松田公太参議院議員(みんなの党)にインターネット選挙運動解禁とそれに伴う「公選法」の改正についてのお話を伺いました。(インタビュー日2013年2月7日)
●インターネット選挙運動解禁、実現しますか?
記者:みんなの党に続き、自民党もインターネット法案提出でいよいよインターネット選挙運動解禁になりそうですが、次回参議院選挙から、実現しそうですか?
松田公太参議院議員:いよいよ大詰めだなと思っていますがみなさん総論賛成でも各論反対みたいなところがありますから、細かい部分では、まだ完全な合意に至っていないだろうという印象です。
たとえば公明党さんがシンポジウムのとき「人権侵害などを恐れている」というような話をしてまして、「第三者・一般個人のメールの利用は制限しよう」という主旨です。公明党と自民党との合意にも、それが反映されています。第三者・一般個人にメールを利用させないというのは不思議だなと思います。なるべくオープンに政党や、候補者本人だけではなく国民の皆さんにも自由に議論していただきたいというなかで、「口答では言っていいけど、メールではなんでダメなの?」という話です。誹謗中傷など書いたチラシがたくさん出回っているのに対して現状闘う術はありません。そういうものをバラまかれてもバラまかれた候補者本人は、それに対しての反応で一番手っ取り早いツールがWEBサイトだとか、メールですがそれが使えない訳ですから、現状では選挙期間中は反応のしようがない。「なるべくオープンにすることによって反論も出来るようにしましょう」という考え方です。ところが第三者・一般個人はメールを使っていけないという。ここに規制を加えると我々は「表現の自由というものがあり、それをなるべく広く憲法に沿う形でやっていきましょう」との考えでやっているのに、そもそもインターネット選挙ってなんなの?となる可能性があります。
どうして個人だけはメール使ってはいけないの?という疑問が出てくるのは当然です。さらにこの規制が入るとわかりづらくなります。
「WEBサイトは個人でやっていいけど、メールは使えない」とか
「ツィッターは、じゃあ、どっちなんだ?」とか
「じゃあ、ツィッターのDMは果たしてメールなの?」という形の細かい部分が見えなくなります。それぞれに議論が出てきます。
メールがダメなら、自動的に「ツィッターのDMはダメなのかな」というふうに考えるのは当然です。ところが今の自公案だと、聞いたところでは「ツィッターのDMは電子メールではない」という取り上げ方をされていて、その線引きがよくわかりません。繰り返しですが、そういう規制があるとユーザーサイド(国民)は萎縮してしまうのではないかと心配です。
記者:全体が萎縮して1箇所穴が開いちゃうともうダメなんじゃないかと?
松田議員:普通に堂々と選挙について議論したいと思っている人たちが「規制があるから、自分は逮捕されたくないから」と思い、萎縮してしまうのではないか?一方でそういったことを気にしない、従来からネットで選挙や政治の情報を流している人たちは沢山いて、そういう人たちの独壇場になってしまわないかと心配です。
ですからみんなの党ではメールは絶対に自由にしなくちゃいかんな、というふうに思ってます。
自民党さんは「第三者を守る為なんだ」、「第三者が変に巻き込まれて、公民権停止とかなったらかわいそうでしょ?」とおっしゃっていますがそれは今でも同じです。自民党さんは、メールを送る際は氏名なり、名称なり、返信できる先を入れ、ノーリプライメールの場合には、電話番号か、FAX番号か、なにかしらの連絡先を入れるという形になっていますが氏名他を入れないで個人がメールを送ったら、それによってすぐ警察が飛んできて逮捕されて、コミュニティが停止になるとか、、、運用上はあり得ないです。まずは警告をして、何度警告をしてもやり続けたなら悪意があるとみなしあまりにも度を過ぎる状況だったら場合によっては警察が行くようになるかもしれませんがそうで無い限りは「意図的でなく、悪意もなく、間違って表示せずにメールを送ってしまい、いきなりコミュニティが停止されるような話なんてありませんよね」と言う話は反論しておきました。要するに自公党案は個人を規制したいという方向性ですね。
記者:やっぱり名誉毀損とか、誹謗中傷を恐れているということなんですよね?人権侵害だとか。
松田議員:そうだとおもいます。誹謗中傷とか“なりすまし”などを恐れているんだろうと思います。とはいえ第三者・一般個人はダメと規制してもそのような誹謗中傷や、なりすましというのは絶対に減らないと思います。むしろ今後増えるかもしれない。だとしたら最初から規制かけるような方向ではなく、原則自由にして、(個人が)反論も出来るような形にしておき、何か問題点が発生したら、その都度考えていくという方向にした方がよいのではないかと私は思います。
記者:新聞やテレビ、ラジオといった既存のマスコミと違って、インターネットだとちょっと聞きかじって、それが真実だと出してしまえばみんなに伝わってしまう。たしかに恐ろしい部分もありますね。落選運動?面白い言葉だな、と思っているんですが、こちらもネット上では盛んになるんでしょうね?
