2013年に入ってから、堰を切ったかのように各国で同性間の結婚を合法とする法案が認められている。
4月10日は南米ウルグアイで「結婚平等法案」が可決された。
4月12日にはフランスの上院で同性カップルで結婚と養子を持つ権利を与える法案が可決。
4月17日にはニュージーランドで同性間結婚を認める法改正案が可決された。実際に発効されるのは8月。アジア太平洋地域では初めて同性婚が認められた国となる。全世界では13カ国目の同性愛婚の合法化となる。
立て続けに太平洋や南米、そしてヨーロッパの先進国で同性婚の法案が可決。2013年にはいってから、世界で同性婚を認可する動きが活発化している。各国の現状や、日本での実情をまとめてみた。
●各国の動き
2012年5月、米国のバラク・オバマ大統領は、就任演説で同性婚を支持する発言をした。
わたしたちの旅は、ゲイの兄弟たち、そしてレズビアンの姉妹たちが他のあらゆる人と平等に扱われるようになって初めて完全なものとなるのです。というのは、もし人間が真に平等に創られているのなら、互いに誓い合う愛も、必ず平等でなければならないからです。“Our journey is not complete until our gay brothers and sisters are treated like anyone else under the law ― for if we are truly created equal, then surely the love we commit to one another must be equal as well,”
同性愛は宗教観にも関わる発言とされ、政治的な場ではタブー視されていた。しかし、その価値観を自分個人のものとして公的な場で表明することが重要として、発言された。オバマ大統領の公言は、世界における同性婚問題への関心を大きく高めたと言えるだろう。一歩間違えば致命的に政治生命を失いかねない慎重な発言であり、これまでの歴史的な解放、すなわち、黒人解放、女性解放に次ぐ三番目の解放に並ぶとも言われている。
世界的に同性婚が認められない場合、宗教の教義に背くという理由が根ざしていることが多い。法案が通過した各国でも、ウルグアイの教会では、結婚や家族制度が大きな打撃を受けるという反対を受けていた。フランスでもカトリック教会などの宗教団体や保守層が反対している。キリスト教圏では特に宗教的理由から結婚法案が難航する。そのため、ヨーロッパでは「パートナーシップ案」として、結婚の形式とは別にカップルに社会保障を付与する国も多い。
同性婚を認める動きは広く波及している。アジア諸国では、かつては同性愛を「社会悪」とみなしていたベトナムが来年の国民議会に同性婚合法化条項の提案を検討すると表明。台湾では、法案が合法的に認められたわけではないが、女性カップル80組が盛大な合同同性結婚式を開いて話題となった。
一方、同性婚を嫌う極端な例として、アフリカ大陸におけるいくつかの国が挙げられる。例えばナイジェリアのイスラム教徒が多い各州では同性愛そのものが死刑の対象となる。そこではホモフォビア(同性愛への憎悪)を理由にゲイへの迫害、公然たる犯罪が行われているといった現状もあり、国際社会の批判対象となっている。約15年前、ジンバブエの大統領が同性愛問題に対して不寛容な発言をした。宗教上の教義から同性愛に反対する国民と等しい立場を表明することで支持を得ようとした。政治家が支持を得るために、何かを極端に肯定、あるいは否定する立場をとることにより、本来の問題…例えば重大な経済問題から国民の目をそらそうとした例だ。この場合、マイノリティの問題の本質を見据えたものとは言えないだろう。
最も寛容な例として挙げられるのが、アイスランドの首相であるヨハンナ・シグルザルドッティル首相だ。私生活ではレズビアンであることを公言しており、2009年2月に首相として就任。2010年には女性脚本家と結婚。同性愛者を公言、同性結婚をした世界初の国家首脳となった。アイスランドでは登録パートナーシップ法が採用されている。
●日本では?
日本における政治的な実情はどうだろうか。
現状では、養子縁組が同性間の婚姻の代替機能を果たすものとして用いられている。しかし、パートナー間の関係を正しく規定する解決案とは言えない。養子縁組をせず、同性間の「事実婚」どまりである場合は様々な困難が付きまとう。パートナーが面会謝絶となるような重い病気や怪我を負った場合「家族でない」という理由だけで見舞うことができない。また、遺産も、遺言がなければ授受の権利はない。税金の配偶者控除も受けられず、死亡保険金の受取もできない。
法改正の困難である理由として、憲法への解釈が指摘されている。日本国憲法第24条1項は「 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」、2項は「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」とある。この“両性”の法解釈で意見が割れるようだ。
各党の反応はどうであろう。「レインボープライド愛媛」が2012年12月の衆議院議員選挙に際して各党に実施されたアンケートのうち、回答のかえってきた党の見解は以下の通りとなる。「人権問題として同性愛者や性同一性障害者らの性的少数者について取り組んでいくことをどう思われますか?」というアンケートに対して「人権問題として積極的な取り組みが必要だ」と回答したのは民主党、公明党、日本維新の会、日本共産党、社会民主党。「人権問題として取り組まなくてよい」と回答したのは自由民主党。「答えられない/分からない」としたのが国民新党となっている。無回答の党もあるため、回答が得られただけ「議論する余地が生まれている」とみなすこともできる。無回答の示す無関心は、一定数の国民に辛辣な現状を与える事由となり、実生活と隔たりがあると言わざるを得ない。このアンケートは選挙前に実施されたものだ。その後、与党に返り咲いた自民党の認識が否定的なままでは、保守的な印象を強めるものともなりかねないだろう。
セクシャルマイノリティは必ず一定数認められる人々だが、社会における少数派であり、政治に関心が高い。そうした事情から政治利用される側面もある。だが、政治利用としての価値すらないとみなされているのではないだろうか。日本は、先進国として残念なことに、国会の議会場で問題提起されることすらない。だが、LGBTの文化が広まれば実状は変わってくるだろう。
例えば、以前は関心をもたれることのなかったアニメーションや漫画文化の担い手に「クールジャパン」として看板を与える動きがある。これはこれで物議を醸しているが、一例として引用したい。つまるところ、一定数必ず存在する少数派が、その国にとって経済面・文化面で重要な役割を持ち始めている実例だ。既に少数派ではないとみなされれば、公式の場で認められる。
女性同性愛者(Lesbian)、男性同性愛者(Gay)、両性愛者(Bisexuality)、性転換者・異性装同性愛者・性同一性障害者など(Transgender)の人々がそのように文化を形成すれば、未来永劫、日本の政治の議会で取りあげられないなどとは誰にも断言できない。アメリカでは既にLGBT市場・レインボー市場と呼ばれるように、セクシャルマイノリティは必ず需要の見込める市場を形成している。
しかし、どんな国でも、セクシャルマイノリティの眼前にある問題は、まず周囲の人の理解が必要であるという点にあるだろう。もしもその人のいる職場や学校が偏見に満ちている社会なら、人はクローゼットに閉じこもるよりほかにない。
●日本のディズニーリゾートで初の同性結婚式
法的な婚姻が認められていなくても、結婚式を挙げることはできる。
二人の晴れ姿は新聞やテレビ番組でも報道されたため、ご存知の方も多いだろう。2013年3月1日(金)宝塚歌劇団花組出身の東小雪さんが東京ディズニーシーにて、同性結婚式を挙げた。日本のディズニーリゾートとしては初の同性結婚式だ。
最初、『ディズニー・ロイヤルドリーム・ウエディング』のニュースを見た東さんが、ディズニーホテルのウエディング担当者に「同性カップルも可能か」と問い合わせたところ「どちらかが新郎の衣装を着て、異性カップルに見えるようにすれば可能」という回答だった。そのため、東さんは同性同士に見える服装が駄目な理由を問い直した。一週間後になされた正式回答は「キリスト教式(チャペル)での挙式は、教義上の理由から不可だが、異性装が必要という回答は社内での認識が不完全だったこともあり、間違った案内」だった、とする内容だった。
こうして、二人は晴れてディズニーリゾートで式を挙げた。
反応は様々で、中には、ディズニーリゾートでの挙式をすることにより、同性愛が見世物とされるとして懸念する声もあったようだ。しかし、この堂々たる挙式には拍手が送られるべきだろう。SNSなどを通じて、寛容的な祝福の言葉が多数寄せられた。
都市部のLGBT運動ではストレート・アライ(異性愛の支援者)も増えており、年々広がりを見せつつある。個人差もあろうが、宗教の教義上の制約がないこともあり、日本は同性愛に寛容な国であるとみることができるだろう。しかし、政治的な保障に及ぶには、国民全体の関心そのものが低い。世代間・地域間での差も大きいだろう。
現在、東京では4 月27 日(土)~ 5 月6 日(月祝)の間『Tokyo Rainbow Week 2013』が企画されている。
公式の場がいくら遅々としていようとも、自分の性的指向が異性愛者だとしても、性的マイノリティに対してどんな考えをもっているのか見直すことは無駄ではないだろう。身近な友人や家族から、いつ答えを求められたり、悩みを打ち明けられないとも限らない。否定的であれ肯定的であれ、ただ沈黙することで、大事な関係を壊すことのないようにしたいものだ。
(画像出典:BuzzFeedLGBT ニューヨーク州では2011年7月 同性婚が認められた。結婚を喜ぶカップルの一組)
Tokyo Rainbow Week 2013
http://www.tokyorainbowweek.jp/ 【リンク】
東小雪さんの公式ブログ
http://koyuki-higashi.tumblr.com/【リンク】
同性婚認める法案が通過、大統領署名で成立へ ウルグアイ
http://www.cnn.co.jp/world/35030730.html 【リンク】
仏、今夏にも同性婚解禁 上院も法案可決
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130413/erp13041313580003-n1.htm 【リンク】
NZ、同性婚合法化へ アジア太平洋諸国で初
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130417/asi13041723010002-n1.htm 【リンク】
レインボープライド愛媛(性的マイノリティ政策アンケート)
http://blogs.yahoo.co.jp/project_gl05【リンク】
結婚の多様な形、日本でも「同性婚議論に高まりを」
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2893237/9306996【リンク】
日本は世界に遅れている!日本人なら知っておくべき「同性愛」のこと
http://www.madameriri.com/2013/02/20/【リンク】
オバマ大統領、同性婚支持を公に表明 米大統領として初
http://www.afpbb.com/article/politics/2877044/8915269【リンク】
歴代大統領では初!同性婚を語ったオバマ 日本では報じられないオバマ就任演説
http://toyokeizai.net/articles/-/12620【リンク】
アフリカの「同性愛」事情、死刑が適用される国も
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2681991/5159301【リンク】
アイスランド首相、同性愛パートナーと正式に入籍
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2738197/5923845【リンク】
BuzzFeedLGBT
http://www.buzzfeed.com/mjs538/portraits-of-gay-couples-just-married-in-new-york【リンク】
※この記事はガジェ通ウェブライターの「小雨」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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