日刊ゲンダイGoogleの検索数の初歩的ミスで大誤報

今回は坂本英樹さんからご寄稿いただきました。

■日刊ゲンダイGoogleの検索数の初歩的ミスで大誤報
ありえない数字が12月1日の日刊ゲンダイに掲載され、今もネットに載っています。

「検索件数4000万件「未来の党」異常人気」 2012年12月1日 『日刊ゲンダイ』

http://gendai.net/articles/view/syakai/139905

これは小さな記事ではなく、その号のメイン、表紙の見出しから誘導された記事でした。

冒頭を引用します。

11月28日の新党結成から数日しか経っていないのに、グーグルで「日本未来の党」が検索された件数が、あっという間に4000万件を突破したのだ。

4000万件と聞いてもピンとこないかもしれないが、日本の人口は1億2000万人だから、3人に1人が「未来の党」に強い関心をもった計算である。「日本維新の会」の検索数2600万件と比べても、有権者の関心は圧倒的。

結党日から記事に出た日まで数えて、わずか4日です。一日あたり1000万も人々は検索したのでしょうか? ちなみに、日本で恐らく一番ググられている単語は"Yahoo"で月間3,000万ほどです。30日間で検索されての数字ですから、それをわずか4日で抜いて4000万検索されるなんて非常に難しいとわかるでしょう。

Googleでのおおよその検索数はGoogle AdWordsの キーワードツール

https://adwords.google.co.jp/

で知ることができます。「日本未来の党」で調べると、4000万どころか「データなし」でした。11月の終わりに発足なので期間が短すぎたのでしょう。データがあったのは「国民の生活が第一」の約14,800件です。日本未来の党が異常人気だろうとしても、1万とか数万とかそういう単位の数が月間検索数の相場となります。いずれにしろ4000万検索なんてされようがありません。また、引き合いに出された「日本維新の会」の月間検索数は約8,100件で、これまた記事の2600万とは大違いでした。

日刊ゲンダイ編集部はGoogleで検索された数を知る正しい方法を知らず、違う数字を記事にしたようです。

では、記事でた4000万とは何の数字でしょう?答えは、日本未来の党でGoogle検索したら見えてきました。

日本未来の党と入れて検索した結果の画面で「約40,300,000件」と、記事の4000万にほぼ一致します。日本維新の会でも「約27,500,000件」と記事の数字に近く、日刊ゲンダイ編集部はこの検索結果の画面の数字を拾ったと思われます。この画面の数字は、ネットをある程度知る人には常識なのですが、検索して得られた該当・関連ページの数です。ヒット数ともいいます。Googleがインデックスとして持っている膨大なページのなかからその検索に該当するページの数の概数を出しているのです。決して検索数ではありません。

じゃあ、数日で日本未来の党は、膨大な言葉がネット上に書かれていてもっとすごいと、日刊ゲンダイの記者の方は思われるかもしれません。しかし実は、検索結果に出る数は、検索した語句を単語に分解してバラバラに書かれているページとか別の表記とかも含んで多めの数が出てくるしくみなのです。

検索結果の順位下位ではこのように、日本共産党の、「日本」「未来」「党」という単語が含まれるページも出てきます。

>党紹介(第25回党大会)|日本共産党

>日本共産党の任務 (5)「過渡的な情勢」のもとでの国民の認識の発展過程と、わが党の任務 (6)国民 ... 第5章 激動の世界と未来社会

日本未来の党とは全く関係のないページも数えての4000万なのです。

””で囲うとある程度正確にそのフレーズでの検索該当ページ数が分かります。党の発足11月28日から記事の出た12月1日までのページに絞ると該当ページ数は約141,000件に過ぎません。日刊ゲンダイ編集部はネットに弱くて間違えたのか、それとも読者にばれないと思ってそう書いたのか、真相はわかりませんが、いずれにしろ4000万件という数字には全く根拠が無いというか、違う数字を拾ってしまった恥ずかしい大誤報だといえるでしょう。

●かつて、読み捨てられた夕刊紙や週刊誌のヨタ記事がネットで亡霊化して広まる時代に
実はこの指摘、記事が発行された翌日、12月2日にブログに書いて指摘していました。

「日刊ゲンダイとネットクチコミ:「未来の党」異常人気 検索件数4000万件」 2012年12月02日 「坂本英樹の繋いで稼ぐBtoBマーケティング」

http://blogs.itmedia.co.jp/sakamoto/2012/12/gendai-ozawa000-5866.html

このブログをジャーナリストの佐々木俊尚さんがTwitterで紹介くださり、多くの方に読んでいただきました。

「佐々木俊尚 @sasakitoshinao」 『Twitter』

https://twitter.com/sasakitoshinao/status/275375005372669952

しかしそれでも、ゲンダイネットは記事の取り下げや補足、訂正などされず、誤報を掲載し続けています。

ソーシャルなネットの時代で、間違いは正されていき、ネットのクチコミは概ね正しい時代になったと一時考えていました。しかし、今、特に東電福島第一原子力発電所事故以降、大手マスコミは真相を隠しているとか、あまり報道しないとかいう陰謀論のクチコミがかなり大きなグループを作るようになっています。周りから間違いをただされても、「御用学者」とか「マスコミの手先」とかレッテルを貼って意見に耳を貸さない人が増えています。信じたいものを信じて、クチコミを広めていくのでその間違いに気づきにくい構造です。

そこに、部数減に悩むタブロイド夕刊紙や週刊誌が、一部の人達が求める情報を提供し、クチコミで広まる構造が強まっています。

例えば、

「鳥越俊太郎氏 若者ら除外する世論調査結果の信憑性に疑問」 2012年07月20日 『NEWSポストセブン』

http://www.news-postseven.com/archives/20120720_130805.html

という週刊ポストの記事は、"鳥越氏「世論調査の数字はインチキ」"とかタイトルが改変されて広まり続けています。識者は、世論調査と情勢分析記事と鳥越氏か記者が混同したと指摘されているのですが、「マスコミの嘘」を要求する陰謀論好きな集団には全く届きません。

かつては、放置でもあまり害は無かった、夕刊紙や週刊誌のヨタ記事もWeb版での掲載や、コピペでデマのソースとして悪用される傾向が強まっています。問題ある記事は放置せず、他のマスコミからも是々非々で批判がされる必要があるのではないでしょうか。特に今回の総選挙で、大マスコミの不正を主張する層が増えています。業界のお約束とかで、他社のビジネスを荒らさないという慣習はもう弊害が多すぎる時代になったそう確信しています。

画像:keybord 『flickr from YAHOO!』

http://www.flickr.com/photos/28537028@N05/2666589184/

執筆: この記事は坂本英樹さんからご寄稿いただきました。

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