうか?
「国際会議で各国代表の役回りを演じ合い、国際交渉を実体験する」という外務省提供プログラムなんて、そんな仕事が本当にあるのか以前になんで各国代表を演じるのが職業体験になるのか筆者にはサッパリ理解不能です。
逆に言うと、そういう体験をさせて「あ、この会社面白いじゃん」と勘違いさせることこそ、彼らの言うところのミスマッチなんじゃないでしょうか。
というわけで、今回はインターンシップの功罪についてまとめてみたいと思います。
●・日本企業が“お客様インターン”が好きなわけ
インターンシップには、大きく分けて2種類あります。まず、実際に職場に入れて、現実の業務の一端に参加させるタイプ。そして、会議室や研修施設で、学生だけを集めて行うワークショップタイプです。
前者は数週間、後者は一日~数日というものがメインです。
両者の最大の違いは「実際の職場に放り込むかどうか」という点ですね。
一般的に日本企業は後者のワークショップ型が人気で、特に大企業ほどそういう傾向が強いように思います。ちなみに筆者は後者のタイプを「お客様インターン」と呼んでいます。お客さんを家に呼んだら、普通は客間か居間でお茶出して帰しますよね?
寝室とか台所には案内しませんよね?それと同じようなものです。
なぜ日本企業はお客様インターンが好きなのかというと、単純に職場を見せたくないからです。どんなに優良企業であっても、職場には外部の人間には見せたくないものがあります。ITを売りにしている会社のはずなのに、紙ファイルが散乱している職場。
効率化をうたっているのに、残業続きで生気の無い目をした社員の群れ。
そしてどこの職場にも、仕事もポストも無く茫然としているバブル期入社のオジサン達が数人はいるものです。そういうリアルを見せてしまうと、夢と希望に満ちた学生に「自分はこの会社に人生を預けて果たして正解だろうか」というメタな疑念を抱かせるきっかけとなってしまいます。
「でもどっちみち入社すればバレちゃうじゃない」という疑問を持つ人もいるでしょう。
まったくそのとおりです。逆に言うと、そうした企業は「新卒採用の時は適当に誤魔化してでも入社させてしまえば、もう逃げられないだろう」という昭和の発想が根っこにあるんですね。
ただし、現在は良くも悪くも2、30代は流動化しており、第二新卒市場という新卒リターンマッチ専用の転職市場まであります。入り口を美化して誤魔化せば誤魔化すほど、逆に離職率は高まる素地が生まれてしまうわけです。
「学生と企業のミスマッチを解消し、離職率を引き下げる」ことをうたうプログラムがまんまお客様インターンだったこと。
これが、筆者が見ていてなんだか悲しくなった理由です。
執筆: この記事は城繁幸さんのブログ『Joe’s Labo』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年10月01日時点のものです。
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