今回はうさみのりやさんのブログ『うさみのりやのブログGT~三十路の元官僚、独立するの巻~』からご寄稿いただきました。
■大組織で働いて今役に立っていること
最近独立礼賛系の記事を書きすぎたせいか、学生から「うさみさん大企業嫌いなんすか」と言われたり、Blogosで気弱なイケダハヤト呼ばわりをされ始めたりしているのでちょっと視点を変えて、大組織の総合職として働いていおいてよかったな~、と思うことについて少し述べたいと思います。
●一つ目はキーマンとのネットワークを持てたこと
→ この人のところに行けば面白い技術があるとか、面白い人に会えるとか、仕事を貰えそうだとか、そういった人脈です。今自分が生きていく上にはこういったネットワークは不可欠ですが、これも「経済産業省」という信頼ある組織の看板を背負っていたからこそ築けたものだと感じています。
●二つ目は社会的マナーを教えてくれたこと
→ メールの書き方だとか、飲み会での席の座り方とか回し方だとか、頭の下げ方だとか、そういった社会人として人を不快にしない為の、本当に当たり前のスキル。これが身に付いていない人が世の中の大半なので、これがきちんとできるだけでもある程度の差別化要因になります。
●三つ目は大組織がどのように動くかという意思決定メカニズムの理解が出来たこと
→ 大企業との交渉は人数が多いので、居並ぶメンバーを眺めて誰が意思決定のキーマンかを理解しなければ交渉のポイントが分からなくなりがちです。そんなわけでこうした組織から上手く仕事を取っていく為には、その意思決定メカニズムを知っている必要があります。
というところでしょうか。
あとは幅広い分野の知見が得られて見識が広がったということもありますが、それは逆に言えば専門スキルがつかなかったことの裏返しでもあるし、本当に今の立場になってそれがお金を儲けるという観点で役立っていると言えるかどうかはわかりません。
別に大した話でもないのですが、こういった世の中で生きていく為の当たり前の能力は大組織にいたからこそ当たり前に得られたものです。逆に教育体系がしっかりしてないベンチャーにいきなり入ったり、フリーランスから始めたりしたら運が悪いと誰も教えてくれないので、学ぶ機会がなくて苦労するのではないかと思います。
僕(に限らず独立している人は皆そうだと思いますが)は取引相手としての大組織が大好きです。所詮フリーランスなんて企業の外部労働力として生計を得ることから始めざるを得ないのですから、その相手が社会的ルールを守ってくれるし、ある程度の資金もあり、ネットワークも広い大企業なら言うことなしです。
それに大企業と仕事をすると信頼を得られますから、他の仕事も得られやすくなります。特に儲かっている大企業と取引関係を作れると次々と仕事が降ってくるので、福の神のようなものです。
ただワタシみたいな何物でもない個人がそういう大企業と取引を持てたのは、上に書いたような諸条件を満たしていたからで、特に大組織の意思決定メカニズムというのは所属して稟議書回してみなければ絶対理解できないものなので、それを理解しているということは結構独立して働く上で効いてきています。
そんなわけで僕は自分の経験を振り返っても、余程の覚悟がなければ今の時代新卒で大組織の総合職になるような潰しの効かないキャリアはあまりオススメしていないのですが、上に書いたような当たり前の汎用スキル・無形資産を身につける為と割り切るのなら、大組織総合職もありなんじゃないかと思っています。
ただ出世コースから外れたり、仕事がつまらなくなってきたら、小さい企業に転職するなり独立するなりして離れた方が良いとは思ってますけどね。もはや高度成長期のように組織が自分の人生を守ってくれる状況ではなくなってしまいましたから。ルネサスを辞めた人の苦労なんかを身近で見てるとそんなことを最近痛感します。彼らが就職した時代は、半導体は日本の花形産業だったんですから。今自動車産業に就職しようとしている人は、半導体産業の歴史や現状を学んでおくことをオススメします。
なんて言っている僕もいつ食えなくなるか分からないわけですが(笑)
ではでは今日はこんなところで。
執筆: この記事はうさみのりやさんのブログ『うさみのりやのブログGT~三十路の元官僚、独立するの巻~』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年04月18日時点のものです。
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