日本のインディーズゲームを世界へ発信することを目的に、日本のゲーム開発者と海外メディアを集めたイベント『BitSummit』が3月9日に京都で開催されました。「インディーズゲーム」と聞くと、日本では個人やサークルで制作される小規模なゲームや同人ゲームが連想されます。プラットフォームもパソコン(PC)ゲームやウェブゲーム、スマートフォン用アプリなどさまざま。海外ではパブリッシャーから独立した法人やプロがコンシューマー機向けに開発したゲームも含まれ、PS3『風ノ旅ビト(原題:Journey)』など高い評価を集める作品が生まれています。これらに共通するのは「自分の作りたいゲームを作る」という姿勢。「インディーズゲーム=自分の作りたいものを作ったゲーム」と定義するとスッキリするのではないでしょうか。そんな「自分が作りたいゲームを作る」人たちにエールを送った同イベントのレポートをお届けします。
●日本のインディーズを代表する開発者がそろって出展
日本のインディーズゲームでサクセスストーリーを体現している作品といえば『洞窟物語』。PC用フリーゲームが海外で人気を博してDSiウェア版やWiiウェア版、STEAM版が展開し、国内でもDS用に移植された人気ゲームです。『BitSummit』では開発者である開発室Pixelの天谷大輔氏を大フィーチャー。この春iPhoneアプリとしてリリース予定の『Gero Blaster(日本語名:ケロ ブラスター』のトレーラーが上映されるというサプライズがありました。
Gero Blaster Trailer(YouTube)
http://youtu.be/op8FRV-hyO4
ブースでは天谷氏が自作の缶バッヂとポストカードをプレゼントするなど、開発者やメディアのファンと交流する姿が見られました。
参考記事:ついにDSiウェアで発売された『洞窟物語』イベントレポート
http://getnews.jp/archives/153642
『洞窟物語』と並ぶ人気インディーズゲーム『LA-MULANA』を開発するNIGOROも参加。国内では初めてユーザーコミュニティ『Steam Greenlight』のユーザー投票により配信が決定したSTEAM版の『LA-MULANA』をプレイアブル展示していました。国内でのWiiウェア版、インディーズゲーム配信プラットフォーム『PLAYISM』版などでのリリースを経て、いよいよ全世界でメジャーデビューとなるSTEAM版『LA-MULANA』はこの春配信を予定しています。
参考記事:伝説のMSX風フリーゲーム『LA-MULANA』 コミュニティの支持により『Steam』での配信が決定
http://getnews.jp/archives/284080
●コンシューマー機で活躍する開発者も“インディーズ”として参加
「自分が作りたいゲーム」を作るコンシューマ機で活躍する開発者も多数参加していました。セガサターン『パンツァードラグーン』シリーズを手がけた二木幸生氏とDS『メテオス』のアートディレクターを務めた堀田昇氏は彼らが設立したグランディングとして参加。Xbox 360+Kinect向けに配信予定の『Crimson Dragon』と配信中のWindows Phoneアプリ『CRIMSON DRAGON -SIDE STORY-』などを出展していました。
PS『アクアノートの休日』、Wiiウェア『ディシプリン*帝国の誕生』などで知られる飯田和敏氏は、『バーチャファイター』『LUMINES』シリーズなどを手がけたサウンドクリエーターの中村隆之氏と、あさま山荘事件に発想を得たという新作ゲーム『モンケン』を出展。グラスホッパー・マニファクチュア所属からフリーに転身した飯田氏は、完全なインディーズ作品として同作品を開発中。Unityプラットフォームで開発され、この夏PCとスマートフォン、タッチデバイス向けにリリースを予定しています。「まだまだ開発メンバーを募集中です!」(飯田氏)とのこと。
PS3『TOKYO JUNGLE』を開発するクリスピーズ、3DS『電波人間のRPG』を開発するジニアス・ソノリティ、PS3/PSP『PixelJunk』シリーズを開発するキュー・ゲームス、元PSY・SでPS『パラッパラッパー』などでも知られる松浦雅也氏の七音社、PS『moon』やPS2『チュウリップ』を手がけた木村祥朗氏らが設立したオニオンゲームスなど、コンシューマ機用ゲームで活躍する開発者もズラリ。こうしたメジャーシーンで活動する開発者と個人やサークルで活動する開発者の間で交流が生まれ、今後のインディーズゲームシーンが活発化することに期待したいところです。
●ウェブゲームで活動するクリエーターも