松田議員:そうですね。現状も、個人が行う落選運動に関して規制ってないんです。ですから、我々は落選運動に関しても変な規制をつける必要はないんじゃないかと思ってます。まあ、政治活動の一環として落選運動を続けるっていうのは、今までもやっている訳ですから特に問題はないと思います。
自民党さん、公明党さんは少し違うんですが、落選運動については多少柔軟に考えてもいいのかな、と思う部分もあります。ただ、個人がメールを使えないというところだけは、やっぱりおかし過ぎる。例えば、ご友人に選挙の期間中にメールで「○○さん、良いと思うんだよね」と送ったら、もうアウトって話になります。
記者:個人間でもアウトになってしまうんですね?
松田議員:そうですね、個人でってことになりますからアウトです。
記者:Facebookなども同じ扱いになるんですか?
松田議員:これはまだ不確かなんですが噂によると、Facebookは電子メールじゃないという建て付けなんです。ラインも電子メールじゃない。でも、ショートメールは電子メールだそうです。この辺りがものすごく解かりづらいんです。ラインはなんで電子メールじゃないかというと、アプリを入れてやるものなんで、メールじゃないという建て付けなんです。
記者:何が問題なのでしょうか?
松田議員:元々、実は自民党案は我々の案に近づいていたんです。自民党は元々有料広告もダメだと言ってたんです。一方我々は有料広告は全面解禁するべきだと。テレビではいくらでも政党が有料広告出しているのにも関わらず、なんでネットだけダメなんですか?ということです。政党でもいいし、候補者個人も選挙の際に決まった法定費用、参議院選挙・東京選挙区だったら5千万円~6千万円の範疇であればよいのではないでしょうか。それを規制する必要があるのか不思議ですね。テレビの広告は6千万円の範疇では出来る訳がなく、ネットは安いというのが売りなので、そのなかで自分の考えとか、意見を広げられ、お金のかからない選挙ができます。法定費用の範疇であれば自由に任せて、有料広告は政党も候補者個人も良いという考え方なんですが、自民党は元々すべてダメだったんです。それが考え方が変わりはじめ有料広告は個人以外はよいということになり、だいぶ近づいてきたと思っていました。メールの活用については意見が分かれています。
記者:公明党さんはネットの誹謗中傷や落選運動を危惧している部分もあるんでしょうか?
松田議員:そういうところがあるかもしれないでしょうね。
記者:こちらの表で、みんなの党さんの中では落選運動に関しての規定がないと、書かれているのですがどういったことでしょうか?
松田議員:これは、結局現状も何もありません。ネット以外でも落選運動は行われていますし規制が特にないんで、そのままでも良いと思ったのですが、自民党が「メール・WEBサイトを使う場合、氏名程度は入れた方が良い」というのであれば、それは同意してもよいです。極力自由にしたいという我々の考え方なのですが、交渉ごとのなかでそこはどうしてもというのであれば、多少考えられる部分とは思っています。
記者:元々は完全に自由という事で動いていたけれどもちょっとした規制が入るかもしれないということですね?
松田議員:そうですね、ネット上では規制が入る形になる可能性もあります。自民党の考えとしては「ネットは威力がある」ということでしょう。普通の落選運動より拡散しやすいですし。
記者:メールとWEBと比べるとメールの方が厳しいという感じですが、なぜでしょうか?
松田議員:基本的な考え方としてはメールの方が受け取った個人、オプトイン、オプトアウトがありますが受け取る本人からするとジャンクメールのようなものが増えてしまうかもしれない。WEBサイトはこちらから拾いに行かないと見えない訳ですから自分のメールボックスがいっぱいになるという事はないと思います。しかしメールは欲しくないのに無理矢理送られてきてしまうというところがありますので少し厳しくしているという事です。
記者:メールの方が迷惑度が高いということですね。
松田議員:少なくともメールボックスに入ってるのは読んだり削除したりしないといけなくなる訳です。選挙期間中に仕事のメールの中に候補者個人や政党からのメールが大量に入ってたら嫌になりますよね。
記者:もしメールではなくFAXで送られてくると思うと恐ろしいですね。
松田議員:恐ろしいですね。みんなの党が考えているのはメールアドレスを通知した人は送ってもよい。ここが自民党との大きな違いです。自民党は「電子メールを送ってよいと同意している」「同意をした文書を保存しなくてはならない」という規制がたくさんあります。そうすると送れる先はどんどん少なくなります。
名刺交換したときにこのメールアドレスにメールを送っていいですかなんてサインしてもらうのは現実的ではありません。
みんなの党は「変なところから1万人の名簿をもってきて、ドンと送るようなことは、さすがにダメです」と言ってますが、少なくとも「名刺交換している」とか「自身のサイトにメールを送ってきている」というところには送ってよい、ということにしてあります。
自民党は厳しく規制する形なので、メールを送る側も面倒くさいなあと言う感じがします。みんなの党は“受信メールを拒否する”というところがあってこれに違反すると罰則があるという考え方です。そうしないと結局どこからどこまでがOKというのがグレーゾーンになってしまいます。「選挙用電子メールの求め、同意をしている者」とか「政治活動用電子メールを求め、同意をしている者」とか「書面により電子メールを通知した者」またこれを保管しなくてはならないとかありますけれども、それを本当に管理しきれるでしょうか?結果グレーな部分も出てきてしまうでしょう。例えば、全部サインしてもらうとは書いていません。そうすると名刺交換したときに送ってよいと聞いたといっても、実は言っていなかったとか。口頭ベースの話だとわけがわからなくなってしまいます。「誰々さんからOKもらったんだ」と言って、勝手にリスト作ったり、グレーゾーンが増えてしまいます。そうするとまた、裁量権が総務省に残ってしまい、警察権をつかって管理することができるということになります。公職選挙法の解りづらいところが増えてしまいます。ですから政党が送信したい場合は政党の代表か誰か、個人が送信したい場合は名刺交換、メールをもらった人には全員送ってよいということにしておかないと解りづらくなります。
記者:WEBの連絡先表示について罰則がないということですが、書かなくてはならないけど罰則がないというのも変ですね。
松田議員:この書き込みは間違いだからやめて下さい、嘘の情報だからやめて下さい、という連絡はとれる体制にしておいてほしいということです。連絡をとれる部分を書かなかった場合はプロバイダーの方に連絡をして消してもらうという作業になります。これもプロバイダー規制法というのがあっていろいろと難しい点があります。現状は7日間記載者に連絡をして連絡が無い場合は削除してよい、プロバイダーは何の責任も負わなくてよいと言うことにしようとなっています。
記者:これは特例的にということですね?
松田議員:これはみんなの党と自民党が合意しています。こういう手法でやってゆくしかないでしょう。
記者:連絡手段は明記してもらって、氏名はそんなに重視していないということでしょうか?
松田議員:重視はしているのですが現状では罰則をつくっても仕方ありません。先ほどの話と重複しますがメールだとずっと受信し続け面倒臭いということがありますが、WEBサイトだとこちらが行かなかったら見に行かないだけの話です。
記者:これは実質的には匿名での意見の発表を認めているということでしょうか?
松田議員:そうですね。
記者:連絡がとれれば匿名でもハンドルネームでもよいということですね?
松田議員:自民党の案もそうなってます。
記者:この法案については各党合意が形成されつつあると思うのですがほぼ成立と見てよいのでしょうか?
松田議員:そうですね、成立させなくてはなりません。先ほどのメールの部分がみんなの党と自民党・公明党さんとの違いが一番大きいと思います。有料広告の部分も違いますが、根本的な違いは第三者・一般個人がメールを送れるか否かというところです。自民党案はオプトインですよね。通知してから送るという規制がかかっています。みんなの党はある程度限定的なオプトアウトです。名刺交換をしていたりその人のメールアドレスをすでに入手しているというスタートラインがないと出来ないことです。誰かから名簿を買ってやってはいけないということです。
記者:日程的なことは見えてきていますか?
松田議員:2月中に話を進めて3月にはということですがいまのポイントの決着がつけば3月には可能ですし、個人的には是が非でも3月と思っています。ぜひ今度の都議選からスタートしたいですね。通常政治家が好きな前例、慣例ということだと次回の国政選挙かららしいのですが国政選挙からでなくても良いと思います。都議選は国政選挙に準ずると言われていますし都議会選挙からやってしまったほうが良いと思います。6月23日が都議会議員選挙でおそらく7月21日が参議院選挙ですから一ヶ月も違いません。都議会議員選挙の方が情報が少ないですし直接猪瀬知事とお話はしていませんがネットを活用する方ですから同意されると思います。
記者:わかりました、ありがとうございました。
(取材:東京プレスクラブ)
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