ガジェット通信で紹介してきたFlashゲームや、24時間でゲームを制作するイベント『あほげー』に参加する開発者も参加。Flashゲーム『人生オワタ\(^o^)/の大冒険』の作者であるキング ◆KING75wl/Q氏は、『ロックマン』へのトリビュート作品『ロッコちゃん』と、クラウドファンディングサービス『Kickstarter』で出資を募り完成した『ロッコちゃん』のサントラCDを出展。この春フリーになり、オリジナル作品の制作に注力するというキング氏の新作が今後期待されます。
『ロッコちゃん』
http://mogera.jp/gameplay?gid=gm0000001225
参考記事:『人生オワタ\(^o^)/の大冒険』のクリエーターが贈る壮大な『ロックマン』トリビュート『ロッコちゃん』
http://getnews.jp/archives/160108
『東京ゲームショウ2009』の『センス・オブ・ワンダー ナイト』に『彼と彼女のバラバラ劇場』が選考され、『あほげー』にも参加するひも氏は、TPSではなく敵の視点で操作する“二人称視点”のUnityゲーム『Second Person Shooter Zato』を出展。続編を『PLAYISM』で出展する計画もあるそうです。
『Second Person Shooter Zato』
http://www.kongregate.com/games/himojii/second-person-shooter-zato
参考記事:【東京ゲームショウ】インディーズゲームが集結した『センス・オブ・ワンダー ナイト』第2回が開催
http://getnews.jp/archives/31085
主催者の発表によると48組という、出展者すべてを紹介するのは難しいのが心苦しいですが、イベントのトレーラー動画で多くの作品をまとめて見ることができます。
BitSummit Official Trailer(YouTube)
http://youtu.be/IrWFuu7TB8U
●繰り返し語られたメッセージ「自分の作りたいゲームを作ろう」
イベントでは基調講演として、キュー・ゲームスの吉田謙太郎氏、アクセスゲームズのSWERY氏、クリスピーズの片岡陽平氏が開発者の視点で講演。3者とも「自分の作りたいゲームを作ろう」と強いメッセージを参加者に投げかけました。
吉田氏は『PixelJunk』シリーズではFlashゲームで人気だったタワーディフェンスのジャンルをタイムリーにコンシューマ機へ投入する、外部のクリエーターとコラボレーションするなど自社開発ならではの新しい試みに挑戦して成功してきた経験を語りました。『STEAM』での配信が決まったNIGOROについても触れ、「自分たちのゲームを自信を持って作っていることがすばらしい」と評します。
SWERY氏は海外のインディーズゲームの成功事例をベースに「作りたいものを作ろう!」と呼びかけ、世界に目を向けてそれを買ってくれるユーザーを探せばよいとアドバイス。海外での人気によりディレクターズカットのリリースが決まった『Deadly Premonition』を例に、さらに追加コンテンツを充実させることで作品の寿命が延び、新たなチャンスが生まれると語りました。
片岡氏は当初国内のみでリリースが決まっていた『TOKYO JUNGLE』が日本での盛り上がりにより海外でのリリースが決まっていった過程を紹介。海外でゴシック美術が流行した同時代の日本で鳥獣人物戯画という独自の文化が育ち、その後浮世絵が世界的に認知された歴史に触れ、日本人が独自に持つ感性の可能性を主張します。「自分たちが面白いと思うものを突き詰めていこう」と参加者に訴えかけました。
基調講演ではこのほか、ゲームエンジン『UNREAL ENGINE』を提供するエピック・ゲームズがゲームエンジンを使うメリットやiPhoneアプリ『インフィニティ・ブレード』の開発事例を紹介したほか、ユニティ・テクノロジーズがインディーズゲーム開発者に普及が進むゲーム開発環境としてUnityを紹介。『Steam』を提供するValve社は『Steam』の動向とNIGOROが『Steam』への配信を実現した『Steam Greenlight』を紹介しました。
『BitSummit』を立ち上げたのは、海外ゲームメディアでジャーナリスト経験を持ち、現在はキュー・ゲームスでプロデューサーを務めるジェームス・ミルキー氏。日本の開発者が持つ独自の視点や美意識を海外に紹介したいという同氏の熱意は、結果として会場いっぱいの開発者とメディアを集め、大きな熱を生み出していました。参加した開発者は勇気を与えられたのではないでしょうか。海外メディアの評価も含めイベントが成功し、今後も『BitSummit』が継続して熱を生み続けることに期待しましょう。
BitSummit
